ROCK YOU!
[ロック・ユー!]

2001/07/18 SPE試写室
中世ヨーロッパの馬上槍試合をテーマにしたスポ根青春映画。
音楽やファッションなどが現代風で面白い。by K. Hattori

 中世ヨーロッパには、貴族階級の若者が騎士として諸国を武者修行して回る習慣があった。ぴかぴか光る甲冑に身を包み、行く先々で野試合や公式試合に出場して腕を競うのだ。鋼鉄製の甲冑や武具は重いので、それを運ぶには専用の荷馬車が必要。それを騎士本人が運ぶわけではないので、騎士にはたいてい数名の従者が付いている。試合の中でももっとも華やかなのは、騎乗した騎士が全速力ですれ違いざまに相手を槍で突く馬上槍試合(ジュースティング)だ。中世を舞台にした映画ではしばしば登場する馬上槍試合だが、この映画は物語の添え物やエピソードとしてではなく、馬上槍試合そのものを映画のメインモチーフにしている点がユニーク。

 老騎士の従者だった平民の若者ウィリアムは、主人である騎士が試合の途中で急死したことから、その身代わりとして試合に出場して優勝する。これに味を占めたウィリアムと仲間たちは、身分を偽って各地の大会に出場しようと決意。途中で出会った自称文筆業者のチョーサーに偽の身分証を作らせ、ウリリック・フォン・リキテンシュタイン卿として各地の試合で連戦連勝していく。その途中で出会った美しい貴族の娘との恋。フランスの傭兵隊長アダマーとのライバル関係。やがてウィリアムは故郷イギリスに凱旋して父と再会するが……。

 ひとりの若者が馬上槍試合を戦う中で、真の友情や愛を知るというドラマは、現代のスポ根映画と同じ作り。この映画は古色蒼然とした「時代劇」に、現代の青春映画と同じ命を吹き込もうとしている。主演は『パトリオット』でメル・ギブソンの息子を演じたヒース・レジャー。『パトリオット』の時はまだ子供っぽさが残る顔立ちだったけれど、今回は凛々しい若武者ぶりを見せてくれる。登場人物達のファッションも、時代考証を重んじながらもそれを大胆に現代風にアレンジしている。貴族の娘ジョスリンの服装なんて現代でもそのまま通じそうなものが多いし、チョーサーの着ているコートなども今風だ。ウィリアムが着込む鎧も最初は古風なものだが、途中からはモダンなデザインの軽量甲冑に変化して、軽快でスポーティーな雰囲気に生まれ変わる。

 映画最大の見どころは、何度も登場する馬上槍試合。強烈な打撃で槍の穂先が爆発するように飛び散る様子は迫力満点だ。1回だけ登場する剣による試合風景も面白い。各エピソードの分量配分や配置も上手くできていて、だれるところや物足りないところがない。登場するキャラクターひとりひとりの個性も巧みに描き分けられ、それぞれに人間くさく共感を呼ぶ人物に仕上がっている。

 問題はこの邦題と、その元になっている劇中でのロック使用だろうか。この映画の中ではクイーンをはじめとするロックの楽曲がBGMとして使われているだけではなく、登場人物達がそれにあわせて手を打ち鳴らし、踊り、歌詞を口ずさむ。こうして中世と現代を結びつけようと言う意図はわかるのですが、やり方が少々中途半端かも。BGMをすべてロック調にすればよかったのに。

(原題:A KNIGHT'S TALE)

2001年9月公開予定 有楽町スバル座他・東宝洋画系
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
宣伝担当:マンハッタン ピープル
(上映時間:2時間12分)

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