ザ・ミッション
非情の掟

2001/07/11 松竹試写室
香港映画界のくせ者たちが集まったハード・アクション映画。
男たちがかっこいい。アクションもすごい。by K. Hattori

 『ヒーロ・ネバー・ダイ』『暗戦/デッド・エンド』のジョニー・トー監督作。謎の刺客に襲われた香港黒社会のボスを守るため、一度は組織から足を洗った腕利きの男たちが集められる。一度でも組織に加わった者は、組織を離れてもいざというときは組織のために一命を賭して働くのが黒社会のルールなのだ。会議室に集められた5人の男たちは最初のうちこそギクシャクしているものの、仕事に入ると即座に抜群のチームワークを発揮して正体の見えない敵からボスを守り、逆に敵を追いつめていく。出演は香港映画ファンにはおなじみの名脇役俳優がずらり勢揃い。5人のリーダー格で無口なグァイを演じるのはアンソニー・ウォン。その右腕でいつも落花生を食べているフェイを演じているのはラム・シュー。熱血漢のロイをフランシス・ンが演じ、射撃の名手マイクをロイ・チョンが演じている。このキャスティングがじつにいい。ぴたりとツボにはまっている。ロイの弟分シンを演じたジャッキー・ロイは新人だが、こうしたベテランたちの中で少し緊張しながら演技しているのが、百戦錬磨の強者たちの中で緊張しながら初仕事に挑むシンの気持ちとシンクロして、じつに効果的です。

 説明的な台詞がほとんどなく、それがこの映画のハードな雰囲気作りに一役買っています。5人のチームワークが芽生えていく様子にしても、ちょっとした芝居や男たちの身体の動きだけで観客に納得させてしまう。例えば煙草の中に花火を仕込むイタズラや、ボスを待つ廊下で紙くずのボールを使って行われるサッカー。こうしたシーンが効果的に挿入されることで、仕事付き合いだけではない男たちの友情が映画から伝わってくる。アクションシーンもハードでスタイリッシュ。それもツイ・ハークやジョン・ウーのようにカメラワークやカット割りで迫力を出すのではなく、カメラは基本的にあまり動かさず、人間の動きでド迫力のアクションを作り出している。その頂点にあるのが、ショッピングセンターでの銃撃戦。何も言葉を発することなく、男たちは直ちに自分の持ち場を見つけて銃を構える。この格好良さ。敵を廃ビルに追い込んでの銃撃戦も、草むらの中から建物に2,3発銃を撃ってすぐに数メートル移動する男たち。これは銃火めがけて敵が反撃してくるのを防ぐためでしょうが、こうした動作についても映画は何も説明しません。「そのぐらい、アクション映画のファンなら言わなくてもわかるよね」ということでしょう。

 アクション映画で血が騒いだのは久しぶり。公開規模が小さいのですが、これはアクション映画のファンなら絶対に観ておくべき作品だと思います。香港製のギャング映画は無数に作られていてマンネリもいいところだし、僕もこの映画の試写案内を貰ったときは「どうせいつものことだろう」とまったく期待していなかった。でもこれは、観た人を必ず熱くさせる映画だと断言できます。1時間21分の短い映画ながら見せ場は多く、何人かで観ればその後必ず映画談義に花が咲くことでしょう。

(原題:鎗火/THE MISSION)

2001年9月1日公開予定 キネカ大森、シネマ・カリテ(レイト)
配給:ヤン・エンタープライズ 協力:エデン

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