キス・オブ・ザ・ドラゴン

2001/07/09 メディアボックス試写室
ジェット・リーがパリの悪徳警官たち相手に大暴れする娯楽作。
ブリジッド・フォンダのエピソードは不要だなぁ。by K. Hattori

 ジェット・リー主演のカンフーアクション映画。製作・脚本はリュック・ベッソン。共演は『ニキータ』のハリウッド版リメイクでヒロインを演じたこともあるブリジッド・フォンダと、『ニキータ』の鬼教官チェッキー・カリョ。麻薬ルートを捜査するためパリを訪れていた中国の捜査官が、フランスの悪徳刑事に殺しの濡れ衣を着せられるというお話。舞台はパリで登場人物の半分以上はフランス人だが、言葉はすべて英語になっている。これは本作が最初から国際マーケットを意識して作られているからだろう。そもそも祖国の英雄を主人公にした『ジャンヌ・ダルク』を英語で作ってしまったベッソンだから、中国人同士が英語でしゃべろうが、フランスの警察官同士が英語で会話をしようが、そんなことはまったくお構いなしなのかもしれないけれど……。

 この映画にもリュック・ベッソン映画の悪いところは出てい、それはブリジッド・フォンダがらみのエピソードに集約されている。なぜベッソンはこういうヒロインが好きなんだろう。中国政府から派遣された凄腕のエージェントと、パリの裏町で身体を売るアメリカ人娼婦という、およそ正反対の世界から来たふたりの人間をからめていくという映画の狙いはわかるけれど、これは接点がなさ過ぎる。主人公が彼女と娘を救出しなければならない合理的な理由を作っておけばいいのに、それが希薄だから主人公の行動が甘っちょろく見えてきてしまうのだ。ほんの少しエピソードを増やすだけで、主人公が彼女に死なれては困る理由なんて何通りも作れると思うんだけど、それをあえてしないのがベッソンなのか……。

 物語自体はともかく、ジェット・リーのアクションは最高。今回はワイヤーや合成をなるべく使わず、生身のアクションそのままにこだわったようだが、それが映画に物凄い迫力を生み出している。導入部にあるホテルからの逃走や、中盤にあるボートからの逃走が地下鉄まで続く長い長いアクションシーンなど、この手のアクション演出の中でも屈指のものではないだろうか。最後の警察署はちょっとやりすぎだけど、ここは観客が主人公に思い切り肩入れしているから「なぜ銃が出てこないのか」という根本的疑問もどこかに吹き飛んでしまう。

 中国政府の人間も中国人のエージェントも、少し人間くさく描かれているのがフランス映画っぽいかもしれない。ハリウッドのプロデューサーが中国人を描くと、もっと無機質で非人間的なパーソナリティになったと思う。アメリカにとって共産主義はやはり敵で、中国は今や世界に唯一残った共産大国です。でもフランス人は「中国=共産国=非人間的」という見方はしない。しかしそれが高じて、フランス警察を非人間的な暴力組織として描いてしまうのがベッソン流の暴走。そこまで中国に媚びを売ることもなかろうに……。

 主人公が針の名人という設定は面白いがあまり生きていない。針だけでもいろんなことができそうだから、続編を作るならこの設定がもっと生かされるでしょう。

(原題:KISS OF THE DRAGON)

2001年秋公開予定 日比谷映画他・全国東宝洋画系
配給:日本ビクター、K2

ホームページ:http://www.besson-jp.com/

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