3人兄弟

2001/07/04 TCC試写室
カザフスタンの軍施設周辺で暮らす3人兄弟と友達の話。
ちょっと説明不足だと思いますが……。by K. Hattori

 ロシア空軍のパイロットとして故郷の村に近い空軍基地に配属されたチンギスは、自分が“チブート”という愛称で呼ばれていた少年時代を回想する。同じ村の子供たちと、連日のように悪戯を繰り返していた幼い日々。軍の仕事で古い機関車を管理していた老人との交流。少年たちの性の目覚めと、それが原因で引き起こされた大事件……。セリック・アプリモフという監督が撮ったカザフスタン映画で、登場する少年たちの表情がじつに生き生きしているのが印象的。老人から聞いた湖のそばの娼館の話に夢中になった少年たちが、女性に会うためにあれこれ知恵を絞ってお金をかき集めるという話と言えなくもないけれど、むしろこれは子供たちの世界を子供たちの視点でスケッチ風に描いた映画だろう。

 舞台になっているのが中央アジアなので、主人公たちの顔立ちがどことなく日本人にも似ている。でも子供たちの中には西欧風の金髪少年が混じっていたりして、旧ソ連というのが多民族混交社会なんだと改めて感じさせる。感じたことはその程度。映画自体はあまり面白いと思えなかった。そもそもこの映画には、謎や疑問点が多すぎる。この映画がいくら少年たちの視点で描かれているとは言え、劇中に少女の姿がほとんど出てこないのはなぜか? 舞台になった村では、男女の出生率がそんなに違うんだろうか? また、少年たちの家庭での様子がよくわからない。チブートを含む3人兄弟の家には父親がいないようだが、それはなぜなのか? 少年たちが普段接している大人は操車場の老人だけで、他には軍施設の兵士たちが登場する程度。でも兵士というのはいわば「外部の人」だから、この映画に登場する「村の大人」は極端に数が少ないことになる。いったい村の働き手はどこに行ってしまったのか? 軍の施設に侵入して少年たちがテレホンセックス・サービスに電話するというエピソードは面白いが、侵入がばれて兵士たちに追いかけられた少年たちはその後どうなったのか? 軍の現金輸送車を襲って大金を手にした少年たちの大胆さには驚かされるが、その後事件の捜査などは行われなかったのか? 僕にはそれが気になって仕方がない。

 映画には省略が付き物で、例えばこの映画では少年たちや老人の最終的な運命について、うまくエピソードを省略してナレーション処理している。これはよい。でもそれ以外の部分は、ちょっと省略しすぎなんじゃないだろうか。これではとってつけたように面白いエピソードを並べただけに見えてしまう。コメディ映画ならこれでもいい。でもこれはコメディじゃないわけだから、少年たちの行動が周囲にどんな波及効果をもたらすのかを、もう少し観客に感じさせる作り方をすべきだと思う。それともこの映画の内容は、カザフスタンの人たちになら何の説明もせずに全部通じるのだろうか。カザフスタンだけで公開されるローカル映画ならそれでも構わないけれど、この映画は製作者に日本人の名前が見える合作映画です。日本人にもわかる映画を作ってほしいなぁ。

(英題:Three Brothers)

2001年8月4日より 三百人劇場「ロシア映画の全貌2001」
配給:スタジオD
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ホームページ:http://www.bekkoame.ne.jp/~darts/

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