劇場版ポケットモンスター
セレビィ
時を超えた遭遇(であい)

2001/06/28 東宝第1試写室
劇場版も4作目になって内容もいよいよ快調になってきた。
今回はタイムトラベルがテーマ。最後のオチもいい。by K. Hattori

 毎年夏のお楽しみ『劇場版ポケットモンスター』シリーズの第4弾。TVアニメの劇場版にありがちなことなのかもしれないが、このシリーズも1作目よりは2作目、2作目よりは3作目の方が内容がこなれてきて、劇場用アニメーション作品としてクオリティの高いものになっている。この手のシリーズ映画は、TV版から独立独歩し始めた2作目以降から面白さが上昇気流に乗り、その後マンネリ化して内容面でも低調になっていくのが常。例えば『ドラえもん』シリーズは完全にかつての勢いを失っているが、『クレしん』シリーズはマンネリに陥りそうなギリギリの部分で踏ん張っている。『名探偵コナン』はまだ上り調子。そして『ポケモン』は今が急成長時期と言ってもいいだろう。ゲームやTV版が今でも活発に作られていることからもわかるとおり、もともとポケモンはその背景となっている世界観が大きく、いくらでも大風呂敷を広げられるというメリットがある。

 劇場版の最新作である本作は、前作でやや大人向けに振りすぎた物語の方向性を、本来のSF冒険活劇路線に戻した痛快娯楽作品に仕上がっている。ポケモン同士の対決や、貴重なポケモンを捕獲しようとする悪のポケモンハンターという定番のエピソードに加え、今回はタイムトラベルというSFジャンルの大テーマに挑んでいる意欲的な作品だ。いつも新しいポケモンが現れて観客を楽しませてくれる劇場版だが、今回登場するのは、外敵に襲われて絶体絶命のピンチに陥ると、時空の歪みを作って数十年を隔てた未来や過去にジャンプするというポケモン“セレビィ”だ。このポケモンのアイデアは他のSF漫画か何かで見た覚えもあるので、特に物凄いアイデアというわけではないのかもしれない。しかしこの映画では、セレビィと一緒に40年前の過去からやってきた少年ユキナリとサトシたちの間に芽生えた、遠い時を超えた友情というのがもうひとつのモチーフになり、熱いドラマを盛り上げてくれるのだ。

 セレビィを捕らえるため、深い森を大型マシンで徹底的に破壊し尽くすロケット団の幹部ビシャス。ロケット団って、結構きちんとした組織だったのね……。自らの欲望のため自然を破壊してしまうジャビスの姿は、資源開発や国土発展という名のもとに自然を破壊していった、20世紀の人類の姿にも重なり合ってくる。今回のポケモンは、「自然環境保護アニメ」なのだ。もちろんここには、自然を破壊することでしか文明を作り出せない、人間という種に対する視線はない。森の破壊と再生という似たような筋立てを持っていても、これは『もののけ姫』とはまったく別次元の物語世界を作り上げている。でもメッセージはシンプルで力強い。人間が自然環境に刻みつけた無惨な傷跡を見て、心を痛め涙を流す人間がいる限り、自然はきっとよみがえるに違いない!

 このシリーズはCGの使い方がいつも上手い。今回はセレビィの作り出した巨大なモンスターが、なかなか素晴らしい造形を見せてくれた。

2001年7月7日公開予定 全国東宝系
配給:東宝

ホームページ:http://www.pokemon2001.com/



ホームページ
ホームページへ