釣りバカ日誌12
史上最大の有給休暇

2001/06/28 松竹試写室
人気シリーズ第14弾。主演ふたりはますます快調。
本木克英監督の演出もいい調子だ。by K. Hattori

 人気の『釣りバカ日誌』シリーズも本作で14本目。タイトルは『12』なのに14本目になっているのは、間に『釣りバカ日誌スペシャル』と『花のお江戸の釣りバカ日誌』が入っているからです。最初は寅さんシリーズの併映作品として始まったこのシリーズが、こんなに長続きするとはたぶん松竹だって考えていなかったと思う。原作はビッグコミックオリジナルに今も連載中だが、映画の方はもうすっかり独自路線で原作なんてそっちのけ。西田敏行扮する釣りバカの駄目社員ハマちゃんと、社長だけれどハマちゃんの釣りの弟子スーさんの奇妙な友情を軸に、縦横無尽に物語世界を作り上げている。

 レギュラーメンバーによる息の合った掛け合い芝居とお約束のギャグやエピソードには、相変わらず大いに笑わされ、その芸の素晴らしさには関心もする。例えば今回、ハマちゃん宅の食卓でハマちゃんとハチが大喧嘩を始めると、それをまったく無視してスーさんが勝手にひとりお茶漬けを作って食べ始めるというシーン。西田敏行の動きのある芝居と、三國連太郎の無言の芝居のコントラストがなんとも可笑しくて仕方がない。あるいはハマちゃんが谷啓扮する佐々木課長のところに、休暇願を提出するシーンの馬鹿馬鹿しさ。ハマちゃんとスーさんが高野元常務の病室を見舞ったとき、ハマちゃんがいちいち場違いなことを言って周囲をはらはらさせるシーン。どれもお約束の展開、お約束のギャグ、どうなるか観客は十分に予測できるんだけど、それでも笑ってしまうのです。それはここで登場するギャグが「観客が思ってもいなかった出来事が起き、その意外性が笑いに転ずる」というタイプのものではなく、その場に設定された状況と人物の言動から導き出される必然的な面白さ、練りに練った芝居の力によるものであることの証明です。

 こういうタイプのギャグを「先が読める」「予定調和だ」と批判する人にとって、この映画は面白くも何ともない映画でしょう。でもこういうものが、本来の喜劇映画というものではないだろうか。たぶん半分ぐらいがアドリブだと思われる西田敏行の怪演。それに負けじとオーバーアクションでギャグを連発する三國連太郎。スーさんがフグに当たって口から泡を吹く場面は、腹の底から笑いがこみ上げてきて止まらなくなる。本木克英監督は前作『釣りバカ日誌イレブン』に引き続いての登板だが、芝居のテンポがじつにスピーディーで、ベタベタしたところがまったくない現代的なセンスを見せる。これはデビュー作『てなもんや商社』でも感じさせたものだが、むしろ『釣りバカ』になってその演出手腕は冴えているのではないだろうか。西田敏行や三國連太郎が個人技を見せる場面では手綱を緩めて十分に遊ばせ、物語のキーになる部分ではきちんと手綱を締め、時には鞭を入れて物語を走らせる。なんとも上手いものです。

 ゲスト出演は青島幸男と宮沢りえ。このふたりのエピソードは本当に付けたりだけれど、宮沢りえのカメラ写りの良さはピカイチ。もっと映画に出てほしいなぁ。

2001年8月18日公開予定 全国松竹系
配給:松竹

ホームページ:http://www.tsuribaka-movie.jp/



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