マンボ!マンボ!マンボ!

2001/06/11 GAGA試写室
サッカー上達の秘訣はラテンのリズム感を身につけることだった。
ベルファストを舞台にした青春ラブコメディ。by K. Hattori

 北アイルランドのプロサッカーチームに、ブラジル出身の助っ人選手がやってきた。ブラジル人はなぜサッカーが強いのか? 「それは小さい頃から体にサンバのリズムが刻み込まれているからさ」とその選手は答える。地元の高校でサッカーに熱中しているダニーにとって、その言葉は天の啓示だった。「サッカーにはまずサンバだ!」というわけで飛び込んだダンス教室。そこで彼はとびきり美人のルーシーに一目惚れしてしまう。ダンスパートナーだったルーシーの彼氏がサッカーの交流試合中に怪我をしたのを幸いに、彼女のダンスパートナーとして大会での優勝を目指すダニー。おいおい、こんなことでサッカーが本当に上手くなるのか? ご心配なく。ちゃ〜んと上手くなるのです。でもこの世の中、そんなに何でもかんでもうまく行くほど甘くないのだった……。

 スポーツとダンスに恋がからみ、当然のごとく恋のライバル登場。仲間や家族の応援もあってすべてがうまくいきそうに見えるが、仲良くなった彼女を肝心なところで怒らせる。それでも最後は仲直りしてハッピーエンド。この手の映画の定石を、多少の荒っぽさはあるけれど忠実になぞっていく展開です。話の進め方も人物の描写も粗雑できめ細かさがないのですが、舞台が北アイルランドということが、この映画をただならぬものにしている。主人公のダニーはカトリックの男子校に通っていて、ルーシーと恋敵のオリバーはプロテスタントの共学校(あるいは教派色のあまり強くない学校なのかも)に通っている。カトリックは貧しく、プロテスタントは裕福。カトリックの生徒は卒業後も地元を離れようとせず、プロテスタントの生徒たちは卒業するとイギリス本島へと巣立っていく。サッカーはプロテスタントのスポーツ。地元のプロチームも選手はほとんどプロテスタント。こうした背景があるからこそ、カトリックの国ブラジルからやってきた選手がダニーにとっての英雄になる。

 北アイルランドで紛争が続いていた頃は、この映画の舞台になったベルファストも爆弾騒ぎや銃撃が多発する危険地帯だった。でもつい数年前にIRAが武力闘争の終結宣言を出して、町には平和が戻ってきている。町の中はプロテスタントとカトリックの住民対立が色濃く残っているけれど、両者の融合も少しずつ始まっている。それはルーシーの父親がカトリック出身ながらプロサッカーチームの理事をしていることや、娘をプロテスタントの学校に通わせていることでもわかるし、カトリックの生徒たちがサッカーに夢中になっているという描写からも伝わってくる。町の中には軍隊による検問所がまだ残っているけれど、かつてのような緊張感はあまりない。

 ルーシーを演じているのは、アメリカの人気テレビドラマ「フェリシティの青春」の主演女優ケリー・ラッセル。その父親を演じたブライアン・コックスは、アメリカ映画にもよく出演しているイギリスの名優。監督・脚本はジョン・フォルト。主人公ダニーを演じたウィリアム・アッシュに、もう少し力強さがほしかった。

(原題:MAD ABOUT MAMBO)

2001年7月14日公開予定 シャンテ・シネ
配給:ギャガ・コミュニケーションズGシネマグループ

ホームページ:http://www.mambo-mambo-mambo.com/



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