ゴーストワールド

2001/06/08 松竹試写室
アメリカの人気コミックをソーラ・バーチ主演で映画化。
駄目人間としての自覚がある人は必見。by K. Hattori

 アメリカの人気オルタナティブ・コミック作家ダニエル・クロウズの原作を、原作者本人の脚色でを映画化した作品。主演はソーラ・バーチと『のら猫の日記』のスカーロット・ヨハンスン。スティーブ・ブシェミがかなり重要な役で登場し、ブラッド・レンフロがちょい役出演。美術教師役に『グレイス・オブ・マイ・ハート』のイリーナ・ダグラス。出演陣はなかなか豪華。監督と共同脚本のテリー・ツワイゴフはドキュメンタリー映画出身で、これが初めての劇映画作品。漫画家ロバート・クラムのドキュメンタリー映画『クラム』は日本でも公開されているが、残念ながら僕はこれを観ていない。製作は俳優のジョン・マルコヴィッチ。

 高校を卒業したイーニドとレベッカは、進学もせず町でぶらぶらしている。親友同士のふたりは一緒に暮らす部屋を探しているが、新聞の個人広告欄で「バスで出会った運命の女性」を探す男の広告を見つけていたずら電話。男をダイナーに呼びだして、待ちぼうけを食らう姿を見てゲラゲラ笑っている。この不幸な中年男シーモアがどんな生活をしているのかさらに探ろうと、彼の住まい近くまで尾行するイーニドとレベッカ。だがイーニドはシーモアが古いブルースのファンだと知って彼に興味を持ち、なんと彼の友達になってしまう。シーモアに恋人を見繕ってあげようとあれこれ世話を焼くイーニドを見て、レベッカはびっくり。親友だったふたりの関係は、少しずつ疎遠なものになってしまう。

 原作の読者にとっては、原作の持つ雰囲気やエピソードがどのように映画に生かされているかが注目のしどころなのだろう。でも原作を読んでいない僕のような観客にとっても、この映画は十分に面白いものだと思う。ここで描かれているのは、思春期の少女たちが自分の周囲に対して持つ違和感といらだちです。この世界は趣味が悪くて退屈な人ばかりで構成されていて、自分はその人々から受け入れられず、自分自身もそんな世界を受け入れる気持ちになれないという気持ち。それを自分の立場から見れば「世の中ってバカばっかりだ」という優越感になるのだが、一歩世の中の側にすり寄ろうとすれば「私はこの世界に受け入れてもらえない」という被害者意識を生み出すことにもなる。世の中がイカレているのか、自分が世の中の規格に合わない駄目人間なのか。それはどちらが正しいのかよくわからない。「自分はなぜこの世界に馴染めないのか?」という悩みを思春期に一度でも感じたことがある人なら、この映画の主人公にすぐ感情移入できると思う。

 社会に適応できなかった時、その人はどうやって世界と折り合いをつけていけばいいのか? この映画はそのための3つの解決法を提示する。ひとつは世界に見切りをつけて、小さ隠れ家を自分で確保すること。もうひとつは、この世界と少しずつ馴染むための努力をすること。そして最後の手段は、自分を受け入れてくれる世界を探して旅に出る方法だ。そんな世界はきっとどこかにある。

(原題:GHOST WORLD)

2001年夏休み公開予定 恵比寿ガーデンシネマ
配給:アスミック・エース

ホームページ:http://www.asmik-ace.co.jp/



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