ダンジョン&ドラゴン

2001/06/05 GAGA試写室
人気ゲームを原作にしたアクション満載のファンタジー映画。
主演の役者に魅力が乏しいのは致命的。by K. Hattori

 1970年代に登場したRPGの古典「ダンジョンズ&ドラゴンズ」を、ゲームの熱心なファンだったコートニー・ソロモンという監督が映画化。製作にジョエル・シルバーがからみ、脚本に『ゲット・ア・チャンス!』や『パール・ハーバー』のトッパー・リリエン&キャロル・カートライトがクレジットされるなど、スタッフはそこそこのメンバーが揃っているのだが、肝心のソロモン監督については経歴不明。IMDbなどで調べる限り、どうもこれが監督デビュー作ということらしい。監督が無名ならキャストも無名だ。一応はジェレミー・アイアンズやソーラ・バーチという有名どころを配役に入れてはいるけれど、物語の中心に彼らがからんでくることはない。魔法の杖を探す旅に出る若者チームの中では、『最終絶叫計画』『レクイエム・フォー・ドリーム』のマーロン・ウェイアンズが映画ファンにとって辛うじて馴染みの顔かもしれないが、これが完全な脇役だったりする。

 物語の構成にしろ演出にしろ見せ場となっているCGにしろ、文句を言いたくなるところはたくさんある。しかしこの映画でもっとも大きな欠点は、冒険の主人公リドリーを演じたジャスティン・ワリンにも、その相手役を演じるゾー・マクラーレンにも、観客の目を引きつけ物語を引っ張るだけの魅力が欠けていることだろう。剣と魔法の世界の住人を演じるにしては、このふたりには精悍さや厳しさというものがまったく感じられない。特に主人公のリドリーは、自分の才覚ひとつで乱世を生きてきた腕っこきのこそ泥です。それがなぜこんなボンボン風の顔をしているのでしょう。この脚本で映画を撮るならこんなキャスティングはあり得ないし、逆にこの配役で映画を撮るなら主人公の役柄を少し変更すべきだったと思う。坊ちゃん育ちの二流騎士が、試練の中で強くたくましく成長していくとかね。小技もこなせるマーロン・ウェイアンズが相棒役なのに、主役とのコンビがまったく面白くないというのも残念。これは掛け合いの面白いコミカルな凸凹コンビにするのが定石でしょう。

 映画のタイトルにある「ドラゴン」は、映画の最後にCG映像の大盤振る舞いを見せてくれる。ところが僕には、この映画のどこがどんな風に「ダンジョン(地下牢・天守閣の意もあり)」なんだかよくわからなかった。最初の魔法大学への進入、地下迷宮からのドラゴンの眼奪取、地下宝物倉からのサブリールの杖取得など、一応は「ダンジョン」らしき場面が出てきますが、どれも手に汗握るスリルとはほど遠い。これは演出の問題です。

 物語の中では若い女王が貴族と平民の平等を宣言しますが、その後に主人公を騎士に任命することにはどんな意味があるんだろうか。この映画の中における「身分の平等」がどんな意味を持つのか、僕にはさっぱりわからなかった。この「平等宣言」が帝国を二分する争いを生むんだから、最初にきちんと説明して置いてほしいぞ。

 それにしても最後のドラゴンの空中戦を観ると、CG製作って安くなったんだなぁと思います。

(原題:Dungeons & Dragons)

2001年7月14日公開予定 ニュー東宝シネマ他 全国東宝洋画系
配給:ギャガ・ヒューマックス共同配給

ホームページ:http://www.dengekionline.com/d&d/



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