劇場版
ウルトラマンコスモス
THE FIRST CONTACT

2001/05/15 松竹試写室
テレビ放送とのメディアミックスが目玉の新生ウルトラマン。
物語の設定に無理を感じるなぁ。 by K. Hattori


 円谷プロが「ウルトラマン」というキャラクターを生み出して、今年で35周年になるのだそうだ。そうか、僕とウルトラマンは同い年だったのね。僕自身がリアルタイムで覚えているのは「ウルトラセブン」以降で、それもひょっとしたら再放送だったのかもしれない。「帰ってきたウルトラマン」からは明確に記憶があって、その後の「ウルトラマンタロウ」「ウルトラマンエース」あたりは夢中になってテレビにかじりついていたような気もする。あれからもう30年かぁ……。このシリーズは「巨大な怪獣と地球を守るウルトラマンの対決」という基本コンセプトを守りながら、作品ごとに大きく設定を変えてきた。最初の頃はシリーズごとのつながりもあったし、「ウルトラマンティガ」から「ウルトラマンダイナ」「ウルトラマンガイア」へと続く連続性を持ったシリーズ(平成三部作と呼ぶらしい)もあったけれど、今回の『ウルトラマンコスモス』はそれらとも完全に切れている。これはまったくのゼロからスタートする、まったく新しいウルトラマンです。

 この映画の中ではウルトラマンを見たという少年に向かって、同級生の女の子が「まだウルトラマンが本当にいると思っているの?」と言う場面がある。この映画の中で、ウルトラマンはサンタクロースと同じような存在だ。ユニークなのはウルトラ警備隊にあたる地球防衛組織が、SRCという民間のボランティア組織になっていること。この組織はメンバーが普段は会社に勤めたり学校の先生をしているような覆面組織のくせに、巨大な秘密基地や怪獣と互角に渡り合える航空機などを持っている。地球にはSRCの他に、怪獣を武力で撃退しようとする防衛隊(通称シャークス)も存在する。

 いったいSRCとシャークスは、いかなる指揮系統のもとで相互の仕事を分担しているのか。SRCのメンバーがボランティアだとしても、設備や維持費などの巨額の費用は誰がどのような形で負担しているのか。構成メンバーが秘密になっているのはなぜなのか。どうもよくわからない。ウルトラマンなんて所詮はフィクションですから、その世界観に緻密なリアリティなんて必要ない。それでも最低限、世界の枠組みぐらいは明らかにしておいてほしい。このあたりは7月から放映されるテレビ版で、もう少し明確になるのかもしれないけれど……。

 今回のウルトラマンは「怪獣退治」が使命ではなく、地球に古くから住む怪獣や、宇宙からやってきた外来の怪獣と人間が、いかに共存できるかというのがテーマになるようだ。古くからのウルトラ世代としては、これにちょっと違和感も持つんだけどなぁ……。人間がバルタン星人と共存できるものだろうか。この映画はこうした難しいテーマを無邪気に取り扱っているけれど、これでもいいのかなぁ。僕はむしろこうした姿勢に、物語の大いなる欺瞞を感じてしまう。地球から去っていったバルタン星人たちは、いったいどこに行ったのだろう。泣けばいいってもんでもないだろうに……。う〜む。

2001年7月20日公開予定 丸の内プラゼール他・全国松竹東急系
配給:松竹
ホームページ:http://www.shochiku.co.jp/ultramancosmos/


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