リトル・ニッキー

2001/04/25 GAGA試写室
「バカな映画」と「バカ映画」は違うが、これはバカなバカ映画。
アダム・サンドラーがサタンの三男坊を演じる。by K. Hattori


 地獄を支配している大魔王サタンには3人の息子がいる。長男エイドリアンは悪知恵に長けた知能犯タイプ。次男カシアスは短気で粗暴なマッチョマン。そして末っ子のニッキーはヘビメタ好きの心優しい青年だ。1万年の統治を終えた魔王は、次の世代に支配の座を渡すのが地獄のしきたり。だが一長一短ある息子たちに頼りなさを感じたサタンは、権威移譲を拒否して次の1万年も自分が地獄を治めると宣言。これに長男と次男がブチ切れた。「地獄がダメなら地上を支配してやる!」と地獄の門を飛び出したふたりのおかげで、地獄への新しい魂の供給がストップ。魔王サタンの身体は弱って少しずつ崩れていく。パパっ子のニッキーは大好きな父を救うため、兄ふたりを地獄に連れ戻そうと地上に向かう。

 アメリカでは大人気スターなのに、日本ではいつまでたっても人気に火がつかないアダム・サンドラーの最新作。『ウェディング・シンガー』はともかく、『ウォーターボーイ』も『ビッグ・ダディ』もイマイチのれなかった僕としては、今回の『リトル・ニッキー』もやっぱりのれない映画だと言わざるを得ない。面白いかつまらないかと二者択一で訪ねられれば、「つまらない」と答えるしかない映画です。しかしどんなにつまらないと言っても、退屈するわけではない。それがこの映画のすごいところ。出演スターがものすごく豪華で、SFXやVFXもふんだんに使ってお金をかけている。それで本当につまらなくて退屈なだけなら、それは『バトルフィールド・アース』と同じ。でもこの映画は、つまらなさの中にも芸がある。年輩の野球ファンは「長島茂雄の現役時代は三振ですら芸術的だった」と言いますが、『リトル・ニッキー』はまさにそういう映画です。『バトルフィールド・アース』は強打者がバッターボックスに入ったと思ったら、初球からキャッチャーフライでアウトを取られたような映画です。でも『リトル・ニッキー』は違う。当たればホームランになりそうな強烈なスイングで、見事に空振り三振したようなものだと思う。

 映画のノリはほとんどテレビのバラエティ番組。ハーベイ・カイテル、クエンティン・タランティーノ、リス・エヴァンス、リース・ウィザースプーンといった有名役者たちが、ニコニコ笑いながら奇態なコスプレに興じている様子には苦笑してしまう。とくにカイテルなんて「そこまでやるか?」という熱演。彼とウィザースプーンが元夫婦で、その子供がサンドラーという設定もすごいぞ。「お母さんだって? だって僕より若いじゃないか!」というニッキーの台詞は笑わせます。ニコラス・ケイジと別れたパトリシア・アークエットが、久しぶりに可愛い役で登場したのも嬉しい。

 しかしこの映画、単なるコスプレショーでは終わらない。人間の言葉を喋るブルドックの口は台詞と完全にシンクロして動くし、地獄の大宮殿のセットは大きいし、セントラルパークからは地獄が出現してしまう。ここまでアホに徹底できれば、もはや天晴れと言うしかないよ。

(原題:Little Nicky)

2001年6月上旬公開予定 日劇プラザ他・全国東宝洋画系
配給:ギャガ・ヒューマックス共同配給
ホームページ:http://www.nicky-jp.com/


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