DENGEKI
電撃

2001/04/23 ワーナー試写室
スティーブン・セガール久々の主演映画。この邦題はなんだ?
セガールは存在自体がギャグになってきた。by K. Hattori


 スティーブン・セガール主演のポリス・アクション映画。製作はジョエル・シルバー。共演はヒップホップ界のカリスマ(とプレス資料に書いてある)DMX。セガール主演映画が日本公開されるのは『沈黙の陰謀』以来久しぶりだけれど、その間に日本未公開の作品があったわけでもなく、本当にこれがセガール久々の主演映画なのだ。アメリカでは公開時に初登場1位になったというから、セガールの人気が落ちているわけではないのだろうけれど、いったいこの間どうしてたんでしょう。

 タフな警官が巨大な陰謀をたったひとりで解決してしまうという、セガール主演作ならではの馬鹿馬鹿しくもお決まりの展開にニヤリ。この人にはいつまでも荒唐無稽なヒーローを演じ続けてほしいもの。あまり表情が豊かとは言えない俳優なので、この人が普通の役者に転向するのはまず無理でしょう。セガールはどう逆立ちしたってロバート・デ・ニーロにはなれない。まぁ『ミート・ザ・ペアレンツ』をセガール主演にすればまた違った面白さがあったとは思うけれど、あくまでもそれはセルフ・パロディとしての面白さであって、役者としての資質の問題ではないのです。観客がセガールの映画に期待するのは、合気道七段の腕前と体格を生かしたボリューム感たっぷりのアクションシーンであり、操作手順や周囲の妨害もブルドーザーのような馬力で押し返してしまう強引さだと思う。要するにセガールはお節介なオヤジなのです。自分が首を突っ込まなくてもいい事件に、あえて関わらずにいられない性格。これで実力がなければただの笑いものだけど、首を突っ込んで見事に事件を解決してしまうからヒーローになれる。

 今回の映画は定番のサスペンス・アクションというより、アクション・コメディ路線を意識した作品になっている。TK役のアンソニー・アンダーソンやTVキャスター役のトム・アーノルドがコメディリリーフ。しかしこのふたりより、スティーブン・セガールの存在そのものがすでにコメディ要素を孕んでいるという不思議な作品だ。映画の冒頭でこの人が登場したときから、もう何やら滑稽味がある。面白いことをやろうとしているわけではないんだろうけど、このでかい顔がもそ〜っと出てくるだけで、観ている方はニヤニヤしてしまうのです。芸達者なトム・アーノルドが何をやっても、セガールがもともと持っている可笑し味にはかなわない。監督は『ロミオ・マスト・ダイ』のアンジェイ・バートコウィアク。ジョエル・シルバーとバートコウィアク監督は『ロミオ〜』でもコミカルな映画を作ろうとしていたけれど、ジェット・リーは「存在そのものがギャグ」にはならないので、いまひとつパッとしなかった。でもこの映画のセガールは、『ロミオ〜』でできなかったことを、きちんと実現しているんじゃないだろうか。

 『沈黙の要塞』など過去のセガール作品にもユーモアはあった。でもセガールの存在そのものがギャグになるという映画は新しいかも。ちょっと新機軸です。

(原題:EXIT WOUNDS)

2001年8月公開予定 渋谷東急3他・全国松竹東急系
配給:ワーナー・ブラザース映画
ホームページ:http://www.warnerbros.co.jp


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