ザ・メキシカン

2001/03/29 イマジカ第1試写室
ブラピとジュリア・ロバーツが共演したコミカルなサスペンス映画。
物足りない点をすべてスターの魅力で補っている。by K. Hattori


 ブラッド・ピットとジュリア・ロバーツという、現代のハリウッドを代表する2大スターが共演した、ちょっとコミカルなサスペンス映画。マルゴリース一家の下っ端構成員として主に荷運びの仕事をしているジェリーは、どんな仕事をしてもいつも失敗ばかり。恋人のサマンサは彼に組織の仕事を辞めてほしいと願っているが、「仕事をするか、それとも殺されるか」という二者択一を迫られているジェリーは仕事を断ることができない。今回彼に命じられた仕事は、メキシコに出かけて美しいアンティーク・ピストル“ザ・メキシカン”を受け取ってくること。この仕事が終われば、組織はもうそれ以上彼に構わないという約束だ。だがサマンサは仕事を断れない彼に愛想をつかし、ひとりでラスベガスに行ってしまう。

 ブラピとジュリア・ロバーツというスターの魅力だけで、2時間3分を押し切ってしまう映画。映画としてのバランスはすごく悪いと思うし、サマンサ役がジュリア・ロバーツというのはミスキャストなのかもしれないが、それでもスターの放つオーラがこの映画全体を包み込み、観終わってみれば「ああ面白かった」という満足感が得られるはず。監督は『マウス・ハント』のゴア・ヴァービンスキー。製作はタランティーノ作品を手がけるローレンス・ベンダー。映画の最後には、あっと驚く豪華スターが大ボス役で出演している。『マウス・ハント』は切れ味のいい爆笑コメディだったけど、ヴァービンスキー監督の演出ぶりはこの映画ではちょっと鈍くなっているような気がする。主演が今をときめく大スターということもあって、あまり派手にいじくり回すのを遠慮してしまったのかもしれない。シュワルツェネッガー主演の『ラスト・アクションヒーロー』が、ちょうど似たような印象を受けた映画だったかなぁ。

 主演ふたりの共演シーンは少なくて、ブラピはメキシコへ、ジュリアはラスベガスへ行って様々な事件に巻き込まれる。ふたりの物語が交互に進行していくので、どちらのファンにとっても悪くない展開ではありますが、やはりこのふたりが直接からんでくる場面が少ないのは物足りない。しかもからんでいるところはまだ演技の歯車がかみ合っていないような感じがして、大いに不満が残ってしまう。会話のキャッチボールがうまく行っていないような気がする。それぞれが単独で芝居をするシーンはなかなか面白いのに、ふたりが揃うとかえって互いの良さや持ち味を打ち消し合っているような場面も多い。このあたりは、もう少し工夫がほしかった。

 タイトルの『ザ・メキシカン』というのは一連の事件の中心にあるアンティーク・ピストルの名前ですが、この銃に対するマニアックなこだわりがあまり画面から伝わってこないのも残念。サム・ライミの『クイック&デッド』の半分でもいいから、銃の描写にこだわってほしかった。そうすれば銃にまつわる伝説を映像化するくだりも、もっと魅力的なシーンになったと思う。上映時間が2時間越えるというのも、この内容ではちと長いかも。

(原題:THE MEXICAN)

2001年GW公開予定 日本劇場他 全国東宝洋画系
配給:ギャガ・ヒューマックス共同配給
ホームページ:http://www.the-mexican.net


ホームページ
ホームページへ