センターステージ

2001/03/05 SPE試写室
アメリカの名門バレエ学校を舞台にした青春ドラマ。
ミュージカルファンは泣いて喜ぶだろう。by K. Hattori


 ミュージカルファンにとっては辛い時代が続いたが、この映画の登場でようやく溜飲が下がった気分。アメリカの名門バレエ学校を舞台に、系列の名門バレエ団入りを目指してしのぎを削る若者たちのドラマ。監督はミュージカル「回転木馬」の演出で高い評価を受け、映画監督としては『英国万歳!』『クルーシブル』『私の愛情の対象』などを撮っているニコラス・ハイトナー。どの映画も評価が高かったけれど、今回の『センターステージ』こそハイトナー監督の現時点での最高傑作だと思う。舞台演出の経験と、映画監督としてのドラマ作りの手腕が見事にかみ合っているのだ。

 ところでバレエ映画はミュージカルなのか? そりゃミュージカルですとも! バレエ映画の古典『赤い靴』はミュージカル映画の一種だと思われているし、ミュージカルスターのジーン・ケリーはバレエ映画『舞踏への招待』を作っている。レスリー・キャロンやシド・チャリシーはバレリーナ出身で、映画の中でバレエを踊るシーンがたくさんあるではないか。『センターステージ』はバレエ系ミュージカル映画であり、『四十二番街』以来綿々と続くバックステージものの王道をいく作品でもある。もちろん歌のシーンはないし、タップダンスもない。でもハイトナー監督はこの映画のバレエシーンを、じつに見事なエンタテインメントに仕立てる。バレエ映画ではつい最近も『リトル・ダンサー』という映画があったけれど、この『センターステージ』はそれ以上にミュージカルを感じさせてくれるのだ。

 映画はバレエ学校に集まった生徒たちの友情や恋をからめながら、ダンスの魅力やバレエの世界の厳しさを描いていく。「脚の形が悪いからこれ以上続けても無駄だ」「肉体的なん欠点を克服できるダンサーには華があるが、君にそれはないよ」と、主人公のひとりが退学勧告を受けるシーンがある。技術や熱意だけでは補いきれないのが、肉体を使った芸術であるバレエの世界の厳しさ。どんなにバレエが好きでも、理想的な肉体の持ち主以外はある一定レベル以上には進めない。逆に類い希なる才能と肉体を持ちながら、バレエの道に進むことに苦しみ抜く者もいる。互いにライバルでありながら、共に同じ道を進む親友同士という生徒たちの絆。

 出演者のほとんどは「踊れる」ことを条件に選ばれた人たち。(芸術監督役のピーター・ギャラガーが踊れるかどうかは知らないが……。)この映画の中ではドラマ部分の演技力と同じぐらい、ダンスでの表現力が物語を盛り上げていくのだ。この映画の素晴らしさは、練習シーンと実際の公演シーンにギャップがないこと。練習場面で行っていたことが、そのまま公演の場面にも出てくる。しかも稽古場の何倍にもショーアップされて。 「あの振り付けがこうなるのか!」という驚きが、そのまま感動に変わるのだ。クライマックスの2つのナンバーはどちらも素晴らしい。こういうダンスナンバーだけでも、この映画を観る価値はあると思うぞ!

(原題:CENTER STAGE)

2001年4月GW公開予定 有楽町スバル座他 全国順次
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント


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