ドッグ・ショウ

2001/03/01 ワーナー試写室
ドッグ・ショウの舞台裏に広がる愛犬家たちの人間ドラマ。
芸達者な役者たちが大いに笑わせてくれる。by K. Hattori


 世の親バカたちが「うちの子供が世界で一番かわいい!」と思っているように、世の愛犬家たちも「うちのワンチャンこそ世界で一番チャーミング!」と思っている。そんな愛犬家たちが一堂に会するのが、世界各地で開催されているドッグ・ショウだ。この映画はアメリカのあるドッグ・ショウに関わる人々の喜怒哀楽を、ドキュメンタリー風の演出で描き出したコメディ映画。登場するのは多数の犬とその飼い主。ドッグ・ショウの主催者。会場近くのホテルの支配人など。ドッグ・ショウという愛犬家以外にはまったく興味の持てないであろう大イベントに、生活環境も価値観も違うさまざまな人々が集まり、悲喜こもごもの人間ドラマが展開して行く。

 監督・脚本は俳優として数々のハリウッド映画に脇役出演し、『ケビン・ベーコンのハリウッドに挑戦』『ダリル・ハンナのジャイアント・ウーマン』などの監督作も作っているクリストファー・ゲスト。この映画には彼自身も、大型のブラッド・ハウンドを飼う釣具店主人役で出演している。スター俳優というのは登場しないが、ハリウッド映画にも多数出演する実力派の脇役俳優たちがぞろぞろ登場して、思い思いの愛犬家ぶりを披露しているのは見もの。エピソードはどれも細かなユーモアやギャグがぎっしり詰まっているのだが、どれも「こんな人っていそうだなぁ」とか「こんなことってあるよなぁ」というリアルなものばかり。クスクス、ニヤニヤしながら、映画を最後まで楽しむことができます。

 この映画には犬がたくさん出てくるけれど、だからといって動物映画というわけではない。『ベートーベン』や『101』のように、「動物トレーナーが付きっきりで犬にもお芝居をさせました」というタイプの作品とはまったく異なる。この映画に出てくる犬は、動物映画のヒーローになるような、人間顔負けの芸達者というわけではない。毛並みも立派でどれもよく手入れされてはいるけれど、その中身はどこにでもいるごく普通の犬。この映画は「犬が主役のイベント」をテーマにしながら、そのイベント参加に血道を上げる「人間たち」を描いている。どんなに立派な血統書が付いた犬だろうと、飼い主にとってどんなに可愛い犬だろうと、無関心な他人の目から見ればそこいらにいる雑種の野良犬と大差ない。たぶん似たようなマニアックな世界は、いろいろな分野に存在するのだと思う。例えば『ギャラクシー・クエスト』に登場するSFコンベンション。『チェイシング・エイミー』に登場したコミックコンベンション。日本映画『あつもの』に登場した菊の品評会。

 映画を観ていると「なるほど、こういう世界があるんだなぁ」と感心してしまうが、じつは世の中のほとんどは第三者の目から見れば「こういう世界があるんだなぁ」という程度のものかもしれない。パソコン通信やインターネットの世界もそうだし、映画を観てそれについてあれこれ考えたり書いたりするというのも、関心のない人にとって見れば相当にマニアックな世界だろうな。

(原題:Best in Show)

2001年3月31日公開予定 シネマライズ
配給:ワーナー・ブラザース映画 宣伝・問い合わせ:アップリンク


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