ゴッド・アーミーIII

2001/02/15 TCC試写室
クリストファー・ウォーケン主演のオカルト・アクション映画。
物語の背景がちょっと説明不足すぎる。by K. Hattori


 '94年に製作された『ゴッド・アーミー/悪の天使』、その続編として'97年に製作された『ゴッド・アーミー/復讐の天使』に続くシリーズ第3弾。クリストファー・ウォーケンが堕天使となった元大天使ガブリエルに扮し、人間界で天国の戦争の続きが繰り広げられるというオカルト・アクション映画だ。僕は前2作を観ていないので、物語のバックグラウンドがまったくわからない。これはいずれビデオか何かをチェックすることにして、とりあえずこの映画についてだけの感想。

 荒廃した現代社会の片隅で、神の人間無視を説くダニュエルという青年がいる。彼によれば、神は人間をかつては愛していたが、今は人間を忘れて背を向けたまま、人間界が荒廃していくのを放置しているのだという。彼の伝道所は朽ち果てた廃墟のようなビル。だが熱心な聴衆の中に紛れ込んでいた盲目の男は、突然銃を取りだしてダニュエルに向けて乱射。伝道所は大パニックになり、犯人の男も混乱に乗じて逃走してしまう。この現場に、人間界に落とされたガブリエルの姿もあった。犯人は自分のアパートに戻ると、何者かの声に急き立てられるかのように自殺。その現場から立ち去ったのは、黒装束の死の天使ゾフィエルだった。彼はダニュエルの遺体から心臓を奪い取るべく警察に向かう。だがダニュエルはその一足前に復活して警察から脱出する。

 聖書やキリスト教の伝説(両者は必ずしも一致しない)に登場する人名やキーワードが全体に散りばめられてはいるが、物語のベースにある「天国の戦い」自体がこの映画の中ではかなり大胆にアレンジされているらしく、この映画を観ただけでは全体像を俯瞰するのが困難。なぜゾフィエルはダニュエルを殺そうとするのか。ダニュエルはなぜ人類の救世主になり得るのか。天使が人間に敵対するのはなぜか。どうもよくわからない。

 もっともこのわかりにくさは、単に僕がシリーズの前作を観ていないからだけでもないようだ。ダニュエルやゾフィエルはこの映画が初登場なのだろうから、このふたりとガブリエルを軸に物語を回していく限り、そんなに複雑なことになりようがないと思うのだ。前作『ゴッド・アーミー/復讐の天使』にも出演していたスティーブ・ハイトナーをオカルトマニアの検視医ジョセフ役で登場させたのは、彼に物語の背景を語る解説者としての役割を期待してのことだろう。ダニュエルの身に何が起きているのかを必死で知ろうとする彼の恋人を登場させ、ジョセフとガブリエルが彼女に接触するのだから、本来はそこで物語の背景を語り尽くせるはずなのだ。

 ダニュエルが救世主であることを自覚したのだから、これで物語は完結なのだろうか。ダニュエルの恋人の名はマギーで、ゾフィエルは「マグダレナ」と呼びかけていた。つまりマグダラのマリアだ。彼女はイエスの妻で、イエスの子供を産んだという伝説もある。ガブリエルは受胎告知の天使だから、本当ならダニュエルを殺してしまい、彼の子供が救世主になるのが順当だと思うけどな。

(原題:The Prophecy III: The Ascent)

2001年4月7日公開予定 シネ・リーブル池袋 「爆闘!バトル映画祭」
配給:ギャガ・コミュニケーション Kシネマ


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