エージェント・レッド

2001/02/02 TCC試写室
ツッコミどころ満載。ドルフ・ラングレン主演のB級アクション映画。
大勢でゲラゲラ笑いながら観るのが正しいと思う。by K. Hattori


 ドルフ・ラングレン主演のB級アクション映画だが、B級すぎてかなりとんでもない事になっちゃってる作品。ラングレンは数年前に『ピースキーパー』という快作に出演しているのだが、その後こんな映画に出ていたのね。なんだかすごく安い俳優になってしまったなぁ。しかしこの映画、その安っぽさが半端じゃないからむしろ清々しい後味さえ残る。ラングレンという使い古された俳優に、細菌兵器を使ったテロという使い古しのアイデア、さらに『クリムゾン・タイド』などの使い古しの映画フィルムを駆使して、やっぱりどうしようもなく使い古された映画しか作れなかったというオチが付く。脚本は全編穴だらけ。アクション演出のぬるさを音楽と編集でごまかそうとして、それでもどうしてもごまかしきれない悲しさ。「こんな細かいミスは観客が見破らないだろう」と高をくくっていて、じつに簡単に見破られてしまうのも寒いぞ。この映画に「ダメな映画」というレッテルを貼るのはたやすい。しかしここまでダメだと、逆にそのダメさを笑い飛ばしたりすることもできる。

 そもそも僕がこの映画を「だめだこりゃ」と思ったのは最初のステルス機奪取作戦のシーンから。作戦に参加する特殊部隊の迷彩メイクが、いかにも「今塗りました」という感じ。数人いる隊員たちの表情には緊張感ゼロ。しかも中にひとりいる女性隊員は、肩まである長い髪を束ねることも帽子に押し込むこともせず、ヘリから飛び降り、ジャングルを突っ切り、そのまま敵陣に乗り込んでいく。(ちなみに作戦参加者は全員が無帽。)こんな格好で適地に乗り込んで、もし敵兵に見つかり格闘にでもなったら、髪の毛つかまれた瞬間にそれで終わりじゃないか。僕はこのシーンでかなりズッコケたのだが、この映画はその後もそれ以上のズッコケが連発。

 1950年代にアメリカで偶然開発され、その後ソ連が盗み出した細菌兵器「エージェント・レッド」を、アメリカが潜水艦で輸送するという作戦。その護衛を言い渡されたのが主人公のヘンドリックスだ。ところが潜水艦はロシア人の過激派に乗っ取られ、艦内は細菌で汚染される。この過激派グループはかつて旧ロシアで「レッド」の汚染によって絶滅させられた村の関係者で、世界に生物兵器の恐ろしさを知らせるため、ミサイルの弾頭に「レッド」を乗せてニューヨークとモスクワに撃ち込もうとする。それを主人公が阻止するわけだ。

 そもそもこの映画、なぜ小道具に細菌兵器を持ち出したのかが意味不明。これは素直に毒ガスとかにしておいた方がよかったんじゃなかろうか。でないと艦内の空気を入れ換えればそれでOKという理由に、どうにも釈然としない気持ちが残ってしまう。細菌は空気中で6時間しか生きられないという説明が後から出てくるけれど、感染者の死体の中には細菌は残っていないのか?

 精密機器が密集した艦橋で大口径の拳銃を乱射しても、計器類に拳銃弾が1発も当たらない不思議。艦内連絡用の電話で、外部と連絡を取る不思議。すごい映画です。

(原題:AGENT RED)

2001年4月14日公開予定 シネ・リーブル池袋
配給:ギャガ・コミュニケーションズ Kシネマグループ


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