アンブレイカブル

2000/12/19 ブエナビスタ試写室
『シックス・センス』の監督・主演コンビによる新作。
僕にとっては期待はずれな内容。by K. Hattori


 『シックス・センス』のM・ナイト・シャマラン監督の新作。シャマラン監督本人の書いたこの映画の脚本に、500万ドルの値が付いたことがハリウッドでは話題になっているそうだ。ちなみに『シックス・センス』の脚本は200万ドルだったとか。ハリウッドでもこれだけの脚本料を取るライターは、ほんの一握りだという。

 主演は『シックス・センス』に引き続きブルース・ウィリス。ニューヨークからフィラデルフィアに向かう列車が原因不明の脱線転覆事故を起こし、死者131名という大惨事となる。だがこの列車に乗り合わせていた中年男デヴィッド・ダンは、かすり傷ひとつ負うことなく奇跡的に生き延びた。間もなく彼のもとに、「これまでの人生で、君が病気やケガをした日数は?」と記した1通の奇妙な手紙が届く。考えてみれば、デヴィッドは今までに病気やケガをした経験がほとんどないことに気付く。手紙の差出人であるイライジャという男は、先天的な病気で身体の骨が非常にもろく、いつも怪我が絶えない人生を歩んでいる。彼は「私のように先天的に病気やケガばかりの弱い人間がいるなら、その反対に一切の病気やケガと無縁の強い人間がいるはずだ」と。事故から奇跡の生還を果たしたデヴィッドは、その候補者だった。

 平凡な人生を歩んできた男が、自分でも気付かないままアメコミに登場するスーパーヒーローのような力を持っているというアイデアは面白い。ただしこの映画、活劇なのかミステリーなのかサスペンスなのかホラーなのか、まったく分別不可能で観ていて戸惑ってしまう。この話を『X-メン』のようなアクション・ヒーロー映画にすることも可能だろうし、ある男が別の男の妄想世界に取り込まれていくサイコ・サスペンスとして描くことも可能だっただろう。アメコミオタクの妄想に引っ張り回された勘違い男を描く、パロディ満載のコメディにだってなりそうな話なのだ。でもこの映画はそうしたジャンル映画の定石に走らない。その結果としてまったく別種のすごい映画ができるなら構わないが、この映画の場合はどうにも煮え切らない、中途半端な映画になっているような気がする。かなり期待はずれだった。

 映画に登場するデヴィッドとイライジャのコンビは、映画『デッドゾーン』の主人公をふたりの人間に引き裂いたようなキャラクター設定。クリストファー・ウォーケン演じる主人公の超能力分野をブルース・ウィリスが受け持ち、傷ついた肉体と社会からの疎外感をサミュエル・L・ジャクソンが受け持つわけだ。荒唐無稽な世界観を持ち出して、主人公を戦いと冒険の世界に無理矢理引き込む男の存在は、「デビルマン」における不動明と飛鳥了の関係にも似ている。一方は古代遺跡から読みとったデーモンの歴史という世界観があり、もう一方にはアメコミに真の歴史が描かれているという世界観がある。デビルマンが最初の1話でやった話を、1時間47分の映画にしたようなもの。新鮮味はあまりない。

(原題:Unbreakable)

2001年正月第2弾公開予定 丸の内ルーブル他 全国松竹東急系
配給:ブエナ ビスタ インターナショナル(ジャパン)


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