ハイ・フィデリティ

2000/12/19 ブエナビスタ試写室
中古レコード屋を経営する男の失恋遍歴を描くラブコメ。
ジョン・キューザック主演。音楽たくさん。by K. Hattori


 主人公ロブ・ゴードンは、ずっと女に振られ続けてばかりの人生を送っている。そのせいか30代半ばになるのに未だ独身。今日もまた、同棲中だった恋人ローラが部屋を出ていくのを、文句を言いながらもただ見守るしかない有様だ。去りゆくローラに「君なんか僕を振って傷つけた女ベスト5にも入りやしない!」と強がりを言ったものの、本当はかなりこの破局が骨身にこたえているロブ。彼は過去の失恋体験ベスト5を順次回想しながら、自分がなぜ女性とうまく行かないのかを思案し始める。ロブはローラとよりを戻したいのだ。

 生まれてこの方一度も女に振られたことのない男なんて、僕は絶対に信用しない。30何年生きていれば、それまでにつき合った女性の3人や5人や10人いたっておかしくない。同時にそれだけの人とつき合うわけには行かないから、必ずどこかで恋の挫折や破局があるわけだ。相手に振られるにせよ、自分から別れを切り出すにせよ、恋の終わりには痛みが付きまとう。恋というのは不思議なもので、似たような出会いや別れを何度繰り返しても、それがほとんど学習や免疫や耐性を生み出さない。失恋に慣れっこになって、恋人と別れたところで痛くも痒くもないなんて人はいないと思うし、新しい恋の芽生えに心をときめかせない人もいないと思う。

 この映画の中でロブがローラに振られて見苦しく振る舞うくだりは、ひどく滑稽だが同時に誰もが経験する失恋の痛みとして共感を呼ぶと思う。去っていく彼女を引き留めようとネチネチからむとか、彼女に新しい男ができたと聞いて夜中に彼女に何度も電話してしまうとか、いざ彼女と話をしなければというときにコソコソ逃げ回るとか、似たような経験をした人は多いに違いない。こういうのは確かにみっともない。でもみっともないとわかっていても、そう行動してしまうものなのだ。

 原作はニック・ホーンビィの小説で、この本に惚れ込んだジョン・キューザックが主演他に製作・脚本・音楽監修を担当。ヒロインのローラを演じているのは、『ミフネ』のイーベン・ヤイレ。リサ・ボネット、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ、リリ・テイラー、ティム・ロビンスなど、豪華なゲスト出演者の顔ぶれも見どころ。ジョーン・キューザックをロブとローラの共通の友人リズ役にしたのはうまいキャスティング。ロブとリズの間にある親密さにまったく恋愛感情が入らないというのは、ジョンとジョーンが実の姉と弟という関係だからです。監督は『グリフターズ/詐欺師たち』スティーブン・フリアーズ。主人公がカメラに向かって話す一人称の台詞で物語をどんどん進めていくのは面白いが、同じように一人称の台詞を多用したキャメロン・クロウの『シングルス』などに比べるとちょっと重たい。クロウ監督のデビュー作『セイ・エニシング』にジョン・キューザックが主演していたこともあって、どうしても比較してしまうんだけどね。でも面白い映画でした。最後のライブシーンも、じつに楽しかったなぁ。

(原題:High Fidelity)

2001年陽春公開予定 恵比寿ガーデンシネマ
配給:ブエナ ビスタ インターナショナル(ジャパン)


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