マイ スウィート ガイズ

2000/12/14 GAGA試写室
アントニオ・バンデラスとウディ・ハレルソンがボクシング対決。
主演二人はどう考えても年取りすぎだよ。by K. Hattori


 ケビン・コスナー主演の『さよならゲーム』、ウェズリー・スナイプス主演の『ハード・プレイ』、トミー・リー・ジョーンズ主演の『タイ・カップ』、ケビン・コスナー主演の『ティン・カップ』など、スポーツ映画を好んで監督するロン・シェルトンの新作は、ウディ・ハレルソンとアントニオ・バンデラス主演のボクシング映画。ロサンゼルスの同じジムに所属するシーザーとビンスは、ラスベガスで行われるマイク・タイソンの試合の前座ボクサーが突然試合に出場できなくなったことがきっかけで、当日の朝いきなりプロモーターから代役ボクサーとしてリングに上がることを要請される。ふたりとも何年か前には一部のボクシングファンの間で注目された選手だが、それぞれキャリアの絶頂期にチャンスをふいにし、今は盛りも過ぎたロートル・ボクサーに成り下がっている。タイソンの前座とはいえ、全世界にテレビ中継される大切な試合だ。こんなチャンスを逃したら、たぶん彼らの現役生活に次のチャンスはないだろう。ふたりは「勝った方が世界タイトルマッチへの挑戦権を得られる」ことを条件に、この試合に挑むことになる。

 面白いスポーツ映画を何本も作っているシェルトン監督にしては、精彩のない平凡な映画に終わっている。クライマックスのボクシング・シーンは迫力があるけれど、それも観ている者の血が沸騰しそうになる興奮とは程遠い。そもそも主演の二人が年とりすぎだろう。盛りを過ぎた中年ボクサー(主演の二人はもう40歳だ)が、最後の夢をかけてリングに上がるという設定は『ロッキー』を連想させるが、『ロッキー』が製作されたときのスタローンですら30歳だった。確かに世の中にはジョージ・フォアマンのような桁違いのボクサーもいる。でもこの映画の主人公は、そうした天才ではない。才能がないから、長年無名のままくすぶっていたのです。

 主人公ふたりのマドンナを演じるのは、やはり40歳近いロリータ・ダヴィドビッチ。二人のスポーツ選手と年増女という組み合わせは、ロン・シェルトン監督の出世作『さよならゲーム』における、ケビン・コスナーとティム・ロビンスとスーザン・サランドンの関係を思い出させます。『さよならゲーム』では、選手としては盛りを過ぎたベテランの体力の衰え自体が、作品のテーマのひとつになっていた。ベテラン選手を演じるコスナーと、若手を演じるロビンスを組み合わせて、現役の選手人生にピリオドを打とうとする中年男の悲哀をにじみ出させていた。でもこの『プレイ・イット・トゥ・ザ・ボーン』のボクサーたちは、そうした緊張感がまるで感じられない。「これが人生で最後のチャンスだ」「このチャンスを逃したら俺は一生後悔するだろう」という意気込みが伝わってこない。このキャラクター設定なら、主人公たちをあと10歳ずつ若くしないとダメ。そうすれば倍々にチップを賭け続ける「ルーレット必勝法」も、彼らの「負けても次に大きく取り戻せ」という人生哲学の象徴のように見えてくるはずなんだけどなぁ……。

(原題:PLAY IT TO THE BONE)

2001年お正月第2弾公開予定 シャンテシネ
配給:ギャガ・コミュニケーションズ 宣伝:リベロ、デジタルシステム


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