ホフマン物語

2000/12/04 松竹試写室
『赤い靴』のスタッフがオッフェンバックのオペラを映画化。
テクニカラーの色彩が素晴らしくきれい。by K. Hattori


 名作『赤い靴』と同じメンバーが作ったバレエ映画。監督はマイケル・パウエルとエメリック・プレスバーガー。幻想小説や怪奇小説の創始者であるホフマンの短編小説を題材に、プロローグ、3つのエピソード、エピローグからなるオペラを作曲したのはオッフェンバック。この映画版では各エピソードの代表的な歌曲を中心に全体を再構成し、周辺人物や説明を大幅に割愛し、パントマイムとバレエに入れ替えている。こうすることで、舞台では3時間以上かかるという上演時間を、2時間4分という上映時間に短縮している。今まで日本で公開されたりビデオソフト化されたりしていたのは、アメリカで公開された1時間50分の短縮版だったという。今回上映されるのはオリジナルの全長版だ。

 物語の主人公はホフマン本人。バレエダンサーに振られたと思い込んだホフマンは、劇場の近くの酒場で仲間たちと飲んだくれ、彼らのリクエストに応えて3つの幻想的な物語を語り始める。それは女性の3つの顔についての物語。ホフマン自身が恋いこがれる、永遠の恋人についてのファンタジーだ。第1話は若い学生であったホフマンが、魔法のメガネ越しに見る自動人形のオランピアに心惹かれる物語。オランピアを演じているのは『赤い靴』のモイラ・シアラー。彼女はプロローグとエピローグでも、ホフマンの恋人役で登場している。いわば彼女は、現実と幻想の架け橋となるヒロインだ。このエピソードは、映画全体の中でもっともバレエの要素が強い。機械仕掛けのオランピアは、ゼンマイが切れると動かなくなる。慌ててゼンマイを巻き直すと、また動き始めるオランピア。操り人形たちの中で、オランピアとホフマンが踊るシーンは面白い。突然人形のクビがはずれたり、最後にオランピアがばらばらにされてしまうなど、少し残酷なシーンもアクセントになっている。

 第2話は少しお金持ちになったホフマンが、ヴェネチアの高級娼婦(コーティザン)に影を盗まれるお話。このエピソードには、有名な「ホフマンの舟歌」が使われている。このエピソード以降は、バレエよりも歌が全面に出てくる。第3話はギリシアの孤島に待つ病気の恋人を、有名な詩人になったホフマンが訪ねる話。ヒロインのアントニアを演じているソプラノ歌手のアン・エアーズは見事な歌声を聴かせるが、肺病で余命わずかな薄幸の女性を演じるにしては体格がよすぎるかも。このエピソードには、バレエ要素はほとんどない。

 プロローグからエピローグまで共通して登場するのは、語り手であるホフマンと、彼からヒロインを奪うロバート・ヘルプマン扮する宿敵、そしてホフマンの親友ニクラウスのみ。3つのエピソードには、レオニード・マシーンが共通して登場し、ホフマンと対照的な男性キャラクターを演じる。不思議なのはニクラウスの存在。原作ではミューズという設定らしいが映画版ではその説明を削除したため、常にホフマンに付いて回る小姓みたいな役回りになってしまった。ちょっとゲイっぽいのだ。

(原題:The Tales of Hoffmann)

2001年1月中旬公開予定 キネカ大森
配給:ケイブルホーグ


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