サイバーワールド

2000/11/17 東京アイマックス・シアター
もともと平面のCG映像でも再形成すれば3D映画が作れる。
もとになった映像が古いのが気になる。by K. Hattori


 いつも楽しみにしているアイマックス・シアターの3D映画なのだが、今回はあまり楽しめなかった。上映時間45分の中で、1本数分の3D映像が次々に登場するというオムニバス映画。ところが集められている映像はどれも新鮮味がない。「今さらこういうものを見せられてもなぁ」というレベルのものばかりなのです。それもそのはず、この映画はオムニバス映画としてゼロから企画されたものではなく、ここ数年間のCG業界で話題になった作品を集めたアンソロジーなのです。もともと3D映画として作られたものではなく、2Dの作品だったものを3Dに作り直したものがほとんど。オリジナルはどれも数年前のものです。中には『シンプソンズ』もあるし、ドリームワークスの『アンツ』もある。

 CGはコンピュータの中で物体の形や大きさや照明の位置、そしてカメラポジションなどを計算して作られる。この時、右目用と左目用のカメラ位置として同時に2つの映像を作り出せば、それは3D映像になるのだ。一度2D用の作品としてデータが作ってあれば、それを再形成することで簡単に3D映像が作れる。つまりその気になりさえすれば、『トイ・ストーリー』や『バグズ・ライフ』のアイマックス3Dバージョンが作れるというわけ。この『サイバーワールド』は、そんなCGデータ再利用の実験なのだ。'97年に企画され、翌年には候補作が集まったというから、中身がすべて2,3年前の映像になっているのは仕方がない。2Dが3Dになる効果は、もともとの2D映像を知っていないとよくわからない。その点では『アンツ』の3D化は面白く観られた。

 CG作品傑作集としての『サイバーワールド』は、それだけでは1本の作品にならない。そのため案内役のバーチャル美女を登場させ、途中からはシステムに侵入したバグ退治というアクションを付け加えるなど、全体をまとまりのあるひとつの作品として見せようとする工夫をしている。ところがこのバーチャル美女があまりかわいくないのと、バグ退治の合間にも次々と映像が紹介されていくという取って付けたような構成では、どうしたって1本の映画としてのまとまりに欠けてしまう。そんなことなら最初から案内役が「これは2D作品を3Dに作り直したものです」と映画のコンセプトを説明し、2D作品との差を示しながら物語を進行させた方がいいと思う。映画の意図を最初に説明しないまま観客に仕立て直した古い映像を見せるのは、廃物利用みたいでなんだか気になる。雪印が回収した牛乳を加工乳の原料に使っていたようなものだ。悪いこととは言いきれないが、なんだか騙されたような気がするんだよなぁ……。

 3D映画を次々紹介していくアイマックス映画には、『エンカウンター3D』があった。全編CGを使ったアイマックス映画も、既に何本か作られている。そんな中で『サイバーワールド』を観せられても、あまり驚かないというのが正直なところだ。退屈はしないけれど、特別な驚きもない映画。ちょっとガッカリしてしまった。

(原題:CYBERWORLD)


ホームページ
ホームページへ