ゴジラ×メガギラス
G消滅作戦

2000/11/15 東宝第1試写室
対ゴジラ作戦の副作用で古代の巨大昆虫が大発生。
巨大昆虫とゴジラがお台場で対決。by K. Hattori


 そろそろ存続自体がヤバイのではないかと噂されている、東宝の看板『ゴジラ』シリーズの最新作。このシリーズは5年前に『ゴジラVSデストロイア』で一度中断し、昨年の『ゴジラ2000/ミレニアム』で復活。その際、特技監督が川北紘一から鈴木健二にバトンタッチされた。今回は監督も新人の手塚昌明に替わり、一層フレッシュなゴジラになっている。前作はデジタル合成を多用するなど、特撮面でそれまでにない試みを数多く行っていたものの、意欲に技術が追いついていないようなところも多くて、少し残念な結果になっていた。特にダメだったのは脚本と、ゴジラの相手役となる怪獣の設定。最後がタコ星人だもんなぁ……。

 ゴジラシリーズは、行き詰まると原点に復帰する。つまり昭和29年の第1作目『ゴジラ』に戻して、それ以降の作品はすべてなかったことにしてしまう。このシリーズの中では、いくつものパラレルワールドが存在しているのだ。今回のゴジラも、また別のパラレルワールドを作った。しかしそれが徹底しているから、この映画を観た人は「ずるいなぁ」と思いつつ、「やるなぁ」とニヤニヤ笑って許せてしまうはず。何しろ映画の冒頭に用意されているのは、現代の技術でリメイクされたオリジナルのゴジラなのです。ゴジラの上陸で銀座が火の海になる様子を、一部ミニチュアセットも作って撮影し直しているらしい。仕切直しをするための仁義の切り方として、これほど正しいものはないと思う。

 最初のゴジラ上陸で東京が壊滅し、首都が大阪に移転した日本が舞台です。大阪城の隣に国会議事堂が建ち、リニアモーターカーが各都市を結んでいる。昭和41年に東海村の原発がゴジラに襲われて以来、日本は脱原子力発電を宣言し、代替エネルギーの開発で世界の先進国になっている。もうこれだけで、この映画に描かれているのが「我々の住む日本」とは別世界であることがわかる。パラレルワールドです。だから古代にメガヌロンやメガニューラ、メガギラスといった巨大昆虫が実際にいたのかどうかは、あまり関係ないこと。この映画に登場する世界では、太古の昔にそういう生物がいたのです。

 今回はこうして映画の世界観をきっちりと作っているため、映画に登場するブラックホール砲のようなテクノロジーにも違和感がなくなってしまう。映画の世界では、直径2メートルのブラックホールを人工衛星から地上に射出する技術があるんだからしょうがない。物理法則を無視して人工衛星が垂直に落下してくるのには参ったけど、これはまぁ映画のための嘘として許しちゃう。

 デジタル合成は今回かなり成功していて、ゴジラの背中に人間がしがみつく場面などは興奮してしまう。実景とゴジラの合成もなじみがいい。戦闘機のグリフォンはCGにした方がよかったと思うけど、これは今後の課題。平成『ガメラ』シリーズを相当意識しているようだが、ゴジラ周辺の描写に比べて人間関係のドラマがまだまだいい加減なのも今後の課題になると思う。


ホームページ
ホームページへ