デッド・アウェイ
バンコク大捜査線

2000/11/09 TCC試写室
麻薬組織を捜査する特殊部隊と潜入スパイの友情。
アクション満載のタイ映画。少し大味。by K. Hattori


 昨年の東京国際映画祭で『エクストラ・リーガル/バンコク大捜査線』というタイトルで公開された、タイ製作のアクション映画。麻薬撲滅を目指す政府と、麻薬で大儲けするマフィア組織、マフィアの金で甘い汁を吸う政治家。そんなタイのお国柄が、この映画にもたっぷりと描かれている。上映時間は1時間50分。最初から最後まで『ヒート』のクライマックスシーンを連想させる激しい銃撃戦が続く映画で、ヘリコプターを使ったアクションや高層ビルからの宙づりなど、さまざまなアクションの見せ場が次々に登場してくる。アクションの切れ味は鈍く大味だが、多少イライラさせられながらも、二転三転する物語につい引き込まれてしまうのも事実。

 警察のエリート集団である特殊部隊の隊員と、麻薬組織内部にいる警察のスパイの友情と信頼関係を描くアクション・ドラマ。麻薬組織内の内通者ゴンの協力により、ボスのラオ・スーを逮捕することに成功した特殊部隊だったが、現場からは取引の証拠書類を入れた鞄が消えてしまう。事件が一段落したと思われた頃、ラオ・スーの釈放を要求するグループが列車を占拠。乗客ひとりひとりに高性能爆弾を仕掛けて警察を牽制する。

 出演者の顔に馴染みがないため、最初のうちは誰が誰だかさっぱりわからない。主演のドーム・ヘータクンとスパコーン・キッスワンはタイの若手人気俳優だそうで、タイの観客なら最初からこのふたりを中心に映画を観ていくから混乱はないのでしょう。でも僕は最初の厳しい訓練シーンがどうやって次のシーンにつながるのか、特殊部隊の中では誰が主役なのかなど、物語の大枠をつかむのに少し苦労してしまった。このあたりは映画の作り方の問題というより、映画をどう受け止めるかという観客側の問題だと思う。タイの観客にとっては苦もなく理解できるものが、僕のような外国人にはわかりにくいだけの話です。映画が中盤まで進んで事件の全貌が明らかになれば、さすがに人間関係もすっきりしてくるしね。

 列車乗っ取り事件がいよいよ解決するかと思われた瞬間、思いがけない展開が起きて物語は大混乱。特殊部隊の隊員ヌイは何が何だかわからないまま、銃弾から逃れるため人質だった看護婦の手を取って現場から逃走。このシーンは観客にとってもあっけにとられる場面で、本当に何が何だかわからなくなってしまう。主人公の混乱ぶりを、観客も同じ気分で味わうことになるのだ。ただ僕はここで、ヌイが主役になるという展開に付いていけなくなってしまった。これは序盤から主役が誰なのかわかりにくいという展開に原因があるわけで、逆にこの事件を境にして以降は、主役が明確になってくる。

 銃弾の雨あられの中を逃げ回る主人公たちには一度も弾が当たらず、主人公たちが撃つ銃の方が命中精度が高いという、『シュリ』にもあった都合のいい展開。消えた鞄の行方が最後まで問題になるのだが、結局鞄がどこに隠してあったのかわからないのも少しズルイような気がする。ここで「なるほど」と思わせてほしかった。

(英題:THE EXTRA LEGAL)


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