♪まちづくり元気ウィルスが行く♪

2000/10/20 岩波シネサロン
「安全・安心まちづくり女性フォーラム」の活動報告。
この映画は誰のために作られているの?  by K. Hattori


 『とらい・とらい・トライ!/元気を獲りに行くべ』と同じく、カネボウ国際女性映画週間のプレイベントで上映される熊谷博子監督のビデオ・ドキュメンタリー映画。上映時間は1時間40分。『とらい・とらい〜』がわりと面白く観られたので、引き続きこの映画の試写も観たのだが、これはまったくつまらない映画で、観ていて椅子の固さが気になってしまった。

 建設省が中心になって全国23ヶ所に発足した「安全・安心まちづくり女性フォーラム」の活動を、参加者たちが芝居(しかも歌あり踊りありのミュージカル!)形式で発表することになる。題して「まちづくり元気ウィルス」。建設省で開発された新型ウィルスは瞬く間に全国各地に感染し、地域で活動する女性たちを中心にして、草の根と行政とが一体となったユニークな活動を生み出して行くのだ。舞台の上では全国から集まった各地区の代表者たちが、寸劇形式でそれぞれの活動内容を発表する。寸劇あり、腹話術あり、漫才あり、座頭市も登場するなど、それぞれが工夫を凝らした演出。映画はこの発表会と、いくつかの地域で実践されている具体的な活動の実地レポートからなっている。

 この映画がつまらないのは、この映画が誰をターゲットとして作られたものなのかよくわからないからだ。「安全・安心まちづくり女性フォーラム」には全国で1万人を越える参加者がいたというのだが、もし映画がこの参加者たちだけに向けられているのであれば、この程度の内容でも十分に楽しめるのだろう。身内の発表会の様子を、身内の人々が見て楽しむ。それは子供の運動会や学芸会のビデオを、親がビデオに撮って楽しむのとそう変わらない。活動を通じてよく見知っている○○さんや××さんが舞台の上で台詞を棒読みし、たどたどしい足取りでダンスを踊ったり、怪しげな音程で歌を披露する様子を観るのは、さぞや楽しいだろう。でもこれが女性フォーラムの活動を知らない外部の人たち(つまり僕のような部外者)に向けて、自分たちの活動を紹介するものだとしたら、これはちょっと物足りなすぎる。

 活動に参加していた人たちなら、女性フォーラムの設立経緯や活動内容について、前提となる知識を持っている。その上で活動報告を寸劇やパロディ形式にしても、そこで言わんとしていることは察しがつく。でも活動について予備知識のない僕から観ると、この活動の趣旨や設立の経緯がまったく見えてこないのです。建設省は今までどんな活動を行ってきたのか。それに対して、今回の女性フォーラムはどんな点がユニークなのか。どのようにして23ヶ所の活動拠点を定め、参加者たちをどう集めたのか。お金の流れは具体的にどうなっているのか。そうした疑問点が次々に浮かび上がってくるのだが、この映画の作り手も出演者たちも、それに対して何も答えてくれない。これじゃまるで、建設省からお金(もとはと言えば税金でしょう)だけもらって、浮かれた素人芝居をやっているだけに思えてしまうよ。


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