劇場版
カードキャプターさくら
封印されたカード

2000/07/12 徳間ホール
人気美少女アニメの劇場版第2弾。負のパワーが町を襲う。
前作のゲイテイストが後退したのは残念。by K. Hattori


 NHKで放送されていた美少女戦士アニメ「カードキャプターさくら」の劇場版第2弾。僕はテレビ版をまったく観ていなかったのですが、昨年劇場版の1作目を観て大感激。全編にあふれる露骨なゲイテイストに驚きつつも、美少女アニメとして不可欠な要素がすべて詰め込まれた作品の完成度に感心しました。今回もどんなにか妖しい世界が展開するものかと期待していたのですが、前作に比べるとゲイの匂いを感じさせる描写は後退し、わりと普通の話になっていました。これは残念。僕はテレビを見ていないので「いつの間にそんな話になっちゃったんだ?」とも思いましたが、この「いつの間に」という疑問はゲイテイスト後退を惜しむ気持ちであり、話がわかりにくいという意味ではありません。

 クラスメイトの小狼(シャオラン)から愛を告白された主人公さくらは、自分も小狼を大切に思っていることを告白できないでいる。小狼は香港に帰ってしまったが、いつかまた再会することがあれば、その時こそ自分の気持ちを正直に告白しようと心に決めるさくら。ところがそんなさくらの前に、当の小狼本人が突然現れる。意を決して気持ちを打ち明けようとするさくらだが、間の悪さからうまく気持ちを言葉にできない。そんな時、さくらが集めた全52枚のクロウカードが、少しずつ消滅していく事態が発生する。同時に街の中からは、建築物や人などが次々と姿を消していく。じつはクロウカードすべてに匹敵する力を持つ、封印されたカードが1枚だけ残されており、それがさくらの集めたカードを奪い返しているらしい。封印されたカードはその負のエネルギーで、街を虫食い状に消し去っているのだった。

 結局これは、テレビシリーズの番外編的なエピソードという位置づけなんだろう。思い起こせば映画版の1作目も、クロウカードの収集というテレビシリーズの本筋とは直接関係のないエピソードだった。映画版はテレビ版視聴者へのサービスであり、カーテンコール。今回の劇場第2弾では、過去の登場キャラクターが総出演してファンの声援に応えている。テレビ版のファンにとっては、夏休みのプレゼントみたいな映画です。

 物語としては、さくらと小狼の恋の行方とさくらたちの学校がお祭りで上演するお芝居とをシンクロさせながら、恋心を告白できない苦しさを描く定番のラブコメ・テイスト。封印された53番目のカードの話がラブコメ部分にうまく絡んでこないこともあり、カード消滅の危機感があまり盛り上がってこないのは残念。敵役に魅力がないと、対決ものは盛り上がりに欠けるのです。相手はカードだから人格のようなものをあまり前面に出すわけにも行かないのかもしれませんが、今まで集めたクロウカードすべてに匹敵する巨大な負のパワーを持つカードという設定なのだから、この解決法は物足りない。

 街が暗黒のパワーにえぐり取られていく描写は、岩明均のコミック「七夕の国」からの影響だと思う。こうやって映像化すると、なかなか迫力があります。


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