ファイナル・カット

2000/06/26 GAGA試写室
将来を嘱望されながら突然亡くなった人気俳優ジュード・ロウ。
彼の死を巡るドキュメンタリー映画(?)。by K. Hattori


 『ガタカ』『オスカー・ワイルド』『真夜中のサバナ』『リプリー』などに出演しているイギリスの美形俳優ジュード・ロウが昨年の2月に死んだ後、残された妻が中心となって作ったドキュメンタリー映画。映画の中身は、生前のロウが秘かに撮影していたフィルムやビデオの断片と、それに対するロウ本人のコメント、遺品となったそれらの映像を葬儀後に観る友人たちの反応や、彼らのインタビューなどで成り立っている。ジュード・ロウのファンにとっては、映画の中に登場する演技者としての彼ではなく、友人や家族とくつろぐ彼の素顔がたくさん観られるという意味で観逃せない作品だと思う。彼が結婚していることを知っていても、妻である女優サディ・フロストの顔をよく知らなかった僕は、この映画で初めて彼女の顔をじっくり観ることができた。ジュード・ロウはまさにこれからの俳優だっただけに、彼の突然の死は本当に衝撃的だし、映画界にとっても大きな損失だと思う。この映画には彼の生前最後の姿が記録されている。この映画を観て、彼の冥福を祈ろうではないか。

 一種のフェイク・ドキュメンタリーであるこの映画の内容を紹介するには、上記のような書き方をするのが一番でしょう。もちろんこれはドキュメンタリーではなく、ドキュメンタリーの体裁で仕上げたフィクションです。有名俳優ジュード・ロウの突然の死。その葬儀に集まった友人たちの前で、個人が残したという1本のビデオテープが披露される。そこには隠しカメラで撮影された、友人たちの秘密の素顔がたっぷりと写されていた。とても面と向かっては言えない陰口や悪口、本人不在の場所で語られる暴露話、度の過ぎた悪ふざけ、友人に対する裏切り、上品ぶった顔の下に隠された醜悪な素顔。ビデオを見せられた友人たちは、自分がそこに登場したり、自分の話題がそこで出されるたびに驚愕し、激怒し、それまで培ってきた夫婦間の信頼関係や友情は壊滅的な打撃を受ける。だがビデオは止まらない。やがてビデオは、ある決定的な真実を暴き出してしまう。

 ジュード・ロウや妻のサディ・フロストをはじめ、出演しているのはすべて現実の友人たちであり、本人が本人の役で出演している。もちろんここに登場する映像は隠し撮りされたものではなく、きちんと演出されたものだろうけれど。監督・脚本はこの映画にも友人役で出演しているドミニク・アンシアーノとレイ・バーディス。話のアイデアは面白いと思うし、現在超売れっ子の人気俳優を映画の中で殺してしまうというアイデアもいい。でも映画の出来映えはあまり冴えないのです。ドキュメンタリー風の映画にするなら、もっとそれにこだわってほしかった。編集に粗いところを見せるとか、カメラアングルや照明に多少のバラツキを作れば、現場で生で撮ってきた映像のような効果が出る。ビデオを見ている人たちの表情をフィルムで撮影するのは構わないが、隠し撮り映像はビデオ素材で統一すべきだろう。手法こそがこの映画の命なのに、それに徹底しきれない弱さがある。

(原題:FINAL CUT)


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