うちへ帰ろう

2000/06/21 映画美学校試写室
離婚夫婦の子供たちが20年ぶりに再会するのだが……。
もったいぶった様子が鼻につく素人映画。by K. Hattori


 アメリカでは結婚した夫婦の半分以上が離婚するという。日本でも最近は似たような状況に近づきつつあるような気がするが、まだアメリカに追いつくには何年もかかるだろう。僕は夫婦の離婚そのものを道徳的に断罪するつもりはないし、夫婦たるもの別れるよりは別れない方がいいなどと単純に言い切ることもできないと思っている。夫婦が結婚する事情は様々だし、別れる事情も様々だし、逆に別れない理由もいろいろだろう。そうした夫婦の事情を斟酌することなしに、「夫婦は死ぬまで一緒にいるべきだ」と既成のモラルで縛ったって意味はない。夫婦がずっと一緒に暮らすというのも、今となっては複数ある選択肢の中のひとつでしかない。僕は結婚制度そのものを否定はしないし、そのメリットも十分に理解しているつもりではあるけれど、そこに何の意味も見いだせなくなれば、夫婦という関係を解消するのも「ひとつの選択」だと思う。

 夫婦の問題は、その夫婦にしかわからない。ひょっとしたら、その夫婦にすら本当はわかっていないのかもしれない。この映画では、ある夫婦が離婚する。4人の子供のうち、3人の女の子は母親が引き取り、末っ子の一人息子は父親が引き取った。それから20年。心臓発作で入院した母親が「息子を捜してくれ」と言い出したことをきっかけに、離ればなれになっていた父母や姉弟が再会することになる。貧しい中で三人の姉妹を育て上げた母親に対し、父親はいつの間にか事業で成功して大金持ちになっている。長女は「父親は私たちを捨てて自分だけが成功した」と不満顔。弟は名門大学に進学しており、名家の令嬢と婚約中だ。長女はそんな父と弟の様子が、いちいちしゃくに障る。

 映画のテーマになっているのは、両親の離婚によって家族全員が受ける心の傷が、いかにして癒されるかだ。映画の中で、主人公の長女は30過ぎの一人前の大人になっている。それでも彼女は、両親の離婚というトラウマから抜け出せない。それは他の家族も多かれ少なかれ同じだ。「時が心の傷を癒す」なんて嘘っぱちで、心の傷は日々の生活という厚いかさぶたの下で、いつまでも疼くような痛みを人に与えている。この映画の中では家族が再会することで、そうした傷を乗り越えて新しい人間関係を作っていくことができた。でもそうした僥倖にいつも恵まれるとは限らない。

 離ればなれになった家族の再会という古典的なメロドラマだが、描かれているテーマそのものはいつだって今日的なものだと思う。ただし映画としての作りはヘタクソすぎる。役者たちの演技はともかくとして、全体の構成が悪いんじゃないだろうか。それに登場するキャラクターたちの輪郭が不明確で、筋立てを作るための性格付けという感じがする。これでそれぞれのキャラがもっと立ってくると、終盤の感動も盛り上がったと思うのだが。新人監督の作品だとしても、全体にひどく素人くさすぎる。もう少し脚本を詰めた方がよかったかもしれない。

(原題:THE AUTUMN HEART)


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