スパイダーズ

2000/06/13 GAGA試写室
秘密実験で巨大化したクモが人間を次々に襲うのだが……。
久しぶりに正真正銘のバカ映画を観た。by K. Hattori


 日本ではたくさんの洋画が公開されているけれど、劇場公開されずにそのままビデオで発売されてしまう作品も多い。その理由を端的に言ってしまえば「ビデオでもいいや」ということにつきる。ストーリーに新鮮味がない、派手な見せ場がない、出演者が無名、監督が無名など、取り立てて「売り」になるものがなければビデオ屋に直行するのが普通。そういう意味では、この『スパイダーズ』という映画もビデオに直行したっておかしくないものです。巨大化したクモが人間を襲うという、お決まりの巨大生物パニック。監督も出演者もまったく無名。しかも芝居はヘタクソだし、話の辻褄もまったく合ってない。僕はこの映画を観ていて、「なんでこんな映画を劇場にかけるんだよ〜」と思っていた。ビデオ発売時に「劇場公開作」という肩書きが欲しいがために、無理をして劇場にかける映画が多すぎます。

 軍がスペースシャトルを使って行った秘密実験によって、巨大なクモが誕生する。軍はこの秘密を隠蔽しようとするが、偶然基地周辺にいた大学新聞の記者たちがただならぬ気配を察知し、無謀にも基地の中に潜入した。瀕死の宇宙飛行士の中で孵化したクモは、あっと言う間に巨大化して基地内部の兵士や記者たちを襲う。主人公は巨大グモと戦って、なんとか基地からの脱出に成功。だが本当の恐怖はそこから始まった……。

 1時間半の映画ですが、そのうち1時間15分ぐらいは目も当てられない惨状。ヒロインのマーシーは宇宙人の存在を信じる陰謀マニアで、自分のトンデモ仮説を立証するために危険の中に仲間を巻き込んでしまう。この手の映画の中では、ヒロインは最後まで死ぬことがない。それはハリウッド映画の約束事だ。でもそれは、ヒロインが主体性のない受け身の存在だからこそ許される特権なのではないだろうか。自らが危険を承知で行動し、彼女に引っ張られるように仲間が次々と犠牲になっても、なぜ彼女だけが「ヒロインの特等席」に居座っていられるのかは大いに疑問。はっきり言って不愉快です。

 物語の前半は、閉ざされた空間の中で人食いモンスターが暴れ回るという『エイリアン』型のスリラー。でも相手はヌイグルミの巨大クモだから、肝心のモンスターが登場した途端に笑っちゃいます。クモの巣にも笑った。とにかくお粗末な映画です。

 ところが映画の最後の15分ほどで、「ビデオでいいじゃん」という僕の評価は見事にひっくり返ってしまった。突然現れるCG製の巨大クモが、街の中で大暴れ。これは『ジュラシック・パーク/ロスト・ワールド』や『GODZILLA/ゴジラ』に匹敵するかも。製作者たちがやりたかったのはコレなのでしょう。今までの陳腐な話は、このクライマックスに向けての助走に過ぎない。(ひどい助走でした。)それまでの展開がひどかっただけに、この終盤には爽快感がある。これがスクリーンで観られてよかった。ここに来て、僕はそれまでの不満が消し飛んだ。バカ映画マニアは必見です。

(原題:SPIDERS)


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