アイスリンク

2000/04/28 徳間ホール
映画撮影の舞台裏を描くコメディ映画。結構笑えます。
監督は小説家のジャン=フィリプ・トゥーサン。by K. Hattori


 フランスの作家ジャン=フィリップ・トゥーサンは、これまでにも自作の映画化作品でシナリオを書き、監督してきた。小説家としてのデビュー作『浴室』が映画化される際には自ら自作を脚色。『ムッシュー』では原作・脚本に加えて監督も兼任。『カメラ』でも同じく原作・脚本・監督を担当。これらはすべて小説の映画化だが、今回の『アイスリンク』は彼が初めて挑む映画オリジナル作品になるそうだ。僕は過去の3作品をまったく見ていないしトゥーサンの小説も読んだことがないので、この監督の持ち味がどんなものなんだかさっぱりわからない。でもこの映画は面白いです。かなり笑いました。
 映画を作る話です。何度も書きますが、この手の映画に映画ファンは弱い。映画監督やプロデューサーが七転八倒しながら映画を作る様子を見ていると、それだけでスクリーンのこちら側から声援を送りたくなってしまう。

 主人公はトム・ノヴァンブル演じる映画監督ですが、映画の主題は映画撮影中に起きるさまざまなトラブルにあって、彼はいわばエピソードとエピソードをつなぐ狂言回しです。彼が作ろうとしているのは、アメリカのアイスホッケー選手とフランス女性の悲恋を描いたラブストーリー『ドロレス』(たぶんこんな内容だと思う)。物語はすべてアイスリンクの上で進行するので、撮影はアイスリンクを借り切って行われている。ホッケー選手役で到着したリトアニアのホッケー選手たち。やがてスタッフや出演者たちが機材を抱えてヨタヨタと氷の上に現れ、審判役のオーディションがあり、主演俳優のアップ撮りがあり、主演女優が登場する。足下の悪い氷上での撮影。言葉の通じないホッケー選手たちとのやりとり。なかなか先に進まない撮影。何度も繰り返されるリテイク。撮影スケジュールは順調に遅れ、完成した映画を映画祭に出品しようとしているプロデューサーをやきもきさせる。はたして映画は出品に間に合うのか?

 細かなエピソードでクスクス笑うタイプの映画で、序盤からさまざまな伏線を仕込んで最後に大爆笑という『奇人たちの晩餐会』のような映画とはちょっと違う。でも登場するエピソードはいかにもありそうなものばかりで、たぶんそのうちの何割かは映画監督のトゥーサン自身が経験したことをモデルにしているのだと思う。登場人物はどれも輪郭がしっかりしていて、登場シーンが少ないながらも強烈な印象を残す人ばかり。スピードスケート選手のように全身黒タイツ姿の助監督。フィギュア選手のようなピンクの衣装のスクリプター。思い出話を始めると止まらなくなるリンクの経営者。食事係の中国人夫婦。そしてヒロインの吹替を担当するスタントマン。特にエキセントリックな人たちというわけでもないが、これらの個性のぶつかり合いは面白い。これだけの人が揃うと、監督など退屈な人に見えてしまう。

 映画スターを演じているのは『キャプテン・スーパーマーケット』のブルース・キャンベル。ヒロイン役はチャップリンの孫娘ドロレス・チャップリンです。

(原題:LA PATINOIRE)


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