映 画 史
第2部

2000/04/27 徳間ホール
全8章4時間半に渡るゴダールの『映 画 史』の後半4章。
これって映画に対する鎮魂歌なのかな。by K. Hattori


 全部で8つの章からなるゴダールの『映 画 史』の後半4章(3A・3B、4A・4B)。前半を観ただけでクタクタに疲れてしまったので、後半はどうしようかと思ったのだが、映画はやはり観た上で何かコメントするしかないものなので、一応は観ておくことにした。なんだかひどく生意気な言いぐさだけど、僕はゴダールとどうしても肌が合わないようです。でも今回はわりと面白かった。3Aの冒頭にある政治メッセージが唐突にも感じますが、これはゴダールが紛れもなく「現代の映画人」であることを証明しているわけで、必ずしも作品にとってマイナスではない。むしろこの映画がゴダールの心情吐露や信仰告白に近いものだということを、端的にあらわした部分だと思う。少なくとも僕は4時間半に渡る『映 画 史』の中で、この部分が一番面白かった。

 内容についてはゴダールの専門家がわかりやすく解題してくれるんでしょうけど、僕はゴダール作品をさほど観ているわけではないので簡単にはコメントしがたい。ただ今回これを観てつくづく感じたのは、「映画はもう終わってしまったメディアだ」という事実。そもそもゴダールがこの『映 画 史』をフィルムではなく、あえてビデオで制作しているというのが、映画=フィルムの終焉を象徴しているではないか。この作品には膨大な量の映画が引用されていますが、それらは映画創生期の今世紀初頭から、せいぜい1960年代までの作品が圧倒的な量を占めている。'80年代の作品や'90年代の作品なんて、申し訳程度に言及されているに過ぎない。

 ゴダールはここで、フィルムに記録されてきた「セックス」「暴力」「死」「命がけの恋」について語る。人間は自らの欲望を、フィルムに刻みつけてきた。1Aから2Bまでの『映 画 史(第1部)』では、いわゆる映画史的な論考がまったく感じ取れませんでしたが、今回の後半部分では、記録映画、ナチスのプロパガンダ、戦後のイタリア映画、ヌーヴェルバーグ、ヒッチコックなどに対する、ある程度まとまった言及があります。ただしこれもそれらの事柄について「解説」してくれているわけではなく、ゴダールの視点からそれについて感想をコメントしているだけのように思える。

 ゴダールはハリウッド映画を無視しているわけではありませんが、彼の中のハリウッドは'60年代には終わってしまったのです。ここではチャップリンが登場する、ミュージカルが登場する、ヒッチコックが礼賛される。しかしアメリカン・ニューシネマもスピルバーグも登場しない。現代のハリウッドの隆盛は、ゴダールの『映 画 史』にはまったく無縁の出来事のようです。ゴダールは「映画は19世紀の芸術だ」と言う。では21世紀に向けて生きている我々にとって、「映画」とは一体何なんだろうか? ゴダールの目には、ルーカスもスピルバーグも「映画ではない」何かなのかもしれない。

 次の『スター・ウォーズ』はフィルムなしで撮影されます。映画は19世紀に生まれ、21世紀に死ぬのです。

(原題:HISTOIRE(S) DU CINEMA)


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