もののけ姫
英語吹替・日本語字幕スーパー版

2000/03/21 東宝第1試写室
日本で大ヒットした『もののけ姫』のアメリカ公開バージョン。
じつに丁寧に英語化されています。by K. Hattori


 宮崎駿の長編アニメ映画『もののけ姫』の英語吹替バージョンが、日本語字幕入りで凱旋上映される。腕や首が飛ぶという残酷描写があるため、アメリカ公開時にはあちこちカットされるのではと言われていたが、実際には本編ノーカットで、日本で公開されたものをそのまま忠実に英語化した作品になっているようだ。(「ようだ」と書くのは、僕は既にオリジナル版の詳細を忘れてしまったから比較のしようがないため。)英語吹替のキャストは、『X-ファイル』のジリアン・アンダーソン、『ハイロー・カントリー』のビリー・クルダップ、『ロミオ&ジュリエット』のクレア・ディーンズ、『理想の結婚』のミニー・ドライヴァー、『アルマゲドン』のビリー・ボブ・ソーントンなど、ハリウッド映画のファンならすぐに顔が浮かんでくる面々。ディズニーアニメ以上に豪華なボイス・キャスティングだ。主題歌もちゃんと英訳されているのはご立派。当たり前のことだけれど、ディズニーの仕事ぶりは完璧です。

 今回はアメリカ公開に先立つプロモーションのため、宮崎駿監督がトロント、ロサンゼルス、ニューヨークを訪問した様子を記録した、『もののけ姫 in USA』という20分のドキュメンタリー映画と2本立ての公開。しかも劇場の入場料は千円均一になるという。『もののけ姫』自体は劇場でも大ヒットしているし、ビデオも記録的なセールスだったから、日本人ならたいていの人がこの映画を既に観ている。今回は「英語バージョン」という目先の違いと、ドキュメンタリー映画という付加価値の添付に、入場料のディスカウントまでして、はたしてどの程度の入場者が見込めるものなのだろうか。僕個人としては、今回この映画を改めて観てよかったと思っている。ほんの数年前のことなのに、映画の内容なんて結構忘れちゃってるものですね。

 前回この映画を観たのも同じ東宝の試写室だったのですが、その時は試写室にドルビー・デジタルの音響設備がなくて、ただのドルビー・サラウンドだった。今回は試写室もデジタル対応になって、しっかりと5・1チャンネルの迫力と臨場感が味わえます。『もののけ姫』はもともとドルビー・デジタル録音だったのですが、ビデオでは5・1チャンネルのオリジナル音響が味わえない。今や消えゆくマニア向け商品と化したLDを除けば、オリジナル5・1チャンネルが味わえるのは劇場のみということになる。前回の『もののけ姫』上映時は全国で超拡大公開されたこともあって、試写室同様、デジタル音響設備のない映画館でこの作品を観た人も多いと思う。3年たって各地の劇場もだいぶ設備が充実してきてます。ここいらでドルビー・デジタル版『もののけ姫』を観るというのも、悪い選択ではないと思います。

 英語吹替になったと言っても、中身は3年前の『もののけ姫』と同じです。でも「人間と地球環境の共生」というこの作品のテーマは、ちっとも古びていない。このテーマは21世紀まで持ち越される、人類の課題でしょう。『もののけ姫』は今も3年前と同じく新鮮です。

(原題:PRINCESS MONONOKE)


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