マイ・ハート,マイ・ラブ

2000/02/29 GAGA試写室
複数の登場人物たちが織りなすそれぞれの恋愛事情。
エピソードの構成に難がある気がする。by K. Hattori


 ショーン・コネリーとジーナ・ローランズが扮する、結婚40周年を間近に控えた熟年夫婦。夫との愛情が冷め、浮気相手との気ままな逢瀬を繰り返すマデリーン・ストウ。夜毎バーに出かけては、口から出任せの作り話で女たちを幻惑させるデニス・クエイド。男運の悪い舞台演出家ジリアン・アンダーソン。クラブで知り合った無口な青年ライアン・フィリップに恋してしまうアンジェリーナ・ジョリー。エイズで死にかけているジェイ・モーアと、彼を看病する母親エレン・バースティン。現代のロサンゼルスを舞台に、年齢も性別もさまざまな人たちが愛を求める姿を描くヒューマンドラマ。製作・監督・脚本はウィラード・キャロル。

 大勢の登場人物の物語が同時進行する集団劇で、観ていてすぐに『マグノリア』を連想してしまった。『マグノリア』がほぼ24時間という凝縮した時間の中にドラマを詰め込んでいるのに比べると、この『マイ・ハート,マイ・ラブ』は全体の枠組みがかなり緩やかで、おそらくは4,5日間の出来事を描いているのだと思う。場所も必ずしもロスに限定されていないようで、時間的にも空間的にも制約が少ない。その分、物語は散漫な印象になっている。登場人物たちがどんな関係で、互いにどんな関わり合いを持っているのか、映画の最後までわからないのが歯がゆい。関係が見えてくるまでの1時間以上、各登場人物のエピソードがバラバラになってしまい、全体を束ねる仕掛けがないのです。それぞれのエピソードは面白いのかもしれないけど、短編小説を何編か並行して読んでいるようなもので、まったく集中できない。

 たった1週間で登場人物のそれぞれが人生の伴侶を見つけ、あるいは再発見し、人生が劇的に変化するという発想は面白いと思う。しかもそうした出会いが、何人もいる登場人物たちのすべてに訪れるというのも面白い。この映画はジャンル分けすれば「恋愛映画」の範疇に入るのでしょう。恋愛映画の主要モチーフは、いつだって“出会い”にあります。別々の場所で別々の生活をしていた男と女が、どのように出会って恋に落ちるのか。この映画はそうした“出会い”をいくつも見せてくれる。男と女が恋に落ちる瞬間のときめきを、いくつものバリエーションで描き分けている。その点は面白い。ただ、そうした出会い同士が響きあって、大きなドラマになるとか、観客に感動を与えるというわけではないように思えるのです。それがこの映画の物足りないところ。

 全体の時間配分やエピソードの構成も、はたしてこれでいいのか疑問。全部で2時間の映画ですが、それぞれのカップルのドラマは1時間半を過ぎたあたりですべて決着が付いてしまい、あとはエピローグが30分も続くような結末。幸福感が生み出す感動のポイントが少しずつズレていて、全体の焦点が合っていないのも気になる。例えば終盤に出てくる葬式シーンによって、登場人物たちの幸福感が分断されてしまうといった失敗もある。もっとうまく組み立てれば、さらに感動できる映画です。

(原題:Playing By Heart)


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