新・男樹
完結編

2000/02/04 東映第2試写室
本宮ひろ志原作の同名コミックを忠実に映画化しているが……。
OVの続編だからこれだけ観てもわからんぞ。by K. Hattori


 本宮ひろ志は「男一匹ガキ大将」で売り出した漫画家だが、これは僕がずっと小さい頃の話。僕が本宮作品に触れたのは、小学生の頃に「硬派銀次郎」を読んだのが最初だと思う。高学年になると今度は、同級生が持っていた「俺の空」をドキドキしながら回し読みした。「男樹」はたぶん中学生ぐらいの時に読んだ記憶があるから、今から20年近く昔の作品ではなかろうか。暴力団組長の息子として生まれた少年・村田京介が、父親とはまったく違う道を歩みながら、結局は体内に流れる血に引かれるように組織暴力の世界に足を踏み入れ、そのトップになってしまう物語だったように記憶する。本宮ひろ志が得意とする男の一代記ものだ。この漫画家は気に入ったキャラクターができるとそれを大事にするタイプらしく、「俺の空」には刑事編があるし、「硬派銀次郎」も後に「山崎銀次郎」という続編が描かれている。僕自身は「男樹」をそんなに面白いと思わなかったのだが、最近になって京介の息子・京太郎を主人公にした続編「新・男樹」が描かれた。今はそれも完結し、さらなる続編「男樹四代目」が連載中だとか……。村田一族に流れるヤクザの血は、どこまでも絶えることがない。

 「新・男樹」は千葉で育った村田京太郎が、子供ながらに地元でミニ暴力団のようなものを組織し、地元のヤクザと衝突しながら東京の父親と張り合うようになるという父子確執のドラマだ。僕は原作を少し読んでいたが、これがビデオ作品になっているとは知らなかった。今回の映画は3年前に2本作られたビデオ版『新・男樹』の完結編で、地元暴力団との抗争で刑務所入りしていた京太郎が、仲間のもとに戻ってくるところから話が始まる。物語は基本的に原作に忠実。これは脚本に原作者の本宮ひろ志本人が加わっているからかもしれない。おかげで上映時間は長くなり、この程度の話なのに2時間4分もある。エピソードの構成を工夫すれば、これは1時間半でまとめられる話だと思う。話自体は波瀾万丈で飽きないが、それでもこれは困った映画だなぁ……。

 まずこの映画、原作を読むなり事前に前の話のビデオを見ておくなりしないと、話の筋道がまったく見えない。主人公親子の確執と和解がテーマなのに、主人公たちがなぜ仲違いしているのかがわからないし、両親の複雑な関係も理解できない。ビデオシリーズの発売からも少し時間が経っているのだから、これは映画の冒頭に「今までのあらすじ」をつけてくれる方が親切ではなかろうか。

 次に気になったのは、主人公たちがどう見ても「若造連中」に見えないところ。彼らは19歳か20歳という設定なのだが、当然役者たちの実年齢はもっと上だろう。この物語は「大人以上に貫禄のある子供たち」が主人公なのに、それを大人が演じるとどうも奇妙な具合になる。全員がボロボロの学ランというバンカラ装束で登場すると、それは時代錯誤とかアナクロとかを通り越して、なんだか唐突なコスプレのように見えてしまうのだ。原作通りと言えばその通りだけど、ちょっとねぇ……。


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