ケイゾク/映画
Beautiful Dreamer

2000/01/31 東宝第1試写室
人気TVドラマをTV版のスタッフ・キャストで映画化。
映画だけ観ても、わけがわからないぞ。by K. Hattori


 『踊る大捜査線 THE MOVIE』は、映画界にある種の誤解を生みだしたと思う。それは「TV番組のヒット作で劇場版を作るとヒットする」という、根拠のない思い込みだ。その結果が『サラリーマン金太郎』や『GTO』の企画を生み出す原動力になっている。しかしこれらの後続作品は、『踊る大捜査線』の足下にも及ばぬ成績しか残せていない。「TV番組の映画化」というマーケティング的発想だけでは、劇場映画がヒットしないという当然のことに、映画界はようやく気づいたはずだ。要するに、映画が面白くなければダメなのです。『踊る大捜査線』は、TVドラマ版をまったく見ていない人が観ても面白かったからヒットしたのです。しかし、それでも一度弾みのついた流れは止まらない。それがこの『ケイゾク/映画』であり、松竹の『すずらん』だったりするのですが……。大丈夫か? 特に松竹は心配だぞ。

 TV番組の映画化作品を作る場合、方法はふたつある。ひとつはTVのキャラクターを借りて、スケールアップした番外編を作ること。『ドラえもん』や『クレヨンしんちゃん』などのアニメ映画や『踊る大捜査線』がこのタイプ。もうひとつは、TV版の続編やサイドストーリーを、映画版にしてしまうタイプ。『エヴァンゲリオン』や『Xファイル』はこのタイプで、こちらはTVを観ていない人が映画を観ても、それだけでは何が何だかよくわからない。今回の『ケイゾク/映画』は明らかに後者のタイプ。TVシリーズがあって、TV版のスペシャルがあって、その次に映画版があって、その後にTV版の第2シリーズが始まる。やり方としては、『Xファイル』と同じです。僕はTV版をまったく観ていなかったので、正直言ってこの映画のお話自体はまったくわけがわからなかった。「朝倉って誰?」「壺坂って何?」という状態で、約2時間を過ごしました。

 ただ、それでこの映画がつまらないかというと、決してそういうわけでもない。TVシリーズのキャラクターが物語にかんでくるのは映画の終盤で、それまでは孤島を舞台にした『金田一少年の事件簿』風のミステリーが描かれます。それだけで1時間半。それに見どころは謎解きやトリックではなく、映画全編を彩る凝りまくりの映像テクニック。そして細かなギャグやパロディ。そのクスクス笑いのセンスは、明らかにマンガやアニメのそれをドラマの世界に移植したものでしょう。

 登場人物たちはみんなエキセントリックでマンガチック。主人公が所属する捜査一課・弐係のメンバーもそうだし、映画の序盤で孤島に集められたいわくありげな人々も、個性が極端に誇張された人物になっている。この映画はこうした人物を凝った映像や細かな編集でひとつにまとめ上げ、映画全体をある種の「異界」にしているのだ。ただ、この手法はやはりマンガやアニメ世代にしか通じないもので、『踊る大捜査線』のような普遍的ファン層は獲得できないような気がする。ちょっとマニアックでオタッキーな雰囲気なんだよね。


ホームページ
ホームページへ