2003年11月の出来事


11月1日(土)
 渋谷じゃ映画祭が始まっているが、こちらは身過ぎ世過ぎのために原稿を書いてはメールで入稿する作業。とりあえず午前中にノルマは終えて、午後はクイズ作りで夕方まで。その後図書館に出かけて、予約していたCDを借りてくる。借りたのは広沢虎造の浪曲「清水次郎長伝」。とりあえず森の石松関連のところを3枚ほど見繕ったんだけれど、帰宅してから調べたら途中1枚抜けてました。これはこれで別に予約する。図書館だけで次郎長伝が全部揃うかと思ったら、そうはならないのが困ったもんだ。中央区の図書館で揃わない部分は、別の図書館から取り寄せてもらう必要がある。まぁ気に入ればの話だけれど、こういうものは気に入るに決まっているわけでして……。
 帰宅して夕食を食べてから、書き残している感想文の続きに手を付ける。『マトリックス』の評がやたらと辛い者になってしまったけど、まぁしょうがないや。

11月2日(日)
 午前中はCSのあと、築地市場祭へ。人では多いが催し物の規模が来場者数をさばき切れていない。イベントスペースは黒山の人だかりで何も見えず、飲食のための屋台は売り切れで開店休業状態。場内・場外から周辺にかけての飲食店も長蛇の列。しょうがないから昼食は築地のマクドナルドとか、そういう羽目になる。いつもならガラガラの築地のマクドナルドが、この日は超満員。なんだかなぁ……。僕は場外でカレーを食ってました。
 天気がいいので近くの公園に少し立ち寄り、夕方近くになってから帰宅。

11月3日(月・文化の日)
 朝のうちに少し仕事をして、9時半頃部屋を出る。天気が悪いので歩いて築地へ。そこからバスで東京駅まで出て、横浜の実家を訪問。妹のところに立ち寄ってから帰宅。帰りは京急を使った。帰宅してぐったり。少し早めに寝る。

11月4日(火)
 午前中から午後にかけてメルマガの編集と発行手続きを終える。午後は3時半からシネカノンで『のんきな姉さん』の試写。最終試写なので混んではいたが、映画自体はあまり面白いと思えない。作っている方は洒落た映画を作ったつもりなんだろうけれど、これはひどく退屈だ。オフィスのシーンはまるで小劇場の芝居を観ているようで、映画らしさがまるで感じられなかった。周辺に三浦友和や佐藤允のようなベテラン俳優を配しているくせに、主役ふたりが小粒なのもなぁ……。
 ようやく映画祭のプレス受付を済ませる。今日はもうコンペ作品のチケットが手に入らず、残っていた作品ということで『エイリアン/ディレクターズ・カット』を観る。オリジナルとの違いはほとんどないと思うが、音声が5.1chになったのかなぁ……。映画の最後の方に、エイリアンの繭にされた船長のシーンが追加されているのが最大の違いかな。改めて観ると、この映画は本当によくできたB級のSF映画だと思う。B級ジャンルムービーだけど、映画のできは一流なのです。それにしても、ここから続編を作った人は偉いよなぁ。

11月5日(水)
 映画祭の試写が10時過ぎからあるので、朝はいつもより早起きして、テレビも観ずにせっせと映画の感想を書いてしまう。本当は昨夜のうちに少しやっておきたかったのだが、そんな元気がまるでなかった。9時頃に無事終わり、なんとか渋谷に向けてGO!
 マスコミ試写会場のル・シネマで『ドリーミング・オブ・ジュリア』という、革命前夜のキューバを舞台にした映画を観る。これがかなりカッタルイでき。朝から疲れるなぁ。2本目までの間がほとんどないので、空腹はチョコレートでごまかして、ハンガリー映画『ウィニング・チケット』。これは1956年のハンガリー事件を背景にしたブラック・コメディなのだが、映画の中には事件の説明がまったくないため観ていても何がなんだかチンプンカンプン。ハンガリー事件云々というのは帰宅して百科事典を調べたからわかったことで、プレス資料にも上映案内にもそのことは一言も書かれていない。事件の概要が飲み込めているとそれなりに面白い映画だと思うので、日本で劇場公開するなら(しないと思うけど)、映画の前に何らかの説明用タイトルを付けるべきだろう。
 マスコミ試写はこの2本でおしまい。近くで食事をしてから3時半頃オーチャードホールに戻り、ロシア映画『スーツ』を観る。これはなかなか面白かった。『ルナ・パパ』の監督だそうで、そう言われてみると「なるほど!」と思える。夕食とって最後の映画はル・シネマに戻って『SANSA』というフランス映画。ドキュメンタリーとフィクションの中間のようで、じつはちゃんとフィクションという奇妙な映画。物語らしい物語はないのだが、映画ならではのシズル感がちゃんとある作品。
 映画館の外に出ると結構雨が降っている。カサなしで駅まで行くと結構濡れそうなので、カバンに常備している折りたたみのカサを出す。帰宅したら10時半頃かな。もうぐったり。
 電車の中や映画の合間に「映画配給プロデューサーになる!―話題の映画の仕掛人に聞く映画ビジネスのすべて」を読んでいる。これは面白い。映画の作り手(監督や脚本家やプロデューサー)ではなく、映画館関係でもなく、ましてや映画ライターや評論家でもない、配給や宣伝の仕事に焦点を当てた本は案外少ないのだ。ただしインタビューの中には製作寄りの人もいれば、雑誌などの映画メディアの人もいる。制作・配給・興行という映画産業の仕組みが、ある程度わかっている人でないと、ここから「配給」という仕事をきちんと読み取ることが難しいかもしれない。

11月6日(木)
 午前中から試写の予定を入れていたので、早めに起きて映画の感想を書き始めたのだが、どう考えたって9時杉までに4本分なんて終わるはずがない。しょうがないので1本目の試写をとばして午後からに専念。その分は明日の予定をやりくりして調節することにした。
 午後は1時半から行定勲監督の新作『きょうのできごと』でスタート。これは面白かった。これまでに観たコンペ作品の中で一番面白い。出演者もいい。どの人たちもこれまでにない魅力を発している。じつはこの試写は時間に少し遅れてしまい、劇場に入ったときは既に冒頭部分が始まっていた。失礼しました。
 プレスセンターで今日明日分のチケットを交換しようと思ったのだが、今日の分はすべて受付終了で、明日の分も観ようと思って狙っていた『暖〜ヌアン』は早々に受付終了とのこと。この映画、どうも人気があるんだよなぁ。『山の郵便配達』の監督の新作。これがグランプリを取ると、同監督の『ションヤンの酒家』の公開を後押しすることになるかも。
 とりあえず今日の2本目は予定通り、シネフロントで忍足亜希子主演の『アイ・ラヴ・ピース』を観た。きれい事すぎる映画である点が物足りないのだが、それでも感動できる良心的な映画。映画終盤で見せる忍足亜希子の芝居に、つい涙腺がゆるんでしまう。映画の後はその忍足亜希子と監督のトークショーと、主題歌を歌った小野正利のミニライブ。エンドロールで流れる「I wish〜I hope」を、本人が生で熱唱してました。まったく何も期待していなかったので、ちょっと得した気分。
 食事をしてからオーチャードホールに戻り、今日最後の映画はコンペ作品の『謎の薬剤師』。環境保護に熱心なあまり、環境を破壊する企業のトップを殺していく男を、ヴァンサン・ペレーズが演じている。彼と奇妙な友情を感じながら、彼を追いつめていく刑事役はギョーム・ドパルデュー。笑えるシーンもあって、なかなか痛快な映画でした。環境保護運動や自然食品、自然療法などの、エコロジーやナチュラリスト志向を皮肉っているようでもあり、中絶問題などで殺人や放火事件まで起きる世界の現実を反映したもののようにも見える映画。映画の後はプロデューサー、監督、主演のヴァンサン・ペレーズを交えた質疑応答タイム。ギョーム・ドパルデューの近況について誰か尋ねてくれないかなぁと思ったが、そういう気の利いた人は誰もいなかった。残念。
 『アイ・ラヴ・ピース』は地雷で右足を失った少女の物語だったけれど、ギョーム・ドパルデューは96年のバイク事故で右足を負傷した後遺症に苦しみ続け、今年の6月にとうとう切断手術を受けたという。どうでもいいけど、『謎の薬剤師』という邦題はひどいね。もしこの映画に日本の配給会社が付いたとしても、このタイトルじゃ劇場公開しないと思うぞ。
 「映画配給プロデューサーになる!―話題の映画の仕掛人に聞く映画ビジネスのすべて」を読了。映画本は部数が出ないこともあって値段が高めなのだが、この本は1,500円にしては充実した内容だった。冗長な部分もあるけれど、「今の映画界はどんな仕組みになってんの?」と思っている人は一読して損のない本だと思う。続いてロバート・グラッツァーの「シネマ頭脳―映画を「自分のことば」で語るための」を読み始める。

11月7日(金)
 映画祭は日曜日まで続くのだが、僕にとってはこれが最終日。朝は一昨日、昨日に続いて5時台に起き、映画の感想をどんどん書き進める。ただしこの日は2本しか書けなかった。午前中からの上映を観るためだ。
 10時半からオーチャードホールでタイ映画『オーメン』。これはつまらなかった。音で脅かすタイプのミステリアスなホラー映画。脚本の弱さを音や映像でごまかしているだけだと思う。食事を済ませて午後は同じオーチャードホールで、ビデオ撮影されたインディーズ映画『サンタ スモーク』。これは面白い。撮影費用が1万ドルというから、これは他のコンペ作品に比べて格段に低予算。こういう映画がコンペでグランプリを取ったりすると、面白いかもしれないなぁと思う。世界のどこで映画を作ろうと、ビデオ機材についてはほとんどが日本製だろう。東京国際映画祭は毎年コンペのコンセプトがころころ変わるのだけれど、今後はビデオ映画に焦点を当てていくという方法もあるかもしれないなぁ。
 4時過ぎからル・シネマ2で『さよなら、将軍』というスペイン映画。この頃はもう披露の限界点。劇中のフランコ将軍同様に、途中で意識がぶっ飛んだ瞬間が何度かあった。この映画は面白いけど、やっぱりスペインの現代史についてある程度の知識は必要なんだろうと思う。結局どの国にも、その国や国民に固有の「歴史的記憶」というものがあるのだろう。日本人にとっての1945年8月と同じだ。今回コンペには出ていなかったけれど、黒木和雄監督の『美しい夏、キリシマ』はまさに1945年8月の記憶を描いた作品。こうした映画は、はたしてそのままで外国人に通じるのだろうか。そんなことを考えさせられた。
 新規に仕事の依頼が来た。T社から出る戦前のフランス映画のDVDで解説書を書いてほしいとのこと。この映画には興味があったので快諾する。締め切りまであまり間がないので、来週は試写をなるべくよそに回して、この仕事をやろうと思う。

11月8日(土)
 連日の映画祭通いでぐったり疲れていたのだが、友人に誘われて川越まで日帰りの小旅行。8時過ぎに部屋を出て大江戸線で新宿へ。そこから西武線の急行で本川越まで1時間ほどだ。天気がよくなったのはありがたい。
 川越の見学コースは全長5キロほどの大きな四角を描くようになっているのだが、とりあえずコースを時計と逆回りにとって、中院、喜多院を見て回った後、そば屋で早めの昼食。その後、本丸御殿、博物館、菓子屋横町、時の鐘、蔵作りの街道を通って駅に戻る。歩くのは苦手ではないが、結構疲れた。
 新宿に戻ったらまだ3時半頃。まだ時間が早いので少し休んでから、夕食にトンカツを食べて帰宅。疲れを取るにはなんたって豚肉なのだ!

11月9日(日)
 朝はCS。少し早めに戻って、築地で福祉祭を見て回る。ここは地元の商店がテントでいろいろな食べ物屋を出している。今回食べたのは、焼きそば、焼鳥、ばらちらし寿司、ビーフシチュー、カレーうどん……。他にもチキンカツ丼とか、豚汁とか、ビールなどの飲み物類などが出ていたけれど、とても全部は食べきれない。図書館に立ち寄って、予約していたCDを借りてくる。今はまっているのは、広沢虎造の「清水次郎長伝」だ。
 帰宅したら宅急便の不在通知が入っていたので再配達を依頼。中身はロジテック USB 2.0/1.1 外付型HDユニットLHD-EA80U2という外付けハードディスク。iTunesで部屋にあるCDを片っ端から録音していたら、ハードディスクがあっという間に一杯になってしまったのだ。たかだか400枚ぐらいなんだけど、それで20GBぐらい。ノートパソコンでこれだけの容量を食われるとちょっと厳しいので、音楽ファイルは外付けに追っ払うことにしたのだ。これは電源とケーブルをつなげばすぐに使えるようになって、じつに便利この上ない。パソコンを使い始めて10年以上になるけれど、使い方はどんどん簡単になっていることを痛感する。
 パソコンには外付けのスピーカーも付けた。iTunesとの組み合わせたことで、持っていたCDはすべてパソコンから自由自在に再生できるようになった。音質がいいのか悪いのかよくわからないのだが、僕としてはまったく不足を感じない。iTunesは英語版から日本語版に乗り換えたのだが、これは検索と絞り込みの機能がちょっと変だと思う。英語版はもっと別の動作をしたような気がするんだけど……。
 疲れがどっと出たのか体調があまりよくない。天気もよくないのだが、暗くなってから衆院選の投票に出かける。投票したのは民主党と民主党の候補者。別に民主党の政策を支持しているわけでもないし、民主党の候補者が好きだというわけでもない。むしろ僕は自民党の小泉政権支持だった。でも日本の政治がダメなのは、与党を牽制する立場にいる野党がだらしないからだと思っている。力のある野党が現れた方が、日本の政治はよくなるんじゃないだろうか。政権与党が政策運営に失敗したとしても、政権を失う危機感がまったくないというのが日本の政治をだらしなくしているのだと思う。僕が民主党に投票したのは、民主党の台頭で自民党が多少なりとも危機感を持ってくれればとい思ってのこと。まぁ個人の投票など大海の一滴にすぎないので、こんな投票にどれだけの意味があるかは疑問だけどね……。
 僕は20代の頃にまったく投票に行かなかったのだが、最近は行くようになった。別に政治に目覚めたわけではなくて、投票日の夜にテレビを埋め尽くす開票速報を見るには、自分も投票していた方が面白いからだ。競馬場に行って、ただ馬だけながめていたって面白くも何ともない。勝ち負けは別にしても、馬券を1枚買った方がレースを見る楽しさは増すというものだ。勝てば嬉しいし、負ければちょっと残念に思う。しょせん選挙など、その程度のものだ。
 選挙のたびごとに投票率の低さが話題になるけれど、そんなことに目くじらを立てる必要はまったくないと思う。投票に行かないということは、つまり現在の生活に何の不満もないということ。鼓腹撃壌の故事もある。人間はその日その日を食べて飲んで、そこそこ楽しく暮らせれば、政治などどうだっていいのです。豊かで平和な国で、人々が政治から関心を失うのは当然の話。投票権を放棄できるというのは、日本が平和である証拠ではないか。フセイン時代のイラクや北朝鮮なんて投票率100%だよ。

11月10日(月)
 体調はあまりよくないが、仕事をしなくてはならない。映画の感想も書かないままずいぶんとため込んでしまった。昨夜は選挙結果の速報を見ないまま寝てしまったのだが、今朝起きたらやっぱり与党がそこそこ勝ったという話。民主党も議席を伸ばしたものの、それは社民党や共産党が減らした分が回ってきただけじゃないか。
 それにしても社民党の凋落ぶりは劇的だ。凋落して当然の政党だから同情もできない。そもそも「護憲」なんてことを言っているからダメなのだ。社民党は本来なら「革新政党」のはずなのに、何も新しい政策を打ち出せていない。一番前に押し出しているのが、「半世紀前に作られた憲法を守りましょう」というもの。これまで続いてきた状態を、これまで通り維持し続けようというのを、一般には「保守」と言うのではないのかな。国民の半数以上が改憲に前向きになっている社会で、「憲法を守れ」という主張ほど「保守的」なものはないよ。保守的な政策を掲げる革新改革政党というのが現在の社民党。これでは国民に支持されるはずがない。土井党首の秘書問題とか、北朝鮮との関係なんてものは二の次だろう。
 土井たか子が小選挙区で落選したのは自業自得で、彼女は秘書問題が起きた時点で党首を降りて、議員辞職すべきだった。その上で改めて選挙に出て「みそぎ」を受けるというのが、政治家として取るべき道だったように思う。議員の職や党首の座に固執したことが、小選挙区での落選という結果になったのだ。まったく見苦しい。土井さんは比例区で復活当選したので議員は続けるのだろうけれど、この際だから党首は辞任して、福島瑞穂あたりに党首の座を譲ればいいのです。福島瑞穂もろくなもんじゃないと思うけれど、少なくとも「若さ」をウリにはできるようになるだろう。憲法学者の土井たか子が「護憲」をアピールしていたのに対し、福島瑞穂なら「女性問題」という新しい切り口をアピールできるだろう。
 僕の日記にしちゃ珍しく正治の話など書いているけれど、こんなものは床屋政談みたいなもの。芸能人の結婚・離婚問題とさして違いのない話だ。
 体調は相変わらず悪い。鼻水もずるずる出てきた。どうも風邪をひいているか、ひきかけているらしい。
 仕事用のサンプルDVDが到着したので観てみる。期待していた内容とはだいぶ違うけどなぁ……。時折すごくいいシーンもあるのだが、これは一般の人には退屈なんじゃないだろうか。これを大画面で観ると迫力ありそうだけど、テレビサイズになるとどうかなぁ……。

11月11日(火)
 体調は少し回復したが、本調子ではない感じ。単に外が雨でひどく寒いせいかもしれないけど……。
 メルマガの編集と発行手続き。クイズの制作と入稿。他に映画の感想を少し。DVDの仕事にも取りかかる。結構いろいろとやることは多い。
 夕方近くになってから近くの薬局に写真のプリントを注文しに行く。デジカメからの初プリント。さてどうなることやら。そのまま図書館に行って借りていたCDを返却し、かわりに別のCDを借りてくる。これらはすべて、iTunesを使ってパソコンのハードディスクに取り込んでしまう。
  今借りているのは広沢虎造の「清水次郎長伝」なのだが、図書館には全16枚のうち12枚しか収蔵されていない。残りの4枚はどうしようかなぁ……と思案中。わざわざそれだけ買うのもちょっと気が引ける。でもそもそも、浪曲なんてものは全部通して聴くようなものではないのかもしれない。虎造の「清水次郎長伝」16巻にしても、しょせんは抜粋録音のようだ。最終巻の「血煙荒神山」なんて、これから決戦というところで「ちょうど時間となりました〜」で終わってしまうしね。

11月12日(水)
 午前中に映画の感想をようやく片づける。午後は試写を2本。フランス映画『めざめ』はなかなか見応えのある1本。アジア・フィルム・フェスティバルの『ボスニアの青い空』はいまいちだった。夜は銀座の煉瓦亭で食事。
 夜のニュースで、死んだ夫の冷凍精子を使って出産した子供の認知が、裁判で認められなかったというニュースを報じていた。まぁこれは認知されなくて当然だろうなぁ。結局法律的な子供の認知制度というのは、相続権にまつわる諸問題を整理するための制度に過ぎないのだ。現実の親子関係なんてものは、ここではあまり考慮されていない。「子供の父親が死んだ夫であることは明らかなのだから、裁判所はそれを認めるべきだ」というのは、法律が定める「相続システム」という問題を見落としているのだ。
 今回のケースはどうか知らないが、例えばこういうことが考えられる。死んだ夫の両親が資産家だったとする。残された妻は、死んだ夫の両親が亡くなっても、その遺産を相続する権利がまったく存在しない。でも夫との間にもし子供がいれば、その子供は死んだ父を飛び越して、亡くなった祖父母の遺産を相続できるわけだ。もしも「死んだ人間の子供を認知する」ことを裁判所が認めると、相続目当てで冷凍精子や冷凍卵子を使った人間が出てくるかもしれない。
 例えばこうした例を考えてみる。男性であるAさんが結婚したが、妻であるB子さんとの間には子供ができず、AさんとB子さんはさまざまな不妊治療を行っていた。この際、Aさんは体外受精等のために精子を冷凍保存していた。やがてAさんはB子さんと子供ができないまま離婚する。Aさんは別の女性C子さんと再婚し、ここでは子供が生まれた。ところが幸せもつかの間、Aさんは莫大な資産を残したまま事故死してしまう。遺産の相続人は未亡人のC子さんと生まれたばかりの子供が全額相続することになるのだが、そこに前妻のA子さんが現れて「私はAさんの冷凍精子を使って子供を産んだので、Aさんの遺産の一部は私の子供も相続する権利がある」と言い出し、死後認知の訴訟を起こしたらどうする? もし今回の死後認知が認められれば、こうした事例についても認めざるを得なくなる可能性があるわけだ。
 代理母出産などもそうだが、技術があればそれを使おうとする人は当然現れる。そうした人が現れたときに、法的にどう判断するのかを裁判所に任せっぱなしにしておくのは、国会議員の怠慢なんじゃないだろうか。

11月13日(木)
 午前中に映画の感想を書いて、午後は試写を3本はしご。昼食を取ってそろそろ出かけようかと思っていたら、テレビの臨時ニュースで「土井党首辞任」の第一報。記者会見は見ずに試写に出かけてしまったのだが、夜になって帰宅してみると、どうやら後任党首には福島瑞穂? それって僕が数日前の日記に、冗談めかして書いたまんまじゃん。社民党支持者でも何でもないド素人が、選挙直後に到達していた結論に、選挙後3日もたってようやくたどり着いたという、この決定的なとろくささ、フットワークの悪さが現在の社民党を象徴していますなぁ……。まぁ福島瑞穂は土井党首に引っ張り上げられた「土井チルドレン」のひとりだし、土井さんも党首は辞任しても院政をひこうという態度が見え見えだけどね。看板が変わっても中身は変わらない。政見放送で土井・福島が並んで話しているのがあったけど、その席順が左右入れ替わるだけの話じゃん。福島瑞穂は土井たか子というトップに引っ張り上げられて幹事長になった人だから、土井たか子が本当に党運営から手を引いてしまえば、後ろ盾を失って党運営の求心力を失うだろう。社会党時代から組織を支えてきた地方組織の人たちは、土井党首抜きの福島瑞穂を支持できないと思う。結局のところ福島新党首で「女性党」路線をひくのは一時しのぎに過ぎず、次の参院選でも惨敗して、後はどこかの政党に吸収されて消える運命だと思う。
 午後は1時からソニーでホラー映画『黒の怨』。いや〜これは観ていてゾクゾクしたよ。新たな殺人モンスターということで、『ジーパーズ・クリーパーズ』などと同じようにシリーズ化されるような気がする。試写の受付で懐中電灯をくれたんだけど、何事かと思ったら、そうか、こういうことなのか……。この懐中電灯は、劇場でも限定で配ったり売ったりするのかな。ちょっと面白い映画グッズだと思う。
 渋谷のシネカノンに移動して荒川良々主演の『恋する幼虫』。さえない男とさえない女が主役のホラー風ラブコメディ。なかなか面白い映画でした。
 食事をしてから書店などで時間を潰し、7時半頃に丸の内ピカデリー2に到着。『ラスト サムライ』の試写会だったのだが、場内はやけにすいている。じつは時間をずらして丸の内ピカデリー1でも完成披露試写が行われ、ほとんどの人たちがそちらに回ったようだ。試写状の段階で会場を2つに分けたはずなのだが、間違えてピカデリー1に入った人も多かったみたい。結局僕がいた試写会場は、会場が8割ぐらいの入りだったかも。前の方や両袖のほうは、ほとんど席が空いていた。
  映画はちょっと納得できないなぁと思う。製作者たちの「サムライの精神」に対する思い入ればかりが大きくて、奇妙な精神主義に陥っている映画だと思う。それがガトリング砲と槍刀の戦いという、馬鹿げた戦争を正当化させると思ったら大間違いだろう。こんなのおかしいよ。製作者たちは黒澤明の戦国時代劇のような映像を撮りたかったのだろうけれど、黒澤の時代劇にだって鉄砲は出てくるぞ。結局ここで描かれているのは「物質主義VS精神主義」という二元論だ。時代考証や風俗考証にはかなり力を入れていることが見て取れる映画ではあったけれど、脚本がこれじゃあなぁ……というのが正直な感想。

11月14日(金)
 午前中から映画の感想を書いていたが、体調がいまいち。外が寒そうだと体調が悪くなる。これは単に外出したくないだけなんじゃないのかね。我ながらそう思う。午後は1本試写を観る予定だったのだが、部屋を出るタイミングが遅れたために取りやめ。図書館で借りているCDも返さなきゃならないのだけれど、これも土日になりそうだ。
 かわりと言ってはおかしいが、サンプルビデオを借りっぱなしになっていた行定勲監督の『Seventh Anniversary』を見る。小さな映画だけれど、なかなかいいじゃん! まだ公開もされていないのに、来年早々にビデオとDVDが出ることが決定している。要するにこれは、ビデオとDVDを発売する前に「劇場公開作」という箔付けのため劇場にかけるだけの話なんだけど……。
 近くの薬屋に現像に出していたデジカメ写真を受け取る。これはすごくきれい。カメラ屋に設置してあるプリンターで印刷したものとは雲泥の差がある。今回は画素数で3Mと1Mの2種類をプリントに出したのだが、サービスサイズだとふたつの差はまったくわからないように思う。ということは、僕がこれまで持っていた単焦点の1.3Mデジカメでも、サービスサイズの写真なら問題なく撮れるということだ。帰宅してからこれまで通常のフィルムで撮っていた写真と見比べてみたが、ハーフサイズカメラで撮った写真よりデジカメの方がずっと高画質。これはまぁ納得できるけれど、フルサイズのコンパクトカメラ(CONTAX T2・CONTAX T3・MINOX 35GT)で撮影した写真と比べても、色合いやシャープさの点で遜色がない。ただしシャドウ部はつぶれ気味で、ハイライトも立ちすぎか。これはカメラのレンズのクセかもしれない。そもそもCONTAXやMINOXはレンズの描写力がとんでもなく優れているわけで、普及価格帯のデジカメと比べるのはちょっと気の毒かも。デジタルとアナログの違いを比べるなら、CONTAXブランドのデジカメと比べないとフェアじゃない。ちなみに僕が使っているデジカメはFUJI FILM FinePix F410というもので、AMAZONのユーザー評価などを見ても、やはり白トビについての声がちらほら見える。これはデジタルの問題ではなくて、このカメラのクセみたいだ。薬局のおじさんはパナソニックから出たばかりの12倍ズーム機LUMIX DMC-FZ10を早速買ったそうで、これはすごくいいと言っていた。でも普段持ち歩くにはちょっと大きいかも。映画瓦版で記者会見や舞台挨拶を頻繁に取材するようなことになれば、こうしたカメラを買ってもいいんだけど……。
 とにかく今回の件で、デジカメプリントはDPEに出すに限ると痛感。インターネットでデータを渡して近くの契約店で受け取る方法もあるので、今度はそれを利用してみようかなぁ……とも思う。

11月15日(土)
 映画の感想を書いたあと、仕事を少しずつ進めていく。毎週やっているクイズ作成は、今週ひどく苦労しそうだ。テーマがクイズになりにくいんだよなぁ……。
 仕事の合間にDVDで『雨に唄えば』の特典ディスクをようやく見る。MGMの名プロデューサー、アーサー・フリードについてのドキュメンタリーと、『雨に唄えば』のメイキング・ドキュメンタリーは見応えがある。特にフリードのドキュメンタリーは、『巴里のアメリカ人』や『バンド・ワゴン』『恋の手ほどき』などについても裏話が語られていて興味深かった。『雨に唄えば』では「メイク・エム・ラフ」と「ビー・ア・クラウン」の類似に気づいたアーヴィング・バーリンが、スタジオでうつむいてしまったという話が面白い。「ビー・ア・クラウン」をパクられた当人のコール・ポーターは、この類似(というよりほとんど同じ曲)を黙認したそうですけど、本当のところはどう思ってたのかなぁ。この特典ドキュメンタリーには、いまだDVD化のきざしさえ見えない(アメリカでもDVDが発売されていない)『バンド・ワゴン』の名場面や、そのリハーサル風景などが収録されている。『バンド・ワゴン』のクライマックスにあるダンスに、あのアステアが音を上げて途中で何度も投げ出しそうになったという話を聞くと、古いLDを引っ張り出して『バンド・ワゴン』をもう一度見たくなるなぁ……。
 なぜか気になる社民党の終末。福島新党首は土井前党首を最高顧問として残ってほしいんだとか。福島瑞穂じゃ党をまとめきれないから、土井たか子という後ろ盾を失いたくないということなんだろうけど、それじゃやっぱり土井前党首の辞任は形ばかりのものじゃないか。これじゃ次の選挙も、社民党の惨敗は目に見えているなぁ。10数年前のマドンナ旋風を覚えている者から見ると、社民党の凋落ほどドラマチックな政治劇はないなぁ。まぁもっと年配の人なら、さらに社会党が元気だった時代も知っていることでしょうけどね。

11月16日(日)
 午前中から仕事をしていた。午後は東京女子マラソンの中継を横目でちらちらながめながら、クイズ作りなど。高橋尚子が独走状態かと思ったら、後半大ブレーキがかかって結局平凡な記録での2着。これでアテネ行きは怪しくなる。減量しすぎてガス欠になったと監督は言っていたけれど、本当のところはどうなのか、これは当人たちにしかわかるまい。
 3時頃部屋を出て目黒雅叙園で開催されている「華道家・假屋崎省吾の世界」を見学。假屋崎さんには毎回招待状をいただくのだが、いつも他の予定があって足を運ぶことができず、実際に見るのは今回が初めて。途中で山手線が事故運休していたので、有楽町から三田線に乗り継いで目黒へ。雅叙園は入口を入ったとたんに凄い人。これが全部、假屋崎展の見学者なのだ。会場に入るためのエレベーター待ちで行列しているのだが、エレベーターの扉が開かれるたびに列が少しずつ進んでいく様子は、なんだかアウシュビッツものの映画に出てくるような風景だった。最終日で休日、しかもいい天気ということもあって、ひどく混んでいるのだろう。
  假屋崎さんの作品を実際に生で見るのは今回が初めてだったのだが、これは素晴らしいものだった。写真やテレビでは何度も見ているけれど、それとは迫力が違う。大胆で繊細な美の世界。展示会場になっている目黒雅叙園の百段階段は、室内の装飾がこれまた素晴らしく豪華なのだが、それにまったく負けず、調和しながらひとつの世界を作り上げている。いいもの見せていただきました。また機会があれば、ぜひ見てみたいなぁ。
 帰りは渋谷回りで帰宅。途中でとうきゅうの食品売り場に立ち寄ったりしたが、特に何かを買うというわけでもなく、そのまま手ぶらで帰ってきてしまった。

11月17日(月)
 午前中の早い時間にクイズを仕上げ、その後借りているDVDをもう一度見直してメモを作り、解説用の原稿を作り始める。これに思った以上に時間がかかり、できあがったのは5時過ぎ。メールで入稿して一段落。
 夜になってTVタックルを見た後、近くのコンビニで「ぴあ」を買ってくる。ベッドの掛け布団を夏用の薄いものから冬用に交換する。
 夜になってデジカメ写真を何点かインターネットでプリント注文。できあがりは明後日だという。これは便利だ! メディアを持ち込むのと違って、複数のプリントサイズが混在できるのはいい。

11月18日(火)
 午前中はメルマガ編集。午後は試写2本をメディアボックス試写室ではしご。1本目はニール・ジョーダンの『ギャンブル・プレイ』。これはどうも冴えない映画だった。出演者は豪華なのだが、映画のスケール間がまるでない。映像的にもへんなクセがある。なぜこうなったのだろう。ヒロインを演じた若い女優が、背が高くてやせっぽちという僕好み。でも映画がなぁ……。2本目はイタリアの低予算戦争映画『炎の戦線エル・アラメイン』。これはちょっと面白かった。いろいろと工夫があるのだ。
 食事をしてから日比谷スカラ座2で『ジャスト・マリッジ』。映画の出だしは悪くないのだが、序盤で既に息切れしはじめるラブ・コメディ。
 帰りにスーパーに立ち寄って、ご飯を冷凍させる容器をまとめ買い。これまでご飯茶碗1膳分のもの4個と1.5膳分のもの4個で対応してきたのだが、大盛りの容器をやめて全部1膳分に切り替えようと考えたのだ。その方が食べる量が減らせて、ダイエット効果が期待できるだろうし。以前はかならず1食に2膳ずつ食べてたのだが、玄米食にすっかり慣れると食べる量が減ってきた。体重も減って最近は身体が軽い。地下鉄の階段を下から上まで駆け上がれるようになったのは、本当に久しぶりかも。もうじき70キロを切りそうだ。

11月19日(水)
 朝から玄米ご飯を炊いて、冷凍容器に詰めて冷凍庫へ。冷凍庫の中はご飯がぎっしり。ちょっと幸せ。午前中に映画の感想を書いてホームページを更新。午後は来年から始まるかもしれない、テレビ番組の企画打ち合わせのため銀座へ。これはまだ企画を出す以前の段階なので、実際に番組が作られるかどうかはわからない。ただし先方はかなり乗り気なようなので、実現すると僕としては嬉しいなぁと思う。レギュラーの収入になるので、生活も安定するしね……。
 3時半から映画美学校で『テヘラン朝7時』。ビデオ映写で画面が眠く、これといったドラマもないので、観ているこちらも眠くなる。何度か意識が遠ざかっていった。簡単に食事してから、GAGAの試写室で『アステリクスとオベリクス』のシリーズ第2弾『ミッション・クレオパトラ』を観た。途中永田町で乗り換えるつもりが、麹町まで行ってしまったときは焦った。なんとか試写時間には間に合ったけどね。
  これは1作目をフランス映画祭で観たけど、とうとう日本では公開されなかったなぁ……。2作目だけが公開されるのはシリーズ映画としてやや変則的だけれど、それもこれもクレオパトラを演じたモニカ・ベルッチのネームバリューによるものなのだろうか。(1作目のゲストスターはロベルト・ベニーニだった。)この映画の笑いは1作目あってのものという気がしないでもないけれど、これだけ観ても十分面白いとは思う。シーザー役が交代しているせいか、アラン・シャバ演じるシーザーがふたりのガリア人のことをきれいさっぱり忘れている。VFXをたっぷり使ったサービス満点の娯楽大作。こういうのは、日本語吹替え版も作ってほしいのだなぁ。クレオパトラ役の声は小林幸子がいいかも。

11月20日(木)
 1日中ずっと雨。午前中に映画の感想を書いてしまい、午後は試写を2本。1本目は黒川芽以主演の『問題のない私たち』。『クラヤミノレクイエム』の森岡利行監督が撮った新作だが、前作とはがらりと趣を変えた青春映画だ。テーマがいじめや教師との確執というもので、アイドル主演の青春ものとしてはかなりハードな手ごたえのある映画になっている。かなり気に入った映画なのだけれど、欠点もやっぱりあるよなぁ……。女の子たちはすごくいいんだけどね。
 2本目は東宝の試写室でドイツ映画『9000マイルの約束』。第二次大戦後、シベリアに抑留されたドイツ人がユーラシア大陸を徒歩横断して故郷に戻るという「実話」の映画化。日本も戦後大勢がシベリアで抑留されたのに、それをモチーフにした映画が作られたことはなかった。同じような映画を、日本で作ってもいい頃だと思うけどなぁ。
 一度帰宅してから、8時頃にSさんと月島で落ち合って、食事をしながら仕事の報告と打ち合わせ。ホームページのリニューアルについてだが、新しいシステムへ完全に移行するのは来年になりそうだ。
 ロバート・グラッツァーの「映画を「自分のことば」で語るためのシネマ頭脳」を読み終わる。映画批評の方法論について、映画の成り立ちの解説や実例を交えながら語っている本。方法論については僕も同感に思う点が多い。ただし実例として登場する映画評については、異論もあるけどね。まぁこうした異論があるのは、作者も最初から見越していることだろうと思う。他人がどう考えようと、「自分はこの映画についてこう考える。なぜならば……」 と語る人がひとりでも増えることが、作者の望んでいることなんじゃないだろうか。映画について語るのに資格はいらない。映画を観た人たちが、それぞれの立場から、それぞれの言葉で映画について語っていくことが必要なんだと思う。職業的な批評家や評論家だけが、映画について語ることを独占している必要なんてさらさらないのだ。映画について語るのは、映画を通して自分自身を語ることに他ならない。
 目の前に1個のリンゴがあっても、ある人はその「色」について語り、別の人はその「形」について語り、またある人はその「味」について熱く語る。どこに注目するかというのがその人の個性であって、すべてにわたってバランスよく語る必要なんてないのだ。リンゴについては他にも「産地」「品種」「栽培法」「流通」「切り方」「皮のむき方」など、ありとあらゆる語り方がある。映画だってこれとまったく同じ。わたしにはわたしの、あなたにはあなたの映画があって、それが一致することなんてないんだもんね。

11月21日(金)
 晴れて暖かい1日。午前中は映画の感想を書いて過ごす。午後は渋谷の東芝エンタテインメント試写室で、チョウ・ユンファ主演の『バレット・モンク』。これは邦題が半分インチキだなぁ……。この邦題だと意味は「弾丸坊主」だけれど、原題は「Bulletproof monk」だから「防弾坊主」が正しいような気がするんですけどね。でもそれではお客さんにアピールできないので、この映画ではあえてこのタイトルにして、キービジュアルも両手に銃を持ったチョウ・ユンファの勇ましい姿になってます。ひどいインチキ。しかしこうしたインチキもまた映画宣伝の知恵であり、映画ファンと映画会社はだましたりだまされたりしながら、映画という娯楽を楽しむのだ。僕はむしろ、映画の中からこの二丁拳銃のシーンを目ざとく見つけた宣伝マンが偉いと思う。
 本来ならもう1本試写の予定を入れていたのだが、間がちょっと空いてしまったので少し街をぶらついてから帰宅。

11月22日(土)
 午前中から少し仕事を片づけて、昼は門仲まで歩いて390円中華そばの日高で昼食。その後は深川不動まで少し散歩。初めて中に入ってみたけれど、なんだかテーマパークみたいで面白い。これが無料で見て回れるのはいいなぁ。
 夕方に図書館でCDを借り換えたあと買物。12月の旅行の予約電話を入れてから、夜は久しぶりにスパゲティを作って食べる。近所の酒屋でボージョレーヌーヴォーを買ってきたのだが、これが口当たりがよくてすいすい飲めてしまった。テレビで見ていた「アド街ック天国」は清澄白河を取り上げていた。いったことのないところもたくさん出てきたけれど、深川江戸資料館や清澄庭園、ウグイスの糞を売っているお店、深川飯など、定番のものも多い。今度また行ってみようと思う。

11月23日(日・勤労感謝の日)
 午前中はCS。昼頃帰宅して簡単に食事。少し仕事もしたが、夜は月島の養老乃瀧で食事をかねて飲む。このチェーンは盛り場だと若い客が多いのだが、土地柄のせいかここは年配の客が多くて多少落ち着いていると思う。値段が安いし、お店の感じも悪くないと思った。一人前の小さな鍋があるのもいい。でもそうそうは来ないだろうなぁ。月島には他にもいろんなお店があるしね。今回は偵察のようなもの。

11月24日(月・振替休日)
 午前中に少し仕事。午後は夕方から新宿に出て映画を観ようと思ったのだが、満席で立ち見とのことだったのでパスして街をブラブラ。暗くなってから西口のパスタ屋で夕食とって帰宅。
 少し飲んでいたのだが、夜は少し仕事をしてから寝る。

11月25日(火)
 朝から雨。仕事をして1日過ごす。
 土曜日に僕が企画とシナリオの一部を担当したコンサートがあるので、その交通経路などを下調べしておく。
 夜遅くになってからメルマガの編集をようやく終えて、発行手続きを済ませてから寝る。

11月26日(水)
 午前中に仕事を少し。午後から試写2本。まずは東芝エンタテインメント試写室で中国映画『涙女』。これは中国映画だけれど、中国の資本は入っていない。製作はフランス、カナダ、韓国の合作。なかなか面白かった。2本目はUIPで『ブルース・オールマイティ』。それなりに楽しめはしたけれど、期待していたほどではなかった。
 歩いて帰宅して夕食。その後『ブルース・オールマイティ』をネタにして原稿を書くためひどく苦労する。結局この日は原稿の切り口が見つからず、12時頃まで粘ってそのまま寝てしまう。書いたのは写真のキャプションだけ。残りは明日の朝やるつもり。(明日が原稿の締め切りなんだけどね。)

11月27日(木)
 午前中に月刊誌の原稿を書いて入稿。その後映画の感想を2本書いたところで、編集部から原稿のダメ出し。これを手早く直して入稿し直し、午後の試写へ。
 まず松竹で『最後の恋,初めての恋』の試写。悪くないけど、本当ならもうちょっとよくなる映画だと思う。残念。途中で映像がテレビっぽくなるのは、フィルムではなくハイビジョンか何かで撮影していたのだろうか。2本目は東映で『映画・あたしンち』。面白いけど、95分はちょっと長いかも。80分ぐらいでまとめて、15分ぐらいの併映作品をつけるくらいが、ちょうどよかったんじゃないだろうか。
 銀行に立ち寄ってから本屋を少しぶらつき、一度帰宅して荷物の整理と着替え。8時から飯田橋のペンサコーラで映画瓦版のオフ会。参加者少なめながら、大いに盛り上がり、ビールを次々におかわり。帰宅したら12時近かった。

11月28日(金)
 前日のオフ会で大盛り上がりしたせいもあって、ちょっと朝寝坊。映画の感想文を書く作業もあまりはかどらない。昨夜の店はロックバーで、店内には80年代ロックのビデオクリップが流れっぱなし状態なのだが、そこで盛り上がったのはやっぱりマイケル・ジャクソンの「スリラー」と、ファイヤー・インクの「今夜は青春」。映画ファンなら当然知ってる、ウォルター・ヒルの傑作『ストリート・オブ・ファイヤー』のテーマ曲なのだ。ビデオクリップを見ていたらどうしても映画本編が観たくなってしまったのだが、AMAZONで検索したところ、現在廉価版のDVDが出ている様子。定価1,500円はかなり食指をそそられるなぁ……。ちなみに「スリラー」「ストリート・オブ・ファイヤー」のサントラは、両方ともかつてLPで持ってました。
 午後は試写を1本スキップして3時半からの試写を観ようと六本木に出かけたのだが、これがなんと満員で入場札止め状態。「今日は上の試写室でも回してるんですけど、そこも満員なんです」という宣伝担当者の言葉に引き返したのだが、この試写は上映時間が長いので、こちらとしてはスケジュールを組み直すのがちょっと大変なんだよなぁ。(それは試写室のブッキングをする方がもっと大変そうだけどね。)とりあえず追加の試写状が来ていたので、それを見ながら試写を後日に回す。しかしこれ、試写で観られるかなぁ……。一度タイミングを外した映画って、次も何となくタイミングが外されて、最後までとうとう観られずじまいということがよくあるのだ。とりあえずしょうがないので、本屋などをながめて帰宅。

11月29日(土)
 聖マリアンナ医科大学の講堂で開かれる「イーハトーヴォ・コンサート」を観るため、朝から電車やバスを乗り継いで会場へ。向ヶ丘遊園は遠いなぁ……。寒いし、雨だし、電車やバスはみょうに混んでいて蒸し暑い。ちょっと乗り物酔いに近い状態で会場へ。少し早めに到着してしまったので、コンサートの前に開催されていた「院内感染トリビア」という講演も見学。これが結構面白かった。講師は京都府立医科大学の藤田直久という先生。要するに「手洗いは大切だ」という話なんですけどね。この日の演目はこの講演とコンサートの2部構成で、「Care for Caregiversプログラム」という企画になっている。日頃病人のお世話で大変な看護婦さんたちに、ちょっと勉強がてら、音楽で心を癒してもらいましょうというイベントなのでした。
 第2部のコンサート開始は予定より少し押して11時をだいぶ過ぎていた。僕が作ったシナリオの痕跡はまったくなかったけれど、コンサート自体はなかなか面白く鑑賞できた。「なるほど、この会場ではこういう演出は無理なのか」とか「これならこうした方が演出効果が高そうだ」とか、きわめて裏方的な見方をしている面もあるけどね。このコンサートのために楽曲を提供したのは、ゲーム音楽や映画・テレビなどの仕事が多いという多和田吏さん。打ち合わせで一度お会いしたら、なんとお住まいは僕のうちのすぐ近所だったという間柄なのだ。この日コンサートで演奏された曲はもともと10年前にスーパーファミコンのゲーム「イーハトーヴォ物語」のために作曲したもので、ゲームが廃盤になってもサントラ盤だけが再発売されるなど、音楽作品として一部で高い評価を受けていたものだという。今回はそれをピアノと弦楽器のアンサンブル用にアレンジして演奏している。生楽器の演奏は、電子楽器を使っていたサントラCDより、ずっと心に響くものになっていると思う。
 このコンサートは講演とセットにして、今後も全国の看護大学や専門学校で開催されるそうです。コンサートの内容は今後どんどんブラッシュアップされて、よりよいものになっていくんじゃないだろうか。「こうしたらいいのに」と思うことがいくつかあったので、忘れないうちに手帳にメモを作っておいた。これは来週にでもプロデューサーの小川さんと作曲の多和田さんに送っておこうと思う。
 帰りは途中で昼食を食べてから寄り道し、夜遅くになってから帰宅。疲れた。

11月30日(日)
 朝から大雨。それにもめげずCSへ。傘さして歩いていても、足はヒザから下がズブ濡れ。上着も肩から腕のあたりがぐっしょり。しょうがないなぁ……。
 帰宅する頃には雨が上がっていたので、歩いて帰宅。銀座にオープンしたアップルストアの前にはすごい人だかり。銀だこでたこ焼き買って、築地立ちより。昼過ぎに仕事部屋に戻る。
 朝から水につけていた玄米を炊いて、少し遅く3時頃に昼食。夕方に買い物に出て、カレーを作って食べたら、これがめちゃくちゃ美味い。材料は鶏の手羽元(安売りで10本入りのものが100gあたり29円でした)、タマネギの大玉1個、ニンニク数片、固形のカレールー。まず手羽元を10本ざっと洗って、鍋で一度水から下茹でして、煮立ったらあくと脂が浮いたお湯を棄てる。圧力鍋に下茹でした手羽元と、タマネギをざくざく切ったものを入れて、かぶるぐらいの水加減。そこに2つぐらいに切ったニンニクを入れる。今回はさらに顆粒のスープと塩を今回は少し入れたけれど、これはなくてもいいかも。圧力鍋にフタをして、高圧で10分ちょっと加圧。この日は時間がなかったので急冷してしまったけれど、ここで自然に圧力が下がるまで待てば、手羽元がトロトロになる。圧力が下がったところでふたを開けて、固形ルーを入れてまぜまぜ。あとはとろみがつくまで少しぐつぐつ煮てやればOK。
  これですごく美味しいチキンカレーができあがる。調理時間は下ごしらえからでも30分ぐらいかな。手羽元は洗って丸ごと使うので、まな板や包丁が動物性の脂でぎとぎとになることがない。(ただし食べるときは骨をはずすのに手を使うので、食事中は手がカレーと脂でぎとぎとになる。でも美味い。)圧力鍋を使うとタマネギやニンニクは完全にとけてしまうし、コラーゲンたっぷりの手羽元からは濃厚なスープが出るので、これらがルーに溶け込んで抜群の美味さ。軟骨のコリコリした感じがたまらん。作るときのコツは、手羽元を圧力鍋で煮るときに、水加減をかぶるくらいにしておくこと。カレールーの箱に書いてある水加減で作ると、圧力鍋は水分がほとんど蒸発しないので、完成したときに水っぽくべしゃべしゃになる。最初は失敗したので、今回は2度目のチャレンジで大成功。野菜はルーの中で完全に溶けてしまうものだけを入れる方が、手羽を食べるときに邪魔にならなくていいと思う。
 僕が使っているのはティファールの安い圧力鍋だけれど、これは本当に買ってよかった。手羽元のカレーを普通の鍋で作ろうと思ったら、肉を煮込むだけで何時間もかかっちゃうよ。圧力鍋は爆発を怖がる人も多いけど、最近の鍋は二重三重の安全装置が付いているから大丈夫。僕はこれで週に何度か玄米も炊くし、完全に買っただけのもとはとったと思う。
 夜遅くまでかけてニュース・アカデミー向けにクイズの原稿を作る。



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