リング0
バースデイ

1999/12/28 東宝第1試写室
『リング』シリーズ第3弾は、山村貞子の青春時代を描く。
原作はあるが、映画はそれを大胆に脚色。by K. Hattori


 鈴木光司原作、高橋洋脚色の映画版『リング』シリーズ第3弾。監督は前作までの中田秀夫監督から、鶴田法男監督に交代している。原作は「バースデイ」収録の中編「レモンハート」だが、映画ではそれを独自に脚色しているので原作の読者も楽しめるはずだ。じつはこのシリーズ、『リング2』の時点でかなり原作から離れた独自の展開を見せ始めている。原作の「リング」は続編「らせん」「ループ」へと発展して完結したのだが、映画『リング』は『リング2』から原作とは異なる世界観を作り始めている。「貞子」というキャラクターや「呪い」というキーワードが原作以上に強調され、純和風のサイキック・ホラー映画になってきたのだ。新たな謎もいくつか出てきている。貞子の死体が発見されたとき、死後数年しか経っていなかったのはなぜか? 彼女は井戸の底で、なぜ生きながらえることができたのか? 今回の映画では、それらの疑問にきちんと答えている。

 昭和43年。雑誌記者の宮地彰子は、自殺した超能力者・山村志津子の娘・貞子の消息を探していた。じつは10数年前の公開実験の最中に記者のひとりが急死したのを皮切りに、現在までに取材記者のほとんどが謎の死を遂げているのだ。やがて宮地は、貞子が東京の劇団に所属していることを突き止める。劇団ではつい最近、稽古中に主演女優が急死し、新人の山村貞子が代役として抜擢されたばかりだった。劇団も呪われたのか……。

 今回の山村貞子は醜悪なモンスターではなく、不幸な過去から抜けだし、18歳の青春を東京という新天地で生きようとする可憐な少女です。しかし彼女がつかもうとしている小さな幸せをあざ笑うかのように、母親・志津子の影が彼女の人生に暗い影を落とし、出生にまつわる呪われた秘密が周囲に恐怖を巻き起こす。『リング』シリーズでは貞子という異形の者の悲しみと恨みが大きなテーマになっているわけですが、今回の映画では貞子自身の被害者としての側面が、今まで以上に強く打ち出されています。これは角川冬ホラーの、ひとつの戦略かもしれません。前年『リング2』と同時公開された『死国』も、最後は「異形の悲しみ」というテーマを出していたし、今回『リング0/バースデイ』と同時公開される『ISOLA/多重人格少女』も、同じテーマを持っているのです。さらに言えば、『死国』以降の3作に共通しているのはダブル・ヒロインです。『死国』の夏川結衣と栗山千明、『ISOLA/多重人格少女』の木村佳乃と黒澤優、『リング0/バースデイ』では仲間由紀恵と麻生久美子がヒロインです。

 映画は純和風の青春ホラー映画になっていて、なかなか見応えがありました。おっかない貞子もちゃんと登場しますし、その怖さは今まで以上に鮮烈です。「うわ、そんなのありかよ!」という驚きがあります。昭和40年代をきちんと再現しようとする、美術スタッフの仕事ぶりも素晴らしい。とにかく面白い。このシリーズ、完結などと言わずにもっと続けてください!


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