ファンタジア/2000

1999/12/21 東京アイマックスシアター
ディズニーの名作『ファンタジア』を最新技術でリメイクした傑作。
お正月映画の中ではこれがイチオシかも。by K. Hattori


 1940年に製作されたディズニーアニメ『ファンタジア』の続編というか、リメイク作品。クラシックの名曲とディズニーアニメが合体したオムニバス・ミュージカル(というよりアニメによるバレエかもしれない)『ファンタジア』は、再公開のたびに構成されるエピソードのいくつかを新作と入れ替える、新陳代謝するアニメ映画として企画されていたらしい。実際にはそうしたことは行われず、『ファンタジア』はアニメ映画の古典として映画史の中に定着している。今回の映画では当初の企画通り、エピソードのいくつかを入れ替える形での新作上映となった。といっても、残されたのはミッキー・マウスが登場する「魔法使いの弟子」だけで、他の7エピソードはすべて新作になっている。今回の『ファンタジア/2000』で使われている曲は、ベートーベンの交響曲第5番「運命」、レスピーギの交響詩「ローマの松」、ガーシュインの「ラプソディ・イン・ブルー」、ショスタコビッチの「ピアノ協奏曲2番」、サン=サーンスの「動物の謝肉祭」、デュカの「魔法使いの弟子」、エルガーの「威風堂々」、ストラビンスキーの「火の鳥」。この映画は全世界のアイマックスシアターで西暦2000年の正月から一斉公開され、その後35ミリ版も一般劇場で公開されるらしい。

 個人的にはガーシュインの「ラプソディ・イン・ブルー」に期待していたのだが、これはそれほど面白くなかった。何枚かのガーシュインのアルバムでジャケットのイラストも描いているアル・ハーシュフェルドが原画を提供しているのだが、着色したことで線画の繊細なタッチが損なわれているように感じる。技術的にはすごいんでしょうけど、なんだか昔の名作名画をカラライゼーションした不自然さに通じるのです。クラリネットの音に合わせて1本の線が摩天楼を描く出だしは良かったんだけど、人物が出てくるとちょっと……。

 エピソードの中でおそらくもっとも笑えるのは、「動物の謝肉祭」に登場するフラミンゴでしょう。音楽と動きがぴったりと合う快感があるし、フラミンゴとヨーヨーというナンセンスな組み合わせがいかにもバカバカしくて面白い。映像面でのすごさは「ローマの松」の空を飛ぶクジラと、最後に登場する「火の鳥」のエピソードでしょうか。アイマックスの巨大スクリーン一杯にザトウクジラの親子が泳ぎ、飛びはね、飛翔する様子には、鳥肌が立つような凄味があります。最後の「火の鳥」はおそらく『もののけ姫』に影響されたエピソードで、森に現れた春の女神と、彼女を飲み込む溶岩流の火の鳥、燃えつきた森の中に再び現れる女神による森の再生が描かれます。この女神の動きや表情が妙になまめかしく、観ていてドキドキしてしまいました。体が軟体動物のようにグニャグニャ動く様子はグロテスクの一歩手前ですが、それが神秘性に転じています。「スズの兵隊」や「ノアの箱船」も面白かったけど、「火の鳥」には負けるような気がする。ま、好みの問題だけどね。

(原題:Fantasia 2000)


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