ラブ・オブ・ザ・ゲーム

1999/12/13 UIP試写室
ベテラン・ピッチャーが自分の野球人生をかけたマウンドに立つ。
ケヴィン・コスナー主演の野球映画。大感動。by K. Hattori


 『さよならゲーム』で引退間際のマイナー・リーグ選手を演じたケヴィン・コスナーが、今度は大リーグの名投手を演じる野球映画。コスナーの野球映画には『フィールド・オブ・ドリームス』もあるが、今回の映画はそれにも負けないぐらい感動的な作品になっている。共演はケリー・プレストン、ジョン・C・ライリーなど。監督は『シンプル・プラン』で大変身したサム・ライミで、今回も正攻法のアプローチでひとりの男の人生を描ききっている。上映時間は2時間18分。今から10年以上前の『さよならゲーム』で引退する野球選手を演じていたコスナーが、すっかり中年になった今になって現役大リーがーを演じるのは少し図々しいようにも感じたのだが、そんな思いこみは最初の5分で吹き飛んだ。少年時代から野球一筋。新人時代から球場をわかせる大スターになり、40歳になっても現役投手。「俺には野球しかない。野球がすべてなんだ」という台詞が、ケヴィン・コスナーほど似合う俳優が他にいるでしょうか?

 主人公ビリー・チャペルは、デトロイト・タイガースで19年に渡ってプレーしてきたチームの看板選手。往年の勢いはないが、40歳になった今でも現役のピッチャーだ。シーズンは間もなく終了。今期の成績は8勝11敗とあまり芳しくないが、チームの要として若い選手たちを引っ張っていく存在になっている。だがそんな彼に、オーナーがチーム売却の話を打ち明ける。買収先のオーナーはチャペルの貢献を認めず、他の球団にトレードに出す方針だという。あえてチームに残って新オーナーの元で屈辱を味わうか、それとも愛着のあるチームでスター選手のまま現役生活を終えるか……。チャペルは野球人生最大の決断を下せないまま、現役最後になるかもしれないピッチャー・マウンドに登る。

 試合の進行に併せて、主人公の過去が回想されるという構成。その中では特に、5年前に出会ったジェーンという女性との関係が、物語の中で大きな比重を占めることになります。ビリーとジェーンの関係から映画を観れば、これはラブストーリーにも見える。しかし物語の本筋はあくまでも「野球を愛した男の引き際」と「いかにして有終の美を飾るか」であって、ジェーンは両親をはじめとする彼を愛した人々の象徴になっているのだと思う。彼の野球人生を象徴するのがマウンドであり、野球を離れた彼の生活を象徴するのがジェーンなのです。

 女性が観ても面白い映画だとは思いますが、これにハマるのはやはり男性でしょう。少年時代に父親とキャッチボールをしたことのある人なら、この映画に絶対に感動します。『フィールド・オブ・ドリームス』も、最後は父と息子のキャッチボールで終わった。レッドフォードの野球映画『ナチュラル』も同じだ。父親と息子が白いボールを投げ合うという風景が、男たちの精神の原風景になっているからこそ、こうした場面が感動を生むのだろう。力つきた主人公をチームメイトが支える場面も感動的。僕はここで涙が吹き出した。

(原題:FOR LOVE OF THE GAME)


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