ワイルド・スモーカーズ

1999/11/24 シネカノン試写室
違法栽培のマリファナで一攫千金を夢見た男たちのドタバタ劇。
出演者は豪華だが映画としての一体感に欠ける。by K. Hattori


 北カリフォルニアでマリファナ栽培をしている男たち3人の目の前で、密造と売買を一手に取り仕切っていたボスが射殺された。さては一大事と泡を食って逃げ出した3人だが、「せめて小遣い銭ぐらいは」と思い直してマリファナ畑に戻り、自分たちの給料分のマリファナを伐採してくる。ボスの名を使って手持ちのクサを売り払ったものの、山に戻ればまだまだ広大なマリファナ畑が手つかずで残っているのだ。売り払えば500万ドルのあぶく銭。これを黙って見過ごす手はない……。監督・脚本は『パリス・トラウト』『欲望』のスティーブン・ギレンホール。小悪党たちがうごめく規模の小さな犯罪映画だが、出演者の顔ぶれはヘンに豪華。主演はビリー・ボブ・ソーントン、ライアン・フィリップ、ハンク・アザリア、ケリー・リンチで、脇にはジョン・リスゴー、ジェイミー・リー・カーティス、ジョン・ボン・ジョヴィなどが顔を見せている。

 マリファナそのものはいろんな映画の中に出てくるが、その栽培、収穫、製品化、出荷といった流通過程を描いている点で、この映画は一見の価値がある。山の中に広がるマリファナ畑は壮観だが、どうやってロケしているのかと思ったら、植えてあるマリファナは絹製の模造品だとか。本物を見たことがないのでどの程度リアルなのかはわからないが、屋外セットに忍び込んで数株盗んでいった者がいるというから、それなりに本物らしく作られているのだろう。アメリカでも日本でもマリファナ(大麻)は政府御禁制のソフト・ドラッグだが、戦前の日本では麻製品の材料として盛んに栽培されていたらしい。戦後はGHQのお達しで大麻の栽培が制限され、麻のシャツやスーツは超高級品になってしまった。戦前の日本には、大麻が麻薬だという発想も、吸飲する習慣もなかったようです。もっとも大麻の麻薬効果は古くから知られていて、イスラムの秘密結社では若者に大麻を吸わせて夢見心地にさせ、命を落とすこともいとわない暗殺者に仕立て上げたという伝説がある。命と引き替えにしても惜しくないマリファナの幻想とは、どんなものなのでしょうか? 自分では試してみる気も機会もないので、経験者がいたらご教授願いたい……。

 映画は「誰がボスを殺したのか?」というミステリーから始まるが、主人公たちがマリファナ狂の脳天気ばかりなので、ストーリーはしばしばボス殺しの真相究明から脱線して迷走する。ボス殺しの真相はひとまず棚上げして、まずは目の前にある取引やクサ泥棒撃退の方が重要なのだ。ストーリーは最初から脱線しているのだが、それでも転覆をまぬがれて物語はどこまでも暴走して行く。問題は暴走する機関車たる主人公たちが、妙に品よく平和的な人物に見えてしまうこと。個々のキャラクターがこぢんまりまとまっていて、チームとしての一体感に欠ける。『ラスベガスをやっつけろ!』並のハチャメチャぶりがあると、映画としてのまとまりが出たと思うんだけど……。ちょっと物足りなかった。

(原題:Homegrown)


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