ジークフリート&ロイ
マジック・ボックス
IN 3D

1999/10/06 東京アイマックスシアター
ラスベガスで大人気の大掛かりなマジックショーを大画面で堪能。
これはブレット・レナード監督の最高傑作だ! by K. Hattori


 アイマックス3D映画は今までに何本か観てきましたが、この映画はその中でも最高の1本です。ラスベガスで活躍する実在のマジシャン・コンビ「ジークフリート&ロイ」を主人公に、彼らのショーの様子と、彼らがそこにたどり着くまでの足跡を綴り合わせた一種の伝記映画。アイマックス3Dの映画は、特殊なゴーグルのせいで映画を見た後に頭痛がするのが常ですが、この映画は3D映画で初めて時間がたつのを忘れさせてくれました。50分の上映時間は3D映画としては普通ですが、「もっと観ていたい!」と心から思えたのは、3D映画では初めての経験です。3D映画をまだ観ていない人たちも、過去に何度か3Dを経験した人たちも必見の映画です!

 出演はジークフリート&ロイ本人たち。監督は3D映画『T-REX』も撮っているブレット・レナード。この監督は『バーチャル・ウォーズ』や『バーチュオシティ』など、通常の劇場映画も監督していますが、B級のSF映画からいつまでも抜け出せなかった人。それがアイマックス3Dというキャンバスを得て、突然才能を開花させてしまった。もともとCGIと実写の組み合わせが好きな監督だったし、写真のようなリアリティよりCGIならではの艶やかでファンタジックな質感表現を好んでいた人だから、こうした映画にはピッタリなのかもしれません。この映画のレナード監督は、まさに水を得た魚。奔放なイメージの洪水が、観る者を圧倒します。

 連日切符が売り切れてなかなか観ることができないというジークフリート&ロイのショーを、高精細な3D撮影技術でたっぷりと見せてくれるのがまず嬉しい。彼らはショーの中で、自分たちをヒロイック・ファンタジーの世界に住む魔術師になぞらえているらしい。剣と魔法、騎士と錬金術の世界です。中世風の衣装を着たふたりの周囲を、甲冑に身を包んだ女戦士、屈強な奴隷たち、黒マントの従者たちが取り囲み、世にも不思議なイリュージョンを見せてくれる。最後はトラやライオン、ゾウが飛び出す大仕掛け。ブレット・レナード監督の演出は、しばし現実を忘れさせるこの派手なショーに負けていない。CGIで作ったイメージと舞台上のイリュージョンが解け合って、見事な相乗効果を生みだしています。

 この映画は主人公たちの過去を回想する場面を、時には舞台劇のように、時には紙芝居のように演出しているのが面白い。こうしたスタイルを取ることで、映画に描かれた主人公たちの過去は、現実とフィクションの中間に位置することになる。どのエピソードもきれい事ばかりですが、この映画ではそれがまったく気にならない。ここで描かれている主人公たちの私生活や過去は、彼らがステージで見せる豪華絢爛なショーの延長にあるのです。ショーには演出が付き物。ここで描かれている私生活が演出されたものであったとしても、それが何だというのでしょう。舞台の上のショーはどんなに巧妙にできていても、そこには必ずタネや仕掛けがある。でも観客はそれを無視して、単純に喜んでいればいいのです。

(原題:SIEGFRIED & ROY: THE MAGIC BOX)


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