奇人たちの晩餐会

1999/09/13 メディアボックス試写室
フランスで記録的な大ヒットをとばした傑作コメディ。
スピルバーグが再映画化するらしい。by K. Hattori


 一昨年のフランス映画祭横浜で上映されるや、満員になったパシフィコ横浜の大ホールが、客席からの笑い声で何度も揺れたという傑作コメディ。1時間20分の小品ながら、フランス映画の興行記録を塗り替える大ヒット作だという。(アメリカではドリームワークスが再映画化権を買い付け、来年中にはダスティン・ホフマン主演のリメイク版が公開されるらしい。)映画祭で観た時は『変人たちの晩餐会』というタイトルで、おそらくはこれが一昨年のフランス映画祭ではもっとも観客にウケた作品だと思う。フランス映画らしいグロテスクなヒネリのあるコメディですが、この面白さは日本人にも絶対に理解できるはず。しかし大ヒット作だということで金銭的な折り合いがつかなかったのか、その後も日本での配給が決まらず残念に思っていた矢先、来年のお正月映画として日本でも劇場公開されると聞いて大喜び。

 出版業を営むピエールは、毎週水曜日の晩に仲間たちと開く「奇人たちの晩餐会」を何よりも楽しみにしている。メンバーが見つけたいろいろな奇人(バカ)を晩餐会に招待し、陰でバカにして楽しむという悪趣味な趣向。今週彼が見つけたのは、マッチ棒で模型を作るピニョンという中年男だ。ところが晩餐会の直前にピエールはぎっくり腰になり、些細な言い争いから妻は家出。痛む腰で部屋から出られなくなったピエールは、何も知らないピニョンと一晩を過ごすことになるのだが……。

 バカを肴にして楽しもうという男が、そのバカに生活を引っかき回されて踏んだり蹴ったりの目に遭うという話。僕は今回2度目の鑑賞で先の展開を知っているため、最初に観たときほどは笑えなかった。この映画は人物の動作や表情で笑わせる部分が少なく、ギャグのほとんどが会話で成立している。ある一定方向を目指して始まった会話が、突然脇道にそれて脱線転覆する面白さ。しかしこれは、先の展開をあらかじめ知っていると面白味が半減してしまう。しかしその反面、先の展開を知っているからこその楽しみというものもあるのだ。

 この映画の舞台はピエールの高級アパルトマンが主で、それ以外の場所は説明的にしか出てこない。ドラマのほとんどは、ピエールのアパルトマンで進行する。この1場の舞台に、どのように人を入れ、人を出すかというのが、この映画のもうひとつの見所。この映画では、舞台劇のようなテンポと歯切れの良さで、次々に人が登場しては退場してゆく。妻と愛人との入れ違いなど、観ていて本当に楽しい。名人の手品を見ているようで、見ていてあまりの巧妙さにため息が出そうになります。

 この映画はもともとが舞台劇で、そちらの作演出も、映画と同じフランシス・ヴェベール。舞台版は上演時間が2時間半ほどあるものを、映画化するに際して半分の1時間20分にしたというから、舞台用の脚本をかなりアレンジしているはずです。場面設定などが舞台劇風でありながら、あまり舞台劇の匂いを感じさせないのは、ヴェベール監督の工夫のたまものでしょう。

(原題:le diner de cons)


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