ぼくたちはここにいる

1999/09/07 シネカノン試写室
ゲイの親友3人組の友情と新しい恋へのチャレンジ。
エリック・コットがいい味出してます。by K. Hattori


 広告プランナーのホイ、売れない役者のガウ、B級映画の脚本家ファー。中学時代からの幼なじみ3人組は、大人になってからも親友同士。ここにあるのは男同士の友情。だがこの友情が他とちょっと違っていたのは、3人がゲイだということ。3人は同じマンションに同居して、互いにケンカしたり、励まし合ったりしている。

 実質的な物語の中心となっているのは、ラウ・チンワンが演じているホイ。彼は会社でラグビー部に所属し、職場ではスーツもばっちり決めて、ゲイだということをおくびにも出さない。ところがそんな彼が、仕事で無理矢理女性とコンビを組まされてしまう。相棒に指名されたフクメイは優秀なクリエイターであり、ホイには好意を持っているようだ。間の悪い偶然でホイはフクメイに自分がゲイだと知られてしまうが、彼女はそれでもホイを好きだという。なんていい娘なんだ! 子供の頃からずっと女性を恐れてきたホイだったが、不思議なことに彼もフクメイといる時は安らぎを感じることができるのだ。ホイとフクメイはいいムードになってくるが、ある事件がきっかけで、ホイがゲイであることが会社に知られてしまうことになる……。

 監督のデレク・チウはこの作品が日本デビューだが、監督としてのキャリアはこれが3本目。この映画が作られたのは1994年で、この後さらに数本の映画を作っている中堅監督だ。今後は他の作品も、日本でも紹介されるかもしれない。この映画で注目すべきは、ガウ役のエリック・コットだろう。彼は『初恋』『ドラゴン・ヒート』などの監督作が日本でも公開されてているが、俳優としても超一流の存在感を持った人。この映画の中で正真正銘の主人公と言えるのは、確かにラウ・チンワン演じるホイだけかもしれない。だが物語全体の基調和音を作り出しているのは、エリック・コット扮するガウなのだ。ガウには2回の長台詞があって、どちらも力の入った熱演だ。僕は思わず涙が出そうになったぞ。

 話そのものは甘ったるいところもあるけど、キャラクターの魅力で最後まで見せてしまう映画です。どれも特別ユニークで新鮮な人物とは思えませんが、エピソードのひとつひとつは身につまされるところもある。この映画の中で、じつは一番つまらない人物は主人公ホイかもしれません。面白いのは彼に好意を持っているフクメイと、エリック・コット扮するガウにつきます。フクメイ役は、台湾出身の歌手兼女優ン・シンリン。ホイの私生活にズカズカと入り込んできても嫌味がないのは、彼女のさっぱりとしたキャラクターによるところが大きい。少しでもベタベタしたところがあると、嫌らしくて観ていられなくなってしまったと思う。

 今から5年前の映画なので仕方ない部分もあるが、エイズの描き方がいかにも古い。逆に言えばここ5年ぐらいで、エイズの治療や世間のエイズに対する知識が格段に向上したということだろうか。これはエイズの映画ではないので、映画そのものは古くなってませんけどね。

(原題:OH! MY THREE GUYS / 三個相愛的少年)


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