ホーンティング

1999/08/20 イマジカ第1試写室
呪われた屋敷に閉じ込められた人々が悪霊と戦うホラー・アクション。
あまり恐くないが、音響効果で十分に楽しめる。by K. Hattori


 監督デビュー作『スピード』で世界中を熱狂させ、2作目の『ツイスター』で心ある映画ファンの首を傾げさせ、3作目の『スピード2』でそっぽを向かれたヤン・デ・ボン監督の最新作は、ドリーム・ワークス製作のお化け屋敷映画。1963年に『たたり』というタイトルで映画化されたシャーリー・ジャクソンの原作を、最新の特撮技術、画像処理技術、音響技術を使って再映画化したものだ。(『たたり』の原題は『THE HAUNTING』で、今回のリメイク版と同タイトル。監督はロバート・ワイズだった。)出演は『シンドラーのリスト』のリーアム・ニーソン、『エントラップメント』のキャサリン・ゼタ=ジョーンズ、『I SHOT ANDY WARHOL』のリリ・テイラーなど。俳優名だけ書くと、ヒーローはリーアム・ニーソンでヒロインがゼタ=ジョーンズのように思えますが、この映画の主人公はリリ・テイラーです。

 不眠症の研究という名目で、ヒル・ハウスと呼ばれる古い屋敷に呼び出された3人の被験者と研究者。だが本当の目的は、閉鎖された環境の中で人間の恐怖心がどのように育成されるかを研究することだった。研究者は屋敷に伝わる幽霊話を被験者たちに告げる。もちろんそれは、被験者たちを恐がらせるための「お話」に過ぎない。だがその夜から、被験者たちは次々と奇妙な現象に襲われる。屋敷には本当に幽霊が出るのだ。

 お化け屋敷映画なのに、お化けそのものはまったく恐くない。それは「恐怖映画」として致命的な弱点。しかし、恐くなくてもこの映画は楽しめる。いや、恐くないからこそ楽しめるのかもしれない。『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』に次いで2作目というドルビーEX対応映画なのですが(公開は『オースティン・パワーズ:デラックス』が先になった)、映画の序盤ではまったく音響効果に凝ったところは見られない。ところが舞台がヒル・ハウスに移り、ひとたび怪奇現象が起こるやいなや、観客の腹にズシンとこたえる重低音や、周囲を飛び回る音の渦に翻弄されてしまう。CGを使った特殊効果も確かにすごいけれど、それ以上に「音」で観客を楽しませてくれる映画です。恐いか恐くないかという点で言えば、この映画はあまり恐くない。でも大画面と音響効果で、画面と客席との一体感はバッチリ。これは遊園地のアトラクションのような映画です。こうした映画は、ぜひとも音響のいい映画館で観てほしい。でないと、面白さは10分の1以下になってしまいます。

 この映画が恐くないのは、映画の序盤で後に起こることが全部予想できてしまうからです。古びた彫像や不気味な絵画が屋敷を埋めつくし、「なるほどこれが最後に動き出すわけですな」と予想していると、案の定それが動く。でもここでは「動く」ということ以上の驚きや衝撃はない。「そこまで動かすのか!」「そんな動きをするのか!」という意外性は皆無です。話の展開も含めて、どれもこれもが予想したとおりに展開して行くので、非常に安心して観ていられます。これは「つまらない」という意味ではない。十分に楽しい映画です。

(原題:THE HAUNTING)


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