ヴァーチャル・セクシュアリティ

1999/08/18 SPE試写室
最新ハイテク技術で、ヴァージンの少女がハンサム男に大変身。
恋とセックスのドタバタをえがく爽やかな青春映画。by K. Hattori


 10月上旬から「NPG(New Power Generation)」というくくりで特集上映される、3本の映画の中の1本。配給会社の資料によれば、『NPGと呼ばれるティーン・アイドルたちが今のハリウッド映画の主流。〈アメリカのティーン・カルチャーをリードするショー・ビジネス界のニュー・ウェーブ〉である彼らの主演作が続々とヒット中』とのことである。なるほど。確かに『スクリーム』や『ラストサマー』『パラサイト』に至る学園ホラーなども、そうした若い俳優たちの台頭なしには考えられないものだろう。今回の上映は「若手俳優の活躍は学園ホラーだけじゃないぞ」という意味で、面白い企画だと思う。もっとも上映規模や作品ラインナップを見る限り、これはソニーがビデオ対策で上映していることが明白。この『ヴァーチャル・セクシュアリティ』なんて、ハリウッド映画じゃなくてイギリス映画だもんね。ちなみに、残る2本は『go』と『ハード・キャンディ』。どうせなら他社と連合して5〜6本の特集上映にしてほしかった。でないと、話題にもならないよ。

 主人公ジャスティンは、17歳にもなって処女だということが恥ずかしくてしょうがない女子高生。「別に処女でもいいじゃん」というのは大人たちの言い分であって、当事者にとっては大問題なのだ。どうせ処女を捨てるなら、初めての相手にはいろいろと注文を付けたくなるのが人情。何しろこれは一生に一度のこと。年を取ってから「あの時は馬鹿なことをした」なんて思いたくない。一方で、あれこれと注文にうるさいからこそ、ジャスティンが処女であることも事実。彼女の周囲にはセックスしたくてしょうがない年頃の男たちがウヨウヨしているのに、彼女はグズグズと相手を絞り込めないでいる。そんなある日、たまたま出かけたコンピュータ展示会のブースで、ジャスティンは爆発事故に巻き込まれる。気が付くと、彼女は金髪長身のハンサム男に変身していた。事故の時立ち寄っていたバーチャル・リアリティ技術の展示が現実化し、彼女の姿を、彼女が考える理想の男の姿に変えてしまったのだ。これでは家に帰れない。彼女はジェイクという名前を騙り、事情を知る幼なじみチャズの家に居候することになる。

 面白い。なかなかよくできている。バーチャル技術で女の子が男に変身してしまうという設定そのものは陳腐だけど、男に変身した女の子の慌てぶりには笑ってしまうし、物語の中盤で姿を消したはずのジャスティン本人が現れ、自分の別人格であるジェイクに惚れてしまうという展開も楽しい。ナレーションにあわせて画面に文字が書き込まれたり、シャワールームの場面で大事なところを隠すバッテンが現れるのにも笑ってしまった。

 恋を巡るドタバタを描いた映画だけど、テーマはいたってシンプル。「慌てず騒がず妥協せず、後悔のない恋愛を楽しもう!」というのがこの映画のメッセージ。恋に恋して「この辺で手を打っとくか」と妥協すると、後からひどい目に遭うものですよ。

(原題:VIRTUAL SEXUALITY)


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