裸の銃を持つ逃亡者

1999/07/28 GAGA試写室
レスリー・ニールセン主演のコメディ映画はパロディが満載。
何本パロったかなんて数えられるか! by K. Hattori


 今年で73歳という世界最高齢のアクション俳優(?)、レスリー・ニールセン主演のコメディ映画。主人公ライアン・ハリソンは有名なバイオリニスト。彼は殺人の濡れ衣を着せられて逮捕されるが、護送中の事故に紛れて脱走し、殺人者の汚名をすすごうとする。彼を追うのは、法の番人としてのプライドを持つ冷酷非情な連邦保安官ファーガスだった。しかしライアンの脱走を知った真犯人たちも、やはり彼の命を狙う。後ろからは保安官に追われ、行く手には犯人たちが待ち受けている絶体絶命の危機。生き延びられるのか、ライアン!

 この映画については、配給会社が「パロっている映画は何本あるでしょう?」というクイズを行っていますが、僕の答えは「知るかそんなもん!」です。たぶん配給会社の人たちにも、正確な引用数は数えられないと思う。アメリカ側が用意した資料があるのかもしれませんが、そこに書いてある本数は、実際の映画とは絶対に食い違っていると思うぞ。この映画では、2〜3カットに1回、1シークエンスで最低でも5回ぐらいはギャグが登場し、それらのギャグの3分の1ほどは映画のパロディです。台詞の引用や、シーン丸ごとのパロディなど、脚本段階で考案されたパロディも多いのですが、芝居の中で見せるちょっとした動作や、画面の隅っこの方で行われているギャグなどは、撮影現場で即興的に作られたものも多いと思うのです。そうしたギャグまで、全部勘定できるものなんでしょうかね……。

 物語そのものは一本調子で予定調和。しかし物語が単純だからこそ、ここまでゴッテリとギャグを山盛りにしてもストーリーがぐらつかないのです。ギャグが面白いと思う人は、これで十分に満足でしょう。ただ、この映画では主人公のライアン・ハリソン本人は至って真面目で、その周囲で次々に事件が起きる展開が多い。もちろんこれは、主演のレスリー・ニールセンの年齢的な問題なども関わってくるのだろうが、僕としてはもう少し主人公が動き回る場面がほしかった。釣具屋の場面や、儀仗兵に変装するくだりなどは面白いものね。

 セックスがらみのネタなどもかなりあるのですが、レスリー・ニールセンが演じると、それがギトギトした重いものにならないのがいい。70過ぎた老俳優ですから、それも当たり前かもしれませんけど……。とにかく、どのギャグもベタベタでコテコテのわりには、サラリと流れて品がいいのです。この品のよさが、パンチ不足といえばそうなんですが、この映画のギャグは破壊力のある重量級ではなくて、素早く数を繰り出す軽量級のシャープなパンチ。観客をノックダウンはさせないけど、最後は判定勝ちするようなものかな。軽量級には軽量級の楽しみがある。パンチで目を回したい人は『オースティン・パワーズ:デラックス』を観ればいいんです。

 パロディは元ネタがよく知られていないとギャグにならない。この映画を観れば、アメリカではどんな映画がヒットしたのか一目瞭然です。

(原題:WRONGFULLY ACCUSED)


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