WiLD ZERO

1999/07/05 GAGA試写室
ロックンロールと愛の力でゾンビ軍団と戦う男たちを描くアクション映画。
日本映画史上初の本格的な大作風バカ映画だ。by K. Hattori


 何も予備知識なしに観たらビックリ仰天。これは20世紀最後の大バカ映画だ。まだ未見だが、『オースティン・パワーズ:デラックス』がどんなにバカをやっても、この映画にはかなわないだろう。そのぐらいのオバカなパワーが、この映画には満ちあふれている。

 オープニングは『マーズ・アタック!』風のUFO来襲シーンからはじまる。ここから話はいきなり切り替わり、ロックスターに憧れる青年エースと、カリスマ的なロックンローラー、ギターウルフの物語がはじまる。ギターウルフの白熱したライブの後、ライブハウスのオーナーであるキャプテンと一悶着あって銃撃戦。キャプテンは側近の頭を吹き飛ばされた上、左手の指数本を失う。ギターウルフはエースに笛を渡し、「困ったことがあればこれを吹け。俺がすぐに飛んでくるぜ」とマグマ大使志願。UFOはどこに行ったのだ? 観客側に戸惑いを残したまま、ギターウルフたちは颯爽と去っていく。

 映画の中盤は、UFO来襲に合わせて大量に発生したゾンビと人間の大戦争。これはもろにジョージ・A・ロメロの『ゾンビ』です。生き延びた人間たちはガソリンスタンドに閉じ込められたり、武器が大量に隠された倉庫に立てこもったりする。ゾンビと戦う峰不二子ばりのセクシー姉ちゃんも登場し、ショットガンとマグナム銃で次々にゾンビの頭を吹っ飛ばして行く血生臭いゾンビ狩り。ギターウルフの必殺技は、ピックを手裏剣にして一度に数十匹のゾンビを倒すことだったりする。一方エースは、ガソリンスタンドで知り合った美少女に一目惚れ。彼女の名前が「トビオ」であることに、もっと注意すべきだったエースは、『クライング・ゲーム』状態で頭がパニック。彼女(?)をゾンビの真っ只中に置き去りにして逃げてしまう。もうぐしゃぐしゃ。

 とにかく、ありとあらゆる娯楽映画の要素がごった煮状態。しかもそれが、まったく整理されていないまま盛り込まれている。ノリとしてこれに近いのは、インドのマサラムービーかもしれない。砲弾でアパートは吹き飛び、バズーカー砲で人間のどてっ腹に穴があく馬鹿馬鹿しいアクションの連続は、ロバート・ロドリゲスも顔負けの元気のよさ。ラストシーンのチャンバラにも、開いた口がふさがりませんでした。すごすぎる。

 登場する役者たちは演技の質が悪すぎる。おおむね台詞の棒読み。もしくは小劇場的なオーバーアクト。アフレコと芝居が微妙にずれて台詞は浮き上がり、稽古不足でアクションには切れがない。「こんな場面はいらん。切ってしまえ!」と叫びたくなるような、タルイ編集もある。しかしこの映画に満ちたオバカパワーは、そんな正攻法の批判をはね飛ばしてしまうのだ。

 低予算で撮影するため、タイでロケしたとか。現地のクラブでスカウトされたのが、トビオ役のシティチャイ・クワンチャル。台詞が合わないと思ったら、あなたタイ人だったのね……。かわいいんだよなぁ。「愛に国境も男も女も関係ねえ!」というのは名言。


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