スーパーヴィクセン

1999/06/08 シネカノン試写室
最後はどんどんシュールな展開になる、奇妙なセックス・コメディ。
ラス・メイヤーの映画は巨乳美女のカタログだ。by K. Hattori


 ラス・メイヤーが1975年に製作したセックス・コメディ。ガソリンスタンドで働く青年クリントは、エロチックでグラマーな恋人スーパーエンジェルと同棲中。焼き餅焼きだが好色な彼女は、クリントが留守中に変態警官を部屋に引っ張り込み殺されてしまう。スーパーエンジェル殺しの容疑者となってしまったクリントは、ガソリンスタンドの主人に助けられて町から逃亡。彼はヒッチハイクで西へ西へと旅を続けるのだが、行く先々でグラマーな美女たちに誘惑されて大弱り。やがて街道沿いのガソリンスタンドの女主人スーパーヴィクセンと知り合い、彼女と愛し合うようになったクリントの前に、スーパーエンジェルを殺した変態警官が現れる……。

 主人公クリントは性格が温厚な好青年で、彼が次々出会う災難の数々はまさに「女難」と言うしかない。なぜ彼がこうも女にモテモテなのか、しかもその女たちが全員グラマーでセクシーでセックスに対して積極的なのかは、「これはこういう映画だから」という一言で片づけるしかないだろう。登場する女たちが全員似たようなタイプなのも、「これは監督の趣味だから」と言うしかないのだ。他愛のない映画だと言ってしまえばそれまでだが、この映画の持つ「過剰さ」は作り手の個性を嫌でも感じさせずにおかない。特に変態警官の狂気じみたサディストぶりは目に余り、「なぜここまで!」と思わず目を覆ってしまうほど残虐非道。

 この警官は通常のセックスでは興奮しない変態で、女性とのセックスシーンは1度も登場しない。この映画の中では「セックス=善」で「インポもしくはセックスの抑圧=悪」なのだ。バイアグラ万歳! クリントの健全なセックスと、警官の変態ぶりの極端な対比ぶり。クリントとスーパーヴィクセンが全裸で戯れあう場面など、まるで『ポンヌフの恋人』だぞ。この映画では、黒人の娘に近づく男を力ずくで排除しようとするモーテルの主人なども登場し、セックスを抑圧する者が徹底的にからかわれている点では一致している。しかしこの映画が一筋縄ではいかないのは、ヒッチハイカーを襲撃して金を奪うアベックなど、必ずしも「セックス=善」という定義でくくれない人物が登場すること。妻の不貞に激怒する農場主なども、単純な定義からはみ出している。こうしたキャラクター設定の揺れが、この映画の気ままな雰囲気を作り出しているとも言える。計算ずくではないのでしょうが、それほど単純な映画じゃないのです。

 思わず笑ってしまう場面がいくつかありますが、一番おかしかったのは、クリントが巨乳で往復ビンタされながら騎乗位で犯されてしまうところかな……。オッパイが頬にぶつかってペチペチ音を立てるのが、バカバカしくて最高におかしい。ヒッチハイクのクリントを車に乗せた年輩の男が「うちに寄って行かないか、女房が喜ぶ」と言うと、画面に突然、その男と若い女房のセックスシーンが挿入されるのもおかしい。安っぽい作りですが、なんともタイヘンな映画でした。

(原題:SUPERVIXENS)


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