恋はワンダフル

1999/05/28 メディアボックス試写室
アメリカ人の議員秘書がアイルランドの集団見合いに紛れ込む。
ジャニーン・ガラファロ主演のラブ・コメディ。by K. Hattori


 『好きと言えなくて』のジャニーン・ガラファロが主演したラブ・コメディ。上院議員の選挙参謀を務めるマーシは、選挙戦で不利な状況に追い込まれている議員の要請を受けて、彼のルーツ探しのためにアイルランドの小さな村を訪れる。議員はこのルーツ探しでアイルランド系有権者の票を集め、起死回生の大逆転に出る腹づもりなのだ。必要なのは、アイルランドを訪れた議員が、自分の親戚たちとガッチリ握手を交わしている写真だ。選挙戦も大詰めで、あまり時間は残されていない。しかしマーシが村を訪れたとき、そこでは年に1度の盛大な「お見合いフェスティバル」が開かれていた。村には近隣から独身の男女が集まり、アメリカから来たマーシは、男性参加者から大いに注目されることになる。

 原題にある“MATCHMAKER”というのは結婚の仲立ちをする人のこと。「見合い結婚は日本だけの習慣」と思う人もいるようですが、独身男女の世話を焼く職業的な媒酌人は、世界のどこにも存在するものです。(ミュージカル『ハロー・ドーリー!』のヒロインも結婚仲介屋。元になった芝居のタイトルは『THE MATCHMAKER』でした。)この映画にはこの道一筋数十年というベテランのマッチメーカー、ダーモット老人が登場して、若い男女に見合い結婚の有効性を説き、結婚に対する心構えをレクチャーします。今から何十年か前の日本にも、この手の世話好きな人が大量にいたんでしょうけど、今は恋愛結婚でなければまともな結婚ではないと言わんばかりだから、すっかり絶滅の危機に瀕してるかもしれません。

 映画は議員のルーツを探すマーシの苦労ぶりと、彼女と村の男ジョーンを結びつけようとするダーモット老人の話が同時進行。ボストンという大都会から来たマーシが、アイルランドのローカルパワーに圧倒されてタジタジとなるくだりは面白い。バスの中で突然始まる「ダニー・ボーイ」の大合唱。パートナー獲得のため躍起になる、独身男女のパワー。酒場で行われる男たちの歌合戦……。たぶんアメリカ人の観客はこうした場面を観て、自分たちが海外から移住してきた移民の子孫だということを再確認するのでしょう。議員のルーツ探しは難航を極めますが、そんな直接的つながりはどうでもいいのです。人間のアイデンティティなど、当人の思い込みに過ぎないのです。本人がその土地で自分の心と響き合う何かを見つけられれば、そこがその人の故郷なのです。

 ほのぼのしたいい映画ですが、しっくりしない部分もあります。そもそもジャニーン・ガラファロがこの役にピッタリはまっているかというと、必ずしもそうは感じない。『コップランド』や『ロミーとミッシェルの場合』の方が、ガラファロのふてくされた顔が魅力的に使われていたと思う。監督は『ハーモニー』のマーク・ジョフィ。アイルランドで親戚探しをするアメリカ人の物語をオーストラリア人が監督するのなら、もっと対象から離れた観光客の視点がほしい。『刑事ジョン・ブック/目撃者』のピーター・ウィアーのように。

(原題:THE MATCHMAKER)


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