スター・ウォーズ
エピソード1
ファントム・メナス

1999/05/26 日本劇場
いよいよ登場した『スター・ウォーズ』6部作の1作目ですが……。
思っていたより面白い。いや、本当です。by K. Hattori


 アメリカでプレス試写や一般公開が行われてから、続々と悪評が届いている話題の作品が、いよいよ日本でもお披露目になりました。上映時間は2時間12分49秒。僕の印象は「思ってたほど悪くないじゃん!」というものです。もちろん今から20年以上前に『スター・ウォーズ』の1作目を観た時のようなショックはありませんし、血沸き肉踊る活劇にハラハラドキドキすることもあまりありません。でも物語には大きな破綻もないし、活劇シーンも最低限の水準はクリアしています。「すごい!」とも思わないし、「ひどい!」とも思わない、普通の大作SF映画に仕上がっていました。

 お話は当初の予告通り、ルークやレイアの父であるアナキン・スカイウォーカーの若い頃(少年時代)と、オビ=ワン・ケノービの青年時代を描いたものです。新しい人物として、オビ=ワンの師匠であり、アナキンを見つけてジェダイにスカウトするクワイ=ガン・ジンというジェダイの騎士が登場します。残念ながらドラマ部分に関しては、あまり意外な展開や予想を超えた物語になりません。あくまでも、ここから始まる3部作の幕開けとして、登場人物をざっと紹介したに過ぎません。大河ドラマの第1回放送みたいなものです。『スター・ウォーズ』のファンにとって、アナキンがジェダイの騎士の一員になることや、共和国が銀河皇帝に乗っ取られてしまうこと、アナキンが皇帝に取り込まれてダース・ヴェイダーになることなどは既に織り込み済み。物語はやがて師弟と骨肉が別れて血を流しあう、壮大な悲劇に突入するわけです。でも今回は、その地ならし。芝居で言えば第1幕。ロミオがジュリエットに出会って愛を告白したところで、幕が下りてしまうようなものです。本当のドラマは、数年後の第2作で始まるのです。

 「ドラマがダメでも特撮が楽しめるだろう」という人もいるようですが、僕は今回の映画の特撮が、まったく楽しめませんでした。今回の映画はCGを使った場面が非常に多いのですが、映像の完成度には驚いても、観ていてまったく興奮しません。兵士とアンドロイドの戦闘シーンは『スターシップ・トゥルーパーズ』の衝撃を上回ることがないし、華麗な宇宙戦闘も『スター・ウォーズ』1作目の驚きを再現し切れていないのです。『ベン・ハー』を意識しているらしいレース場面も、クラッシュシーンでは「おお!」と思いますが、手に汗握るスリルはありませんでした。この映画のCGは確かにすごい。でもそれは、現在のハリウッドで最高水準のCGが集大成されているだけの話だと思います。

 よかったのは結局、ナタリー・ポートマンとダース・モールだけかもしれない。でもポートマンのひとり二役は登場直後から観客にわかるので、後から「じつは……」と言われてもインパクトはない。これは二役にせずに、侍女役には新人のもっと若い女の子を配役すべきだったと思う。そうすれば、アナキンとも年齢がそろうしね。僕の不満点はそれだけ。楽しみました。本当です。

(原題:STAR WARS EPISODE I / THE PHANTOM MENACE)


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